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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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親子の対面

 そして春の空気が色濃くなった3月、お松とお秀が相次いで出産した。


 お松の方は女の子で、浜と名付け、お秀の方は男の子で新徳丸と名付けた。何だか漁船みたいな名前だが、黙っておこう。


 そして、お松の産後の肥立ちを見ながら翌月、兼定は三度都に向かう。

 今回は、十歳を迎えた万千代に面会するのが一番の目的だが、信長や新たに将軍となる予定の足利義昭に面会する予定もある。


 できればもう少し早めに行きたかったが、お松の体調と、道中の治安が安定するのを待っての出発となった。もちろん、今回はお松も同行し、お秀には二人の稚児を任せた。


 今回は、鳴門まで陸路を使い、そこから堺を経由して京に向かう。


「それにしても、人がたくさんおりますね。」

「これが畿内の賑わいよ。いずれ松山もそうしたいが、まだまだよのう。」

「それに、堺には大きなお屋敷が沢山ございました。」

「宍喰屋がいかに悪徳商人か分かったでおじゃろう。」

「まあ御所様、お口が悪うございますね。」

「ほとんど麿が儲けさせてやっているようなものじゃ。少しばかり悪口を言っても罰は当たらぬであろう。」

「御所様、それ以上はどうか、堪忍願いますわ。」

 本人を目の前にしても言いたい放題。これが兼定である。


「お秀にも見せてあげたかったですね。」

「また来ることもあるぞよ。土産話をたんと持って帰れば良いぞよ。」

「今回は、そういたします。」

 そうこうしているうちに、一条の屋敷に到着する。


「権中納言よ、よくぞまいられた。」

「総領様におかれましては、益々のご健勝、まことに嬉しゅう存じますぞ。」

「奥方は初めてであったの。一条の総領にして、藤原長者の権大納言、一条杏でおじゃる。」

「松にございます。夫ともども、よろしくお願いいたします。」

「万千代も久方振りの父と母じゃ。立派に挨拶してみい。」

「はい。父上、母上、万千代におじゃりまする。この度は遠路遙々お越しいただき、感謝感激におじゃりまする。」

「大きくなりましたね。母はとても嬉しく思いますよ。」

「母上・・・」

「うむ。万千代も立派になったでおじゃるな。これならいつでも麿の家を任せられるの。」

「あなた。それはまだ早すぎますよ。」

「う~ん、浜と新徳丸が元服するまでは頑張ろうかの。」

「何だ義兄者はそんなに早く隠居するつもりなのか?」

「総領様の薫陶を深く受けた万千代ならば、不安などおじゃらぬ。」

「これはこれは。そちも大分、分別がつくようになったのじゃな。」

「麿はいつでも分別と常識は服を着て歩いているようなものでおじゃるよ。」

 お調子者がここに極まっている・・・

「さあさあ、立ち話も何じゃ。中にお入りなされい。」


 そして、我が子との時間・・・

「万千代よ、都の生活はどうじゃ?困り事はないかの。」

「はい。叔父上のお陰を持ちまして、万千代は日々、充実しておじゃります。」

「万千代、今まで会えずにごめんなさい。母は一日たりとも忘れた事などありませんでしたよ。」

「麿も同じでおじゃりまする。母上のお姿を見て、まことに嬉しゅうおじゃりました。」

「しかしまあ、立派になったのう。父も驚いておるぞよ。」

「ありがとうございます。それで、お雅や志東丸たちは、元気でおじゃりましょうか。」

「はい。皆元気ですよ。それに万千代が都に出た後に、鞠、峰、幸寿丸、松翁丸、浜、新徳丸と六人も弟や妹が増えたのですよ。」

「そなたを含めれば九人の子だくさんになってしもうたのよ。」

「一番小さい子は、先月産まれたのですよ。」

「それは是非会ってみたいでおじゃりますなあ。」

「元服まであともう少しじゃ。いつになるかは、総領様がお決めになることじゃが、そうすれば戻って来るが良いぞ。伊予に大きな御殿を建てたからの。住みやすいし、都に来るのもかなり近くなったぞよ。」

「そうなのですね。楽しみでおじゃります。」

「都に残りたいとか、そういうことはないかの?」

「確かに、都を離れがたい気持ちはおじゃりますけれども、やはり父と母、お秀や兄弟達と暮らせるのは楽しみでおじゃります。」

「そうか。それは嬉しい事を言うてくれるのう。そなたにはたった一人で苦労させてしもうたゆえ、申し訳ないといつも思うておったのじゃ。こんな父を許してたもれ。」

「いいえ、麿も都でないとできない勉学も経験も積むことができました。寂しいこともおじゃりましたが、今は皆に感謝しておじゃります。」

 兼定の子なのに、なんでこんなにしっかりしてるんだろう・・・


「そなたにそう言ってもらえると、父も母も救われた気持ちになるぞよ。都にいるうちは、母とできるだけ多くの時間を取ってやって欲しいぞよ。」

「はい。麿も楽しみでなりませぬ。」


 この後、夜が更けるまで親子の話は続いた。


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