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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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万千代、お見合いする

 さて、信長と飲み明かしたら帰るつもりでいたが、彼からお見合いを済ませてしまおうと提案があり、五徳姫が都に出てくることになった。


 ということで、兼定はフルパワーで毎晩飲み明かしていたが、2月20日にようやく姫が来てくれた。

よく頑張ったぞ、兼定。


 場所は一条家の屋敷である。

 何せ、近年兼定からの仕送りで、都一番の大豪邸となっているのだ。


「こちらが、麿の嫡男、万千代でおじゃる。年は数えで十二になるでおじゃる。」

「万千代におじゃりまする。本日はどうぞ、よろしゅうお願いいたしまする。」

「では、こちらが五徳じゃ。年は万千代殿と同じく数えの十二だ。」

「五徳でございます。どうぞ、よろしくお願い申し上げます。」

「確か、生まれは一月違いでおじゃったのう。」

「そうよ。お転婆でのう。少し一条家の家風でお淑やかになってくれれば良いがな。」

「父上、それは・・・」


「万千代、良き姫君であろう?大切にするのじゃぞ。」

「はい。父上の名を汚すことの無きよう、生涯大切にすると誓いまする。」

「ほう、中々に立派なものよのう。左近殿には勿体ない。」

「はて?おかしいのう。麿も都で修養を積んだはずじゃったが。」

「ハッハッハ!一条家なら儂も安心よ。よろしく頼むぞ。」

「お任せあれでおじゃる。では、そろそろ若い二人で、どうかのう。」

「そうだな。我らはそそくさと退散しようでは無いか。」

 若い二人はいきなり庭に放り出される。

 雑な父親を持つと、子は苦労が絶えない。


「五徳殿、万千代でございます。これからもよろしくお願いします。そこの池がこの屋敷で一番良い所ですので、ご案内いたしまする。」

「ありがとうございます。それと万千代様、私の事は徳とお呼びください。」

「分かりました、徳殿。それでは参りましょう。」

「はい。」


 まだ2月の都は寒いが、庭園の一角は春を感じさせる初々しくも優しい光が差しているように見える。 

 兼定なら良い歌を詠みそうである。


「なかなかいい感じじゃと見受けたのじゃが、お松はどう思う?」

「はい。とてもお似合いの二人と、私も思いました。」

「そうか。お松がいうなら間違いない。」

「しかし、そなたらは本当に仲がよいのう。」

「もう一人のお秀とも良いぞよ。」

「妻を大事にする男は信用できる。」

「とても蘊蓄ある言葉でおじゃるな。」


「儂の持論よ。女子は真を見通す力が強い。信頼を得るためには誠実を貫く必要があるし、それが長く続くというのは、夫の方も誠実ということだ。」

「弾正殿、もっと褒めてくれても良いのじゃぞ。」

「全く、左近殿は昔から変わらんな。」

「誠実であるがゆえ、と誰も言ってくれそうにないから、先に言ってしまうぞよ。」

「奥方、苦労が多そうだな。」

「楽しく苦労させていただいております。」

「そうだな。それがいい。儂の妻も奥方ほど聡明なれば良いのだがな。」

「いえ、五徳様を見れば、一目瞭然でございますよ。」

「そうかそうか。礼を言うぞ。それと、旦那に苦労を掛けさせるのは儂も同じじゃ。申し訳ないと思うておる。」

「いいえ。天下の平穏こそが夫の望みでございます。織田様の天下を期待してお待ちしております。」

「うむ。やはり左近殿には勿体なくないか。」

「そんなことを言ってもやらんぞよ。」

「ハッハッハ!愉快愉快。これほど笑うのも久しぶりじゃ。最近は儂に軽口を叩く者もめっきり減ったからのう。」

「麿には軽口どころか、お小言を言う筆頭家老も健在ぞよ。」

「それは羨ましいことよ。偉くなるのは望むところだが、高みに近付くほど、孤独になる。」

「偉くなると、最後は一人なのじゃろうか。」

「普通はそうなのだろうな。しかし儂は、儂を信じる者皆で頂点を極めるぞ。」

「存分にやりなされ。」


「さて、そろそろ二人は仲良くなったかな。少し覗いて見んか?」

「良いのう。こっそりするのは、麿の大好物ぞ。」

 この二人、大きな子供だ・・・

 勿論、一条家最強を誇る松は、野暮な事は言わない。


「のうのう、万千代が破廉恥なことをしたら、どうしようか?」

「その器量があれば、むしろ頼もしく思うが?」

「しかし、どちらも品行方正よのう。」

「確かに、自分の若い頃を顧みると恥ずかしくなって来るな。」

「全く同感ぞよ。」


 こうして、二人のお見合いは当初の懸念を吹き飛ばす大成功であった。


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