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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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本家との関係

 さて、奈良から京の都に帰った兼定は、本家当主と今後について話し合う。


「さて、栄太郎の婚儀も終わり、あの子ももう立派な大人じゃ。そろそろそちの元に帰さねばならんのう。」

「十年でおじゃる。稚児に毛が生えたくらいじゃった子が、今や立派な若者でおじゃる。」

「そうよの。立派になったのう。帰ってしまうのはちと、寂しいがのう。」

「また都に来ることもありましょう。あの子も総領様を父と慕っておりまする。」

「まこと、素直でよい子に育ったぞよ。まあ、内裏で生き抜くには、まだまだ処世の術を鍛えねばならぬがのう。」

「そのくらいが丁度良いのでおじゃる。」

「まあ、全くそれが足りていないそなたでも、何とかなっておるか・・・」

「やはり、総領様もあんまりじゃ。」

「まあ、そう言うでない。麿も本気で心配しておるのじゃ。」

「禁裏はそんなに大変なのでおじゃるか。」

「そうよ。近衛様が都を追放されて大混乱よ。今は二条様の天下。一条も近衛家に近かったから相当に危のうおじゃったが、織田家との婚儀はまさに、逆転の一手でおじゃった。」


 先の関白、近衛前久は足利義昭に与したことで都を追われ、今は河内で雌伏の時を過ごしている。


「やはり、将軍家のお家騒動がここまで影を落としていたのでおじゃるな。」

「そうよ。近衛様は公方様から兄殺害の嫌疑を掛けられておったが、結局それで三好と近づき、行きがかり上、今回は公方様の側になってしもうた。」

「まさに、昨日の敵は今日の味方になってしまったのでおじゃるな。」

「そうよ。一条は近衛家寄りではあったものの、一応の中立は保っておったし、麿も若く、権大納言に過ぎぬゆえ、大きな責を問われるような動きはしておらなんだがのう。」

「なかなかに難儀なことでおじゃるのう。麿ではとても生きてゆけぬ。」

「しかも、これで終わらぬであろうしの。」

「あの近衛様がこれで諦めるはずはないと。」

「その通りじゃ。公方様は都を追われたが、織田殿は次の公方を立てようとなさらん。これがどう影響を与えるかじゃ。」

「なるほど。先が読みにくいのでおじゃるな。」


「いくら公方様が健在といっても、都におらなんだらその威光と影響力は日に日に衰える。次の公方が決まればそちらを支持すれば取りあえずは安心じゃ。しかし・・・」

「公卿たちが弾正殿を積極的に支持するには、まだ不安が?」

「それはそうじゃろう。何と言っても苛烈で先が読めぬ御仁じゃ。まあ、一条はすでに立ち位置がはっきりしておるがの。」

「これ以上無く、はっきりしたでおじゃる。」

「公家仲間は皆、驚いておったぞよ。大きな賭けではあるが、当たれば大きいのう。何せ、後から気付いても、実の娘は数に限りがあるからのう。」

「養女なら、何とか出して貰えるのではおじゃらぬか?」

「あの御仁じゃぞ?それを都合良く使ってくるに決まっておるぞよ。」

「なるほど。やはり実の娘を娶るというのは大きいのじゃのう。」

「それはそうよ。そこに僅かでも情があるならの。それに、周囲の見方も変わる。」

「なるほどのう。それに、ただ姻戚関係になっただけでは無いしのう。」

「実際に戦働きしておるからのう。麿にとっては分家が。」

「都合良く使い分け、でおじゃるな。」

「そうよ。そして栄太郎が長らく都におったことも大きい。」

「本家と分家の間柄、でおじゃるか。」

「そういうことよ。むしろ侮れぬ力を持っていることが今回、示されたでおじゃるよ。」

「なるほど、それは総領様の関白が近付いて来ましたの。」

「そこはハッキリ言ってはならぬ所よ。しばし時が必要じゃ。」


「それと総領様。お家の盤石を図るなら、そろそろ跡継ぎが必要でおじゃる。」

「それがのう。なかなか出来ぬ。こればかりは授かり物ゆえ、思うに任せぬ。」

「それでは、麿の所から誰か出して良いでおじゃるよ。志東丸、松翁丸、雅、鞠とたくさんいるでおじゃる。男子なら栄太郎同様、修養させれば良いし、養女を迎えて婿を取るのもまた、政治でおじゃる。」

「良いのか?」

「跡継ぎに憂いが無く、分家との関係が良好となれば、周囲はさらに一条を重く見るでおじゃる。それに、総領様にお子ができたら、いつでも帰してくれて良いぞよ。」

「さすがに、そのような人でなしな振る舞いはせぬ。麿の父も土佐一条の出じゃ。周りもとやかく言うまいて。」

「それなら、なおのこと安心でおじゃる。」

「では、誰がよいかのう。」

「男子なら数えで七つの松翁丸、女子なら十三のお雅がよいかのう。」

「二人とも良いの。」

「それはお松が不憫でおじゃる。」

「二人なら寂しくないでおじゃる。」

「お雅はすぐに嫁ぐでおじゃる。」

 取り合いか?


「まあ、一人で手を打ってやるぞよ。ところで、鞠はいくつじゃ?」

「九つになったばかりぞよ。」

「そうか。ならばお鞠を迎えようかの。」

「意外な所を選んだでおじゃるな。」

「少しの間は婚儀など考えずに、娘を愛でたいではおじゃらぬか。」

「ああ、そういう・・・」


 ということで、散々ああだこうだと話していたが結局、松翁丸と決まった。


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