軍制と家臣団と廃城令
さて、内政については指示を出した。そちらの方は皆、慣れたもので、大まかな指示を出しておけば、あとは担当の奉行人と現地の人たちで上手くやってくれる。
ただし、当主自身が配下に重々言い含めておかないと、上手く行かないこともある。それが、掟書に直接関係することと、軍制に関する事だ。
今回、軍制改革、家臣団再編成、廃城令に着手するのは、領国の広がりによる軍団の大規模化に伴う対応のためである。
そして、廃城については、近年、小領主の管理不行き届きで、土砂災害の起点となることが頻発しているからである。それに、いざという時、敵に使われるのも癪だし、平素はみんな麓の屋敷に住んでいる。そんな所に貴重な労力を割くくらいなら、蜜柑でも茶でも植えておけば良いのである。
ということで、家臣団については、掟書の中で、一門衆、直臣、陪臣、公家衆しているが、直臣の中で家老格と位置づけられていた、源、敷地の二家を家老に昇格させた。
理由は簡単。忙しいから。
元々、家老になれる家格は有しているものの、当主が幼かったり、実績が乏しい場合に暫定的に家老から外すことがあるが、今回復帰させた。特に敷地家は、祖父の代に起きた冤罪による失脚だったので、変なわだかまりも無くなるだろう。
そして、直臣の譜代衆以外、当家で出世衆と呼んでいる家を整理・明記した。こちらも最近加わった家が膨大で、家中でも序列を巡って混乱していたためである。
軍制については、一条家であっても、他家を参考にそれなりの編制を行ってきたものだが、より分かりやすいものにした。
そもそも、軍制は各大名家ごとに異なるものだが、多くの家で類似している部分には一定の合理性があるものなので、これを活かしつつ、より大軍勢にマッチしたものに改めた。
編制は、位の高い順から総大将、侍大将、足軽大将、武将、組頭、足軽の六種であり、足軽以上が士分である。そして、足軽の下に動員兵がいる。
足軽は騎馬や鉄砲などの兵種を問わず、足軽であるが、クラスが三つに分かれる。
組衆、中衆、若衆の三つであり、組衆が組頭となり、足軽十人以上を率いる現在でいうと軍曹クラスの人材である。ちなみに、重松鬼八郎は組頭である。
中衆は組頭を目指す中堅で、足軽隊の一員として槍働きする場合もあるが、動員兵十人程度を率いて、組頭の経験を積む場合もある。
若衆は新兵を含む一般の足軽である。
武将は組頭を複数従える立場であり、あくまでも部分的な責任を負う将、である。
戦場ではしばしば副将となる立場であり、基本的には後ろから指示を出す指揮官である。
足軽大将は副将、あるいは別働隊の大将となるクラスの指揮官であり、侍大将は時に総大将を務めるクラスの重鎮である。
そして、常時総大将を務めるのは一条家の者、もしくは家老である。
城については、これまでも整理に努めてきたが、これを四つに区分して、整理・維持管理していくことにした。
区分はい、ろ、は、にであり、「い」は広い地方の政治・経済の中心地を守備する拠点である。「ろ」は重要な防衛拠点上に設置した城、「は」はその他の城、「に」は廃城予定の城である。
こうして、制度を整理することは、情報管理、予算、戦略策定において効率を高めることに繋がる。特に領地が広大で、馴染みの薄い土地の多い新興勢力にとっては、特に必要なものとして、改善を図るものである。
《 参 考 》
【家臣団】
(一門衆)東小路、西小路、入江、渡辺、勧修寺
(家老衆)土居、為松、安並、羽生、源、敷地
(直臣・譜代衆)松田、平田、依岡、小島、加久見、高島、立石、一圓、佐竹、河淵、山本、中脇、増田、松本、大岐、伊与木、
(直臣・出世衆)宇都宮、津野、長宗我部、香宗我部、安芸、宇喜多、西園寺、河野、土居、越智、片岡、海部、香川、寒川、金子、黒川、石川、東條、
紀(北之川)、河野(守護家)、別所、淡河、明石
(公家衆)飛鳥井、白川、町、堀川、中御門、持明院
【城郭】
(播磨国)
「い」明石、加古川、三木、姫路、赤穂
「ろ」鶏頂山、御着、長水山、上月、葉多、恒屋、三草山、段、大山
「は」淡河、高砂、神吉、春日山 ほか
(備前国)
「い」岡山
「ろ」天神山、福岡、三石、富田松山、沼、金川、新砥石(築城)、
下津井、麦飯山
「は」長船、岡、狐塚、虫明、大畑、新山ほか
(美作国)
「い」津山、三星
「ろ」高田、鷲山、陣山、高仙(築城)
「は」矢筈、医王山ほか
(備中国)
「い」高梁
「ろ」鶴首、寺山、猿掛、福山(築城)、青佐山、笠岡山、落石
「は」正霊山、馬鞍山、横手山ほか
(淡路国)
「い」洲本
「ろ」炬口、松帆(築城)、由良
「は」志知、柿ノ木ほか
(阿波国)
「い」徳島
「ろ」撫養、一宮、由岐、牟岐、日和佐、海部、川島、岩倉、白地
「は」一宮、桑野、牛岐、勝浦、菅生、森遠、仁宇山ほか
(讃岐国)
「い」室山、丸亀、
「ろ」引田、土庄(築城)、八栗
「は」虎丸、昼寝、天霧、滝宮、藤の目、詫間、財田橘ほか
(伊予国)
「い」松山、大洲、板島、新居浜
「ろ」仏殿、西条、遠見山、久万、黒瀬、三崎、来島、能島ほか
「は」金子山、砥部、甲之山、大森、保内、津島、常盤、河後森ほか
(土佐国)
「い」高智、中村、朝倉(高智完成後廃城予定)
「ろ」野根、奈半利、安芸、岡豊、蓮池、佐川、須崎、姫野々、檮原、宿毛
「は」馬路、窪川、伊与木、長沢、池川、豊永、久礼ほか