変化と綻びと
領内では農繁期が続き、商いも盛んに行われ、町にも活気が漲るこの頃であるが、周辺地域ではいまだに激動の波が収まる気配を見せない。
まず、中央では一向宗の残り火が燻り続けている。幕府と本願寺側の交渉により、門徒に対して戦闘の即時停止と軍の解散、帰村が命令されたが、顕如自身が「従わぬ者は破門」との呼びかけに未だ応じていない者がいるようで、特に越前においては、旧朝倉家臣と組んで織田軍に反抗している。
また、本願寺の停戦により、本願寺が都に移されることになった。もちろん、軍事施設も僧兵も持たない、普通の寺院として再出発させるためだ。
そして、信長は抗戦を止めた願証寺の接収のため、伊勢に進駐している。
また、松永久秀が隣接する和泉の畠山高政と小競り合いを始めた。
これを牽制するかのように、幕府は大和の国人、筒井順慶に接近を図っている。
こうして、畿内を中心とする地域は、秩序を取り戻しつつあるものの、足利義昭が武田信玄に出馬を促すなど、幕府と信長の関係は緊張の度合いを高めていく。
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そして、これらの戦を制した織田家の勢力圏は、従来の尾張、美濃に加え、独自に制圧した伊勢、越前、近江南部を始め、織田に恭順した飛騨、盟友の浅井氏が支配する近江北部、越前攻略の際に従った若狭、上洛時に降伏した大和、将軍家に恭順の意を示した丹波、丹後、摂津、河内、和泉など、いつの間にか十三ヶ国にもなっていた。
また、都の者にとっての信長は既存の有力者の扱いであるが、姻戚関係にある浅井は限りなく同盟者に近いものであり、若狭武田、一色、波多野、松永、筒井、十市、畠山、池田は幕臣とも信長の与力大名ともいえる立ち位置になっているようだ。
まあ、結束の強さは微妙だが・・・
この他、中国地方でも大きな動きがあった。
ついに尼子勝久が敗れ、出雲を去ったのである。
大友や一条の歴史改変のあおりを受けて、予想外の善戦を続けていたが、やはり毛利との差しの勝負となれば勝ち目は無い。ただし、毛利も当面は出雲の安定化に専念せざるを得ないだろう。ちなみに、尼子一党は、当初の手筈どおり、海路を使い、少数で都に落ち延びていった模様だ。
そして、元就が6月に逝去した。既に家督は孫の輝元が継いでいるが、先代が偉大すぎる後継は苦労が絶えない。きっと史実通り、吉川元春と小早川隆景による強力なサポート体制が構築されるのだろう。
それにしても、武将の寿命ってどういう設定なのだろう、基本的には、ほぼ史実通りのようだが、多少のズレが生じている者もいる。戦死や刑死、事故死などは、史実通りの事象が起きなければ命を落とすことはない、というのはゲームなので最初から予想できていた。安芸国虎なんて、すでに亡くなっているはずだが、ピンピンしていて、会うととてもやかましい御仁だ。当分、死ぬまい。
そして、毛利元就や三好長慶はほぼ史実どおりだったが、長宗我部国親は若干、長生きした。もしかしたら、国親の場合は、本山攻めの過労が死の要因といわれているので、一条が主体となって攻略し、秦泉寺城に兵を進めただけの国親に疲労は無かったからかも知れない。元就や長慶は、この時代では避けられない寿命による死だったということなのだろう。
そうなれば、信長や兼定にも希望は出てくる。国虎や国親にシナリオの強制力なるものは働いていないからだ。きっと病気で亡くなるにしても、史実よりは長く生きられるのではないだろうか。いや、兼定は史実よりはるかに働いているので過労は心配か?
いや、この程度なら心配あるまい・・・
『今、何か無礼なことを考えておらなんだか?』
『何を言う。いつもお主のことばかり考えている訳ではないぞ。自意識過剰なのではないか?』
『つんでれ、というヤツか?』
『あれはお秀固有の現象だ。他の者には当てはまらん。』
『やはりそうか。秀も素直じゃないからのう。』
『最近は人目も憚らずデレデレしているではないか。』
『最近、女っぷりが上がって来たと思わぬか?』
『のろけ話は結構だ。』
『何じゃ?相手がおらぬからと言って、拗ねておるのか?』
『お主は神を何だと思ってるんだ。』
『結構、品性下劣なものじゃと思うておるぞよ。』
『根も葉もない言いがかりだな。我ほど高尚な存在は無いというのに。』
『まあ良い。そういうことにしておいてやるぞよ。』
『何か、中納言に言われるとムッとするな。』
『それは、心にゆとりが無い証ぞよ。神でも死ぬることがあるのじゃろう?精々気を付けるが良いぞ。』
『我が死ねば、一番困るのはお前だからな。覚えておけよ。』
『せめて、死ぬ前に、別の神を紹介しておいて欲しいぞよ。』
『やっぱり嘘を教えて、一条を滅ぼしてやろうか。』
『止めてたもれ。家を滅ぼす氏神様など、聞いたことおじゃらぬ。』
『崇め奉らなければ、祟るに決まっているだろう。』
『明日の朝餉に焼き魚を加えるから、それで許して欲しいぞよ。』
『あれは、お前が食ってるだけじゃないか!』
『はて?そうじゃったかのう。まあ、神に感謝して、頂いているぞよ。』
『これで十一カ国の太守だもんなあ・・・』