表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
188/241

この世界線

 さて、バカ殿と一般市民コンビで15年にも亘る歴史改変を繰り返した結果、その影響は関東以西に広く及び、最早、歴史的な知識はほぼ役に立たない世界線に突入してしまった。

 だから分析を行って、せめて神懸かりのメッキが剥げないようにしなくてはならない。


 まず、この世界を一言で表すと「秀吉が台頭しない」世界線である。

 懐で草履、は温めなかったようだが、墨俣で注目を浴び、羽柴の姓を名乗った。ここまでは良かったが、ここまでであった。

 以降は歴史改変の煽りを受け、金ケ崎の退き口という最大の見せ場を失い、長浜の地も得られなかった。

 毛利攻めも信長と一条の共同戦線であったし、安国寺恵瓊も今や一条家臣だ。

 宇喜多秀家や石田三成との出会いもないだろうし、彼がどこかの戦線を任せられるようなことにもならないだろう。


 出世のタネが転がってないのだから、出世するはずもない。ある意味、最大の被害者はコイツだ。

 仮に、本能寺が起きたとしても、場を動かす力を持っていない以上、主導権は握れない。

 織田信忠さえ存命なら、順当に後継者となるだけであり、謀反人は手が空いている丹羽長秀と一条家で倒せばいいだけなのだ。


 そして、被害者はもう一人いる。徳川家康だ。

 彼は今の所、あまり歴史改変の影響を受けていないが、信長が生きている以上、この先の勢力拡大はないだろう。

 何せ、秀吉の対抗馬として頭角を現した御仁であり、彼が幅を利かしてくれないと、誰も家康になど注目しない。

 彼を警戒視していない信長が関東に移封することもないだろうし、そうなると与力並みの中堅大名止まりである。

 武田や北条と単独で渡り合えるほどの力が現状であれば話も違ってくるが、今のところ、とても天下が転がってくるような立ち位置を築けるとは思えない。


 そして、もう一つの特徴として、この世界の信長は決してサイコパスではない。

 人の命が以上に軽い世の中においては、むしろ普通まである。


 歯向かう者を力で押さえ込むのはどの大名でもやっていることだし、史実と異なり、彼を裏切る者がいないためか、彼が内包しているエキセントリックな部分が増長していない結果ではないか、などと分析している。


 もちろん、足利義昭や松永久秀といった者には背かれたが、あれは予定調和であり、信長の精神を痛めつける要因にはなっていないだろう。

 残るは荒木村重と明智光秀だが、小物の荒木は今更何もできないだろう。問題は背いた原因が不明な、「あの方」のみである。

 名前はもう出してしまったが・・・


 そして、このまま信長が天下を統一した後のことも予想しないといけない。

 彼は最終的に、中央集権ながら、盟友には自治を認める体制を選ぶような気がする。

 鎌倉幕府は結果的にそうだった。室町幕府は寄合所帯で天下を取ったばかりに将軍の力が弱く、結果として連立政権、もしくは行き過ぎた地方分権になってしまい、ダッチロールしてしまったので、信長は過去の事例から、織田家の権力増強に励むだろう。

 しかし、天下布武完成前の同盟者は特別扱いとなる可能性はあるので、一条が賭けるとすればそこだ。

 天下が一つになった後にサイコになってしまわないよう、細心の注意が必要である。


 その信長は、最終的にどんな立場でこの国を治めるのだろう。

 最後は天皇制を倒して自ら王となるつもりだった、などという説もあるが、それは全く分からない。

 ただし、今の帝に対しては、彼なりに配慮している風には見える。あくまで、彼なりにであって第三者から見れば相当不遜ではあるが、今の織田家の力であれば、その気さえあれば、朝廷を潰すことなど訳も無い。


 思うに、彼の天下布武は、あくまで軍事力を持つ者に対してのものではないだろうか。

 その証拠に、本願寺や延暦寺とは戦ったが、軍事力を喪失した彼らの存続は認めた。

 歯向かわない者にはかなり寛容な一面を見せるのも彼の特徴である。

 ただし、そうで無い場合は、民衆に対しても容赦はしないが・・・


 そういった面から見ると、朝廷は現状維持のような気がする。史実でも、貴族の御料所の回復などは行っていた。

 ならば、彼は将軍に就任し、武家の棟梁になるか、というと、それも分からない。

 足利義昭を追放し、今や所在さえよく分からない状態であっても、自ら幕府を立てる動きを見せない。

 これを足利氏への配慮と見るか、その政治体制に無関心なのかが分からない。

 穿った見方をすれば、幕府を立てたくないがために、平氏の末裔を称しているフシさえある。


 なら、天皇を皇帝として頂く王になるか、というと、それも現状では障害が大きい。

 史実では、宣教師に対して王を名乗っていたそうだが、それは他の全ての大名を支配下に置く前提だった世界の話である。

 今は一条や大友といった完全に横並びの結構規模の大きい勢力が残っている世界である。


 武士のトップか複数いる王の一人か。これが、同じ帝の配下であっても征夷大将軍と王の違いであり、ここで信長が王を名乗っても、王の中の一人としか認識されない。

 果たして、全国くまなく武力制圧しようとする御仁が、それで満足するものだろうか。


 ということで、この世界線において、それは無いと断言しておこう。

 大体、そんな前例の無いことを、任命権者である帝が許すとは思えない。


 ならば、秀吉のように関白になるかというと、それもなさそうだ。第一、朝廷の権力に取り込まれるようなことを、彼は望まないだろう。


 ということで、信長が最終的にどのような政治体制を描いているのかはまだ分からない。

 それによって、一条の採るべき選択も変わってくるので、こちらも今すぐ決められるものではない。

 精々、先が見通せるフリをして信長を誘導していくだけである。


 戦は無くなったが、気苦労は続く・・・


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ