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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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大森城の戦い

「御所様、よくぞご無事で。」

「ああ、さすがに今回ばかりは疲れたぞよ。それで昨日の戦はどうであったかの。」

「お喜びくだされ。お味方大勝利にございます。すでに河野は岡本城に、土居は大森城に籠城の構えでございます。」

「では、麿は少し休む。後は頼んだぞ。」

「お任せあれ。」


 まあ、軍勢は宗珊らに任せておけば大丈夫だろう。

 コイツも今回は根性を見せてくれたし、この勝利は政権基盤強化に役立つだろう。


 夕方に起きてみると、すでに山越えをした津野勢は麓の勝山城(現:鬼北町日吉)を占領し、国境の山間部を大番城、甲之森城(現:西予市城川町)方面に進んでいるとのこと。

 また、海沿いを進軍していた勧修寺らの軍勢も津島氏を圧迫してこちら側に付け、板島城に迫っているそうだ。

 ここまでは予想以上の快進撃である。


「それで御所様、これからいかがなさいますか?」

「もちろん岡本と大森を取り囲んで兵糧攻めを行うぞよ。西園寺から和睦の使者が来た場合は、可能な限り引き延ばせ。その間に、籠城兵と板島、黒瀬の城下にはそれぞれ噂を流せ。」


「津野殿や勧修寺殿はいかがされますか。」

「津野殿は白木城(現西予市野村町)方面に進め。勧修寺殿は板島城を囲めば良い。」


「後は、宇都宮殿ですな。」

「ここが落ちれば宇都宮も動いて良さそうではあるが、大洲からは峠越えであろう?」

「こちらから黒瀬に攻め込むにも峠越えになります。」

「面倒よのう。では、まだ動くなと伝えるのじゃ。」

「御意。」

「では、麿は河後森城まで下がるゆえ、後は頼んだぞよ。」

「お任せ下さい。この宗珊、必ずや三間を手中に収めましょう。」


 こうして一条軍は大森、岡本、高森、板島の城を取り囲み、兵糧攻めを開始した。


 途中、西園寺側から和睦の使者が来たが、交渉は成立しないまま約1ヶ月が経過した頃にまず岡本城が降伏。その後程なくして大森城も降伏した。

 最後まで抵抗していた高森城も、土居清宗の勧告によって開城し、三間地方は全て一条方の手に落ちた。



『それにしても、上手く行くときはこうも簡単に城が落ちるものじゃのう。』

『皆、少将の神懸かりは本物だと噂している。これはいい傾向だ。』

『そうよのう。まあ、麿の力を持ってすれば、このくらいどうということもないでおじゃるが。』

『だが、油断は禁物だ。これから河野と土居の処遇を決めねばならん。』

『そりゃあ、どちらも取り潰しであろう。』


『しかし、両将ともなかなか戦上手なれば、本領を安堵するのも一つの手だ。もちろん、戦わずに降伏した各城の城主も同様にせざるを得ないだろう。』

『あまり当家の領地は増えんのう。』

『板島は取っても良いのではないか?』

『そうよの。結局我らに刃向かった訳じゃからのう。』


 結局、三間の土居、河野は本領安堵され、広見川上流の勝山城までは渡辺氏の領地となり、甲之森城も紀氏に安堵された。

 11月2日に、板島城も降伏し、志摩守の切腹をもって兵を助命した。

 また、法華津氏も一条方に寝返ったことで、法華津湾の対岸、三瓶まで当家の勢力圏に収まった。


 これを受け、宇都宮にも進軍の許可を出し、11月6日、一条軍本隊は歯長峠を越えて宇和に入り、肱川沿いに進軍してきた津野勢と合流した。

 同時に法華津・津島の隊も法華津峠を越えて宇和に入り、宇都宮軍も鳥坂峠を越えて宇和に侵入した。


 すでに一条・宇都宮連合軍は1万7千近い大軍勢となっており、西園寺は戦わずして降伏した。


 戦後、黒瀬城は一条家が接収し、城の北約4km先の瀬戸という所を宇都宮との境界と定めた。

 西園寺氏は黒瀬の北西約5kmの伊予石城のみを与え、黒瀬城代には依岡左京進を置いた。

 

『のうのう、これで麿の領地も四国で一番になったのではないか?』

『まさか。三好や伊予守護の河野に比べればまだまだ小さいぞ。』

『そんなに違うのか。』

『伊予は土佐とは比べものにならないくらい豊かだし、三好は阿波・讃岐を支配下に置いている。例え土佐一国全て平らげても、まだ彼らには及ばない。』


『まだまだじゃのう。しかし、もう馬には乗らぬぞ。』

『もう乗らなくてもいいかも知れんな。』

『そうか!それなら良い。』

『だが、まだやるべきことがある。宇和郡を土佐に編入するよう、朝廷に働きかけるのだ。』

『何故、そんなことをするのじゃ?』

『西園寺の旧臣はまだ当家の家臣になったという自覚に乏しい。』

『なるほど。西園寺の影響を無くすのじゃな。』

『そのとおりだ。関白の力と多少の金子があれば、その程度、造作も無いことだろう。』

『分かったでおじゃるよ。』


こうして西園寺領を併呑した兼定は12月22日、中村に帰還する。


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