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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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春日山城の戦い

 兼定たちは6月30日、荒川を渡って村上に入り、色部氏の守る平林城をいとも簡単に落とすと、本庄氏の拠る村上城に迫る。


 城はそれなりの規模と強固さを誇るが、いかんせん守備兵が少ない。

 四方から一斉に臥牛山を登ると、全ての曲輪がほぼ同時に落ちた。

 そりゃ、飛んでくる矢の数より、兵の数が圧倒的に多いのだから、勝負にはなるまい。


 本庄繁長を始めとする諸将を捕縛した兼定たちは、明智秀満を現地に駐留させて一路南進する。

 そして7月6日、柏崎まで戻った一条軍は、北条高広の籠もる北条城を攻めた。


 城主北条高広は、何度も降伏を懇願してきたが、これを許すことなく攻める。

 彼の処遇は分からないが、反抗的な国人は領地を全て奪い、根切りと植え替えすることは非常に効果的なのだ。


 この城も四方に曲輪を持つ、比較的大きな城であるが、傾斜はさほどでもなく、一気に攻め立てると、ほどなく城兵は抵抗を止め、落城した。

 そして、近隣の琵琶島城を無血開城させた兼定は、8日に織田軍と合流した。


 ちなみに、越中を進む柴田勝家らは、一進一退を続けながら神通川まで進撃し、ここで上杉軍主力と対峙しているようだ。


 信長はすでに春日山城の北、東、南の三方を囲み、北については、林泉寺裏手の高台を占拠して、大筒を撃ち込んでいるが、織田の持つフランキ砲では射程が短く、故に大きな戦果を挙げていないようだ。


 また、城の東や南は比較的緩傾斜だが、多くの城兵が奮戦しており、織田軍にかなりの被害が出ているようだ。

 南と東の一の門は破り、織田方が確保しているが、城はまだ健在と言っていい状態だ。


「おおっ!相変わらず早いな。」

「ここより北は全て片付けたぞよ。」

「ここは、まあ、苦戦中だな。謙信はやはり降伏するつもりも無いらしくてな。」

「武田が意地を見せたからでおじゃろうか。」

「それはあるかもな。それに、上杉は儂を恐れていなかったフシがあるからな。格下相手に降伏はできんのだろう。」


「しかし、もう挽回は無理でおじゃる。」

「ああ。その知らせはもう、ヤツの耳にも入っていることだろうな。」

「それで、どうするのじゃ?」

「最後に総攻撃を掛けようと思う。せめてもの手向けだな。」

「しかし、あの城は容易には落ちぬぞよ。」

「兵糧はまだあるだろうが、矢はどうかな。随分射っておったが。」

「では麿も。」

「いや、徳川殿と左近殿はよく見ておるが良い。織田家にとっても、実質最後の戦いだ。」


 翌7月9日、織田軍は三方から総攻撃を掛ける。

 これまでも、それなりに激しい攻防を繰り広げていたが、今日は規模が全く違う。

 門の前だろうと堅堀の中だろうとお構いなしに進軍し、午前中には南側の柿崎屋敷と三の曲輪を突破した。


 その後も昼夜問わず強攻策を採った織田軍は、翌日の昼頃に北と東から織田軍が本丸に突入し、難攻不落を誇った春日山城は落城した。


 織田軍もかなりの損害を出したが、上杉軍はもっと悲惨で、助かった兵はほとんどいなかったという。

 謙信のほか、直江景綱や吉江景資、千坂景親といった名のある武将も多く戦死した。


 そして、春日山落城を受けて、越中で指揮を執っていた上杉喜平次(景勝)も抵抗を止めて降伏したため、長く続いた戦いにも終止符が打たれた。


 兼定は、北国街道沿いに帰路を取り、7月26日に都入りして、そこで軍を解散した。



『これで終わりじゃのう。』

『そうだな。まだ、九州と似たような広さの東北が残っているが、大勢は決まった。』

『これからは国造りに専念するぞよ。何と言っても金を使い過ぎた。』

『まさか中納言が金の使い過ぎを心配するとはな。』

『金は麿のことに使ってこそのものぞよ。』

『ああ、そういう・・・』

『そんな呆れたような声を出すでない。当然のことでおじゃろう。』

『本当に呆れていただけだ。決して他意は無い。』

『他意があって欲しかったぞよ。』


『まあ、帰ったら更に国を富ませて更に地力を付けないといけないしな。』

『そうしたら、もっと贅沢ができるでおじゃる。』

『そこで金の心配をしろよ。』

『麿一人が美味いものを食ったところで、それで傾く一条では無いでおじゃる。』

『まあ、ほどほどにな。生き残るためには、蓄えも必要なのだからな。』


『もう、大丈夫なのではないかのう。』

『こないだ、徳川殿や官兵衛も言っていただろう。まだ、世は定まっていない。』

『うん?そんな話し、いつしたでおじゃるか?』

 そういや、コイツ聞いて無かったぽいよな。


『織田の天下は間違い無いが、それが定着するかどうかは、弾正殿のこれから次第だ。』

『定着はするじゃろう。最早、織田家に敵う勢力などないのじゃから。』

『それがそうでも無かった歴史もある。しっかりした仕組みを作らないと、また下克上の世が戻って来る。』

『まあ、武士の多くは、そういう気質じゃからのう。』

『そういうことだ。また世が乱れた時のために、備えを捨てる訳にはいかないんだ。』

『まあ、麿が贅沢できるなら、ちょっとは構わんぞよ。』


 さて、信長はどんな世を作って見せてくれるのか。


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