2年目の内政
このゲーム、別に内政フェイズと戦略フェイズ、合戦フェイズといった具合に、やるべきことが区切られている訳では無いし、敵のターンがある訳でも無い。
全てがリアルタイムで進行し、何でも同時にできる代わりに、時間を止めることもできないし、リセットボタンも無い。
しかも、どの場面に於いても特技を発動した武将がいない。
もしかしたら、兼定は挑発を発動していたかも知れないが、あの宗珊や西園寺実充クラスの武将が何も特技や固有スキルが無いということは無いはずだ。
もし、宗珊クラスの武将にそういった設定が無いのであれば、あるのは超有名な武将とか剣豪クラスの武人のみであり、四国内で戦う限りはさほど心配する必要は無いのではなかろうか。
ということで、内政フェイズではないものの、夏は農繁期であり、兵農分離が進んでいない一条家においては内政の季節である。
どうせ、河野は切り崩しの最中だし・・・
「それで御所様、次はいかなる策を講じるのですかな。」
「うむ。まず領内に特産品を作り、交易の柱とするでおじゃる。そのためには、各地から技術者の招聘を行う必要があるぞよ。」
「交易の目玉となる産物でございますか。」
「そうじゃ。まず先立つものがないと、戦の準備すらままならぬ。交易したくても、相手が欲しい物が無ければ商いが成り立たんからのう。」
「現在は米と木材がございます。」
「もちろん、それはこれからも材料の一つとして大いに活用するが、米は灌漑工事なしにこれ以上の増産は難しいであろう?」
「そうでございますな。」
「そこで、他の産品を当地で作れるようにするのでおじゃる。」
「なるほど、それはようございますな。それで、御所様のことですので、目星は付いておるのでしょう?」
「もちろんだ。まずは、先年、当家の領地となった土佐郡の伊予と長宗我部領の境付近に朝谷という所があるが、ここで銅が採れるでおじゃる。」
「まことにございますか?」
「ああ。ちなみに山を越えた伊予の別子でも採れるでおじゃる。」
「それがまことなら、すぐに山師を雇って山中を調べなければなりません。」
「それと、酒造も行う。」
「酒ならそこいら中で作っておりますが。」
「ああいったどぶろくではなく、清酒じゃ。灘から誰か来てくれると良いのう。」
「清酒も特産品ですか・・・」
今はそうでも無いが、高知県内では各市町村ごとに酒造メーカーがあったのだ。
中村では「藤娘」が有名であるが、一条領内には桃太郎、東洋城、千代登、井筒、亀泉、司牡丹、酔鯨、瀧嵐など、一部は無くなった銘柄もあるものの、これだけの酒を僅かな人口で飲み干していたのである。
何をやっても全国46位の高知県であるが、酒の消費だけは上位なのである。
「それだけではない。紀州からみかんと鰹節、京から茶を入れたいぞよ。いずれも土佐の地に向いた産品でおじゃる。」
「そうですな。田が作れぬ土地を有効に使うことができますな。」
「それと、吾川郡では和紙を作っておったの?」
「確かに。」
「コウゾとミツマタの生産を奨励するのじゃ。どんどん堺に売りつけるぞよ。」
「畏まりました。」
「一年やそこらでは形にならぬが、十年後は違うぞ。百姓どもが多少訝っても構わぬ。作らせるのじゃ。」
「御意。」
『何だか凄いことになりそうよの。』
『当然だ。金がないと何もできん。』
『麿は稀代の名君になってしまうの。』
『正に神懸かりだ。』
『また、褒めてもらえるかのう。』
『これら全てが実を結べば、名は残るな。』
『名は既に残っておるのじゃろう?』
『悪名がな。』
『ググッ・・・』
『心配するな。我が付いている限り、そうはさせん。』
『頼りにしておるぞ。麿を救ってたもれ・・・』
兼定はプライドが高くお調子者だが、こういう素直で何も疑うことなく配下に命じてくれるところがいい。
今回の物産も、現代知識という反則技込みの提案によるが、実際にこういった物がこの土地で発展したことは事実である。
十中八九成功するだろう。
こうして、生き残りのための軍資金獲得の大きな一歩を踏み出す。




