知力7の策略
それから3日ほど滞在し、長宗我部、香宗我部、安芸の3者と領地境の確認を行い、中村に帰還することになった。
『のうのう、これは守護が国を逃げ出して以来、60年ぶりの快挙ではないか?』
『まあそうだな。どうせ一時的なものだが。』
『奴らは麿の言うことを聞かんというのか?』
『今の代は大丈夫だろう。しかし、特に長宗我部の跡継ぎは聞かんだろうな。』
史実では数年後に国親が病没し、当主が元親になっているはずだ。
『しかし、約定を破れば他者から袋だたきじゃぞ。』
『それが今回の約定の狙いだし、長宗我部に現状をひっくり返す力は無い。その間に伊予で版図を拡大し、さらに立場を盤石にする。』
『そんなに上手くいくものなのかのう。』
『毛利さえ邪魔立てしなければな。』
『尼子と大友を利用するのじゃな。』
『大友も昨年から門司で毛利とやり合っている。乗ってくるはずだぞ。むしろ、伊予が欲しければ今しか無いとも言える。』
『いや、それほど欲しいわけでもないがのう・・・』
『勝たないと負けるぞ。』
『また訳の分からないことを言う。』
『戦の世で戦を避けることはできん。ならば勝ち続けるしか無い。』
『しかし、もう麿が直々に戦場に赴く必要は無いぞよ。』
相当トラウマになってるなあ・・・
『神懸かりが本陣にいるだけで、兵の士気は上がるぞ。』
『ならば挑発は必要ないのう。』
『あれがあると更に良い。』
『嫌じゃぞ。絶対やらんぞ。』
ゲームなのに、操作キャラが言うこと聞かない・・・
せっかく、コイツの固有スキルが挑発じゃないかと分かってきたところなのに・・・
まあ、そんなこんなで中村に帰ると、お松の方が二人目を懐妊していた。
「それで御所様。首尾やいかに。」
「うん。上手くいったぞ。取りあえずこれ以上の戦はせぬよう、釘を刺してきた。」
「さすがでございます。これで大友が陽動で動いてくれるなら、策は成ったというところですかな。」
「後はこちらに寝返りそうな武将を見繕わないとならぬぞ。」
「はい。既に目星は付け始めており、新居郡の妻鳥采女亮、金子備後守(元宅)、石川伊予守(道清」、石川源太夫、周布郡の黒川民部少輔、浮穴郡の大野山城守(直昌)、上総介(直之)兄弟、越智郡の正岡紀伊守(経長)などは内々に打診をしております。」
「しかし、えらく沢山おるのう。」
「これ以外にも、一度崩れ始めると、それこそ雪崩を打って寝返りそうな勢いにございます。」
「しかし、河野は古来よりの名門。何故そこまで家臣がまとまらぬ。」
「直系に嫡子がいなかったり、幼かったりといったことが多く、政が安定せず、軍事を含めて口出しする者が多いからでございましょう。」
「下手すれば当家もそうなる恐れがあるということじゃの。」
「今は御所様が神懸かっておりますゆえ、それはよろしいと思いますが、やはり常に中村で断を下せる一門は欲しいところでございますな。」
「万千代でもあと15年は必要よの。」
「ですので、御所様は御身第一でお願いしますぞ。」
「分かったぞよ。宗珊の言うとおり、挑発は別の者に任せることにするぞよ。」
「それがようございます。先般のようなことがあっては一大事にございますゆえ。」
「それと、河野の大将に退場願えることはできんかのう。」
「毒でも盛りますかな。」
「それほど家中が乱れているなら成算はあるのではないかのう。即効性のあるものではのうて、長く病になるものとか。」
「なるほど。今の力の弱い当主はそのままに、内部で更に混乱を起こすのですな。」
「そうでおじゃる。」
「御意。その線で進めてみます。」
『何だ。少将でも謀を考えられるのだな。』
『いや、何かテキトーに喋っていたら、あんな流れになったぞよ・・・』
『しかし、知力7にしては上出来だったぞ。』
『いやまあ、公家の世界ではままあることよ。』
『なるほど。武家の世界とはやり方が異なるのだな。』
『人を殺めるようなことも、直に手を下すことも嫌うのが公家じゃ。』
『今回は少将を見直したぞ。』
『いつも見直してくれるといいのじゃがの。これでちりょく90くらいにはなったかの?』
『いや、7のままだ。もしかしたら成長しない形式なのかもな。』
『いくら何でも、死にかけるほど苦労して、成長しないということはあるまい。』
『まあ、それはそうだな。見た目は7でも中身が伴っていればいいんじゃないか?』
『釈然とはせぬが、まあ、今のところはそれで我慢しようかの。』
『それがいい。我も少将の成長は感じておるぞ。』
『何じゃ。悪霊のくせに偉そうに・・・』
いや、最底辺は抜け出したと思うよ。




