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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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月日が過ぎるのはあっという間

元亀2年(1571年)1月


 松山に帰ってきたら年が明けていた。それにしても、昨年はかなり戦場にいたせいで、あっという間に一年が過ぎ、領内の状況把握は疎かになっている。


「それで、収穫の状況はどうじゃったのかの。」

「はい。1割ほど増えましたな。昨年は戦続きで宍喰屋に売る米も減ったのですが、畿内でも高騰しているようで、金額はほぼ同じとなっております。」


「木材についてはどうじゃ。」

「御所様の言うとおり、魚梁瀬と木頭には良い杉がございますな。これを増やすよう、指示を出しております。」

「うむ。伐るだけでは一回で終わりじゃからのう。素性の良い木は増やして子孫に残すのじゃ。それと茶の増産は進んだか。」

「はい。これも高岡郡内で進めておりますし、炭の生産も始まり、堺で好評を博しております。最近は四国を宝島と称する者までいるそうで。」

「島扱いは何とも悲しいが、評判が上がっておるなら、仕方ないのう。」


「普請の方も、伊予と讃岐、讃岐と阿波徳島までの街道が出来上がりましたぞ。これで出兵も大分楽になります。」

「街道沿いの町の整備についても、各領主に伝えよ。」

「はい。それと、高智城に天主が立ち、内堀も全て完成したとのことです。」

「目を離しているうちに、いつの間にか出来てしもうたのう。」

「これからは山上の本丸から三の丸の工事が主体になるそうです。」


「干拓は進んでおるか?」

「はい。既に国分川河口付近まで埋め立ては完成しておりますが、今しばらく時間はかかるでしょう。」

「他の城はどうなっておる。」

「はい。播磨は順調に普請が進んでおりますが、備前はまだまだでございます。」

「松山も、三の丸を除けば一応の完成は見たからのう。」

「はい。人が増え、町が大きくなれば完成でございます。民も河野時代と全く異なる政に驚いております。」

「まあ、年がら年中そこここで小競り合いしていた時代を考えれば、隔世の感があるじゃろうのう。」

「そうですな。少なくとも、四国では乱世が終わったかのような穏やかさでございます。」

「民が海の向こうとの違いに気付いてくれれば、一条の世を望んでくれようし、危急の際には力となってくれる。」

「まこと、御所様は神懸かっておらずとも名君でございます。」

「なに、麿より優れた者ならたくさんおる。麿は運にも家臣にも神にも恵まれた。ただそれだけよ。それで、毛利はどうじゃの?」

「おそらく、このまま尼子を押し切るのではないかと。」

「地力がまるで違うからのう。それで、伯耆衆はまだ深入りしておるのか?」

「どうもそのとおりですな。」

「まあ、忠義と毛利への反発心だけは褒めてつかわすが、いい加減にして欲しいのう。」

「はい。我らにとっては良い時間稼ぎでしたが、大局を見れば、無益な戦ですからな。」

「今更尼子が再興したから何じゃという話よの。」

「はい。毛利を滅ぼせるだけの力を得られるなら、話は変わってきましょうが。」


「それで、因幡と伯耆の国人衆は、もう十分に手懐けたかのう。」

「はい。後は御所様に御出座いただき、国人衆を安堵させれば、思惑通り二国が手中に収まるでしょう。」

「では、引き続き頼んだぞよ。」

「承知。」


 兼定はその後、新たに完成した北堀と搦手門を視察する。


「ようこれだけの堀を掘ったものよの。」

「はい。東の傾斜地以外は水堀としましたので、守りは万全ですな。」

「これなら攻め手は東に殺到するのう。」

「ええ、見るからに城の弱点ですから。」

「あちら側に上り口が無いことも知らずにのう。」

 ちなみに、今はロープウェイがある。


「これほどの城に砲台と無数の銃座があるのです。毛利ごときでは攻め落とせないでしょう。」

「うむ。石山本願寺もこの目で見たが、あれ以上の堅固な城じゃ。その高所から大筒を撃ち下ろすなら、敵は近付くことすら叶うまいて。」

「後は山麓の二の丸の櫓を始めとした建築物、三の丸と北の丸、大手門横の砲台が出来れば、急ぎの普請は全て完了でございます。」


「うむ。良い城ができた。後は最前線の洲本と明石を何とかせねばのう。」

「そうでございますな。しかし、本当にあれこれ急いで作りますな。」

「月日の経つのは早く、人の生涯もあっという間じゃ。時代の流れも速い故、今が急ぎ時じゃ。」

「畏まりました。それでは作業の各組に下知を出しておきます。」


 

『何か、随分殿様らしくなったじゃないか。』

『お主、また無礼なことを考えているのではないだろうのう。』

『神から言わせれば、帝ですら無礼ではないぞ。』

『そなたがまこと神ならの。』

『全く、疑り深いやつだ。』

 まあ、そのとおりだけど。


『まあ、ちょっとばかり感謝はしておるがのう。』


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