一条家は発展を始める
春になると、百姓は田畑に出て田を起こし、畑に種を播く。
今日は安並和泉守を伴い、四万十川の河口にある、下田の港に来ている。
「和泉よ、普請の進み具合はどうじゃ?」
「はっ、向こうの船着き場は出来上がりまして、こちらも基礎の石は沈め終わりました。」
「うむ、全体を石垣で整備し、水深の浅い所は浚渫するのじゃ。そして、港の整備が終われば、河口付近に波よけの堤防を築け。そうすればさらに安全な港になる。」
「さすがは御所様です。神懸かっておりますなあ。」
「そうであろう。ここと宿毛の港を整備したら、次は久礼、須崎、宇佐の港も整備するのじゃ。」
「それは何故でしょう。」
「九州から堺へ行くには、瀬戸内を通るのが一番早く安全じゃ。しかし、いくつも関所があり何度も駄別料(通行料)を徴収される。しかし、土佐沖には海賊衆はおらぬ。精々浦戸(高知市)近辺に真似事をしておる輩がおるだけじゃ。」
「行き交う船が少ないですから、海賊ではやっていけませんですからな。」
「ならばじゃ。港を整備すれば、多少外海で荒れることも多いが、安く堺まで行けぬかと思うての。」
「なるほど。」
「そして、下田と宿毛は、土佐沖を通る船と瀬戸内を通る船の分岐としての役割をお足せるのじゃ。」
「それはかなりの豊かさをもたらしますな。」
「そうじゃ。港の次は町の整備ぞ。こういった普請は和泉、そちが奉行となって進めよ。」
「はい。心得ました。」
「唐や南蛮、堺との交易も重要じゃが、ここを多くの船が訪れるということも同じく重要じゃぞ。」
「さすがは御所様でございます。」
またある日・・・
「種子島に送った職人は、無事着いたかのう。」
「間もなく二月になりますな。」
「鉄砲なら刀鍛冶の持つ鍛造技術より、銅や鉄瓶を扱う鋳物職人の方が良かったのう。」
「ご心配なく。今回、3名を派遣しておりますので、それぞれの技をもって、秘伝を習得してくるものと考えております。」
「それならば良い。して、いつ頃戻って来るかのう。」
「一から鍛冶修行する訳ではありませんので、あと三月もすれば戻ってくるのではないかと。」
「それと、鉄砲の買い付けも進んでおるの?」
「はい、火薬と鉛についても買い付けを急いでおります。」
「では、軍事については監物、そちに任せるゆえ、良く励めよ。」
「御意。」
「それとな、当家に従う足軽を増やす。最低でも千人は集めよ。」
「そ、それは多額の出費が・・・」
「構わぬ。」
「戦が近いのですな。」
「さすがじゃな。麿は領地を増やすぞ。そして領地が増えれば足軽を増やした元は取れるでおじゃろう?」
「畏まりました。」
「という訳じゃ。宗珊はどう考える?」
「見事にございます。調略については、既に津島より不戦、こちらが有利であれば寝返る密約を交わしました。ただ、土居はどうしても首を縦に振りませぬ。」
「では、土居に二心ありと噂を流せば良い。」
「謀を行う訳ですな。」
「西園寺は先年、宇都宮と争って後継を失い、甥を還俗させて次期当主に据えたとあって、家中は未だ固まっておらぬ。板島(現在の宇和島)城主にも揺さぶりを掛けるのじゃ。」
板島志摩守とは一族の重鎮、西園寺宣久である。
「では、志摩守の一族を残すという訳ですな。」
「彼奴まで乗ってくるなら、大勢は決したと言えよう。その北の法華津はそもそも一条に好意的じゃ。」
「では、その線で策を進めます。」
『のうのう、上手くやったであろう?』
『大分こなれて来たな。』
『そうであろう。麿の知力100が唸っておるのう。』
7しか無いから唸っては無いと思うが・・・
『このまま麿が関白と武士の棟梁になってしまったらどうしようのう。』
『それは無理だから心配するな。あくまでも、一条家の生き残りが目標だ。』
『欲が無いのう・・・』
『少将、よく覚えておくがよい。分を超えるを欲すると、身を滅ぼすぞ。』
『麿の溢れる才をもってしても無理と思うか?』
お前、7だろ・・・
『とにかく、上には上がいる。ただし、家臣の少将を見る目は悪くないと思う。』
『まあ、麿の七転八倒の大活躍を見ておるがよい。』
ああ、先が思いやられる・・・




