表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
167/241

犀川の戦い

元亀3年(1572年)10月14日


 手取川から退却した上杉軍は、犀川を渡り、北岸に陣を敷いた。

 もう目の前に尾山御坊が見えるという場所だ。双方の戦力を見て、上杉側は野戦を選んだのだろう。


 対する織田・一条軍は、途中で加賀衆を糾合しながら北上し、同じく犀川の南に到達した。先に到着した柴田勝家が本覚寺に本陣を構えて敵を牽制し、信長の本隊と兼定達はやや遅れてこの日の正午頃に到着した。

 すでに一向宗の残党を含めて八万近い大軍勢である。



『しかし、えらくゆっくり進軍したのう。上杉軍を取り逃がしてしもうたし。』

『織田軍ならともかく、うちの騎馬兵では追いつかんからな。それに、手取川での反省は活かさないといけない。』

『何か気になることがあったのでおじゃるか?』

『奴らは夜陰に紛れて河口に進み、葦原に潜んで機会を待った。』

『さぞかし寒かったであろうな。』

『ああ、そして川霧が立ちこめる中、攻撃を開始した。奴らは鉄砲に対応してきたのだろうが、大砲も撃てず、苦戦した。だから今回は、昼間移動し、夕刻までには勝負を付ける。』

『そういうことじゃったのか。さすがは悪知恵の宝庫じゃのう。』

『官兵衛を連れて来ておれば良かったな。』

『何でじゃ。』

『奴のせいにできたのに。』

 官兵衛は宇喜多の元で毛利に備えている。

『麿とそなたの仲よ。どう言いつくろっても無駄でおじゃる。』


 軍の配置が終わる。敵は夜襲か朝駆けを狙っているのか、仕掛けて来ない。

 それはこちらにとっては何より有り難い。しっかり返礼はさせてもらう。

「全砲門、放て!」


 ドンッ、という轟音とともに、40門もの大砲が火を噴く。そして川向こうの敵陣に次々と着弾し、こちらにいても敵が大混乱に陥っているのが分かる。


 だが、これで終わりでは無い。続いて第二、第三斉射を加えると、土煙で敵の様子が分からなくなる。

 きっと、着弾の影響だけでは無く、三万近い人間が巻き起こしているものもあるのだろう。しかし、これでは砲撃を継続できないので、一旦中止した。

 そして、こちらに向けて川を渡ってくる者はいないようだ。


 そうしているうちに、当初の作戦とは違うが、織田軍が渡河を始めた。

 どうやら、こちらの砲撃が終了したと判断したようだ。同時に加賀の軍勢も渡河をはじめる。

 一条軍は混乱を避けるため、待機するよう下知し、その場に留まった。

 また、備後守あたりが行きたかったと愚痴を零すのだろう。


 こうして、犀川の戦いは、一条軍が本領を発揮し、圧勝した。

 尾山御坊も即日開城し、信長はそちらに入城したようだ。

 翌日、柴田勝家は上杉軍の追撃と偵察を兼ねて出撃し、一条軍は犀川を渡って尾山入りした。


「おう左近殿、今回も派手にぶっ放したな。」

「先日の借りを返せて良かったでおじゃる。それで、上杉軍はどうなってしもうたかのう。」

「まだ戦果は分からんが、敵の損害は千や二千では済まんかも知れんぞ。こちらが取った首の数だけで五百は下らん。大砲で死んだ者はそれを遙かに上回ると思う。」

「ならば、上杉は加賀から撤退するのう。」

「軍を維持できんだろう。兵糧もどっさり置いていってくれたからな。」

「謙信は・・・生きておろうの。」

「ああ。しかし、上杉が退くなら武田も退くな。危機は去った。」

「それなら良かったぞよ。」

「ああ、左近殿のお陰じゃ。」


10月19日、柴田隊の斥候により、上杉軍の本隊が越中に入った旨の知らせが来たことから、織田軍本隊と一条軍は都に帰還することを決め、現地は引き続き柴田勝家に任された。そして、10月27日に都に入った兼定は、今回の軍を解散した。


 その後、東国の武田にも動きがあり、11月1日には、早くも遠江から撤退が始まったそうで、徳川・織田連合軍も敢えてこれを追撃することなく、危機は去った。


 しかし、美濃岩村城はそうもいかなかったようで、織田・浅井連合軍が城を攻め立て、多大な損害を出しつつも奪還し、秋山信友は討たれたとのことである。


 こうして、足利義昭の挙兵に端を発する一連の「信長包囲網」は事実上、瓦解することになる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ