茶畑、自問自答する
さて、織田信長が上洛した。
正確な日付こそ分からないが、ここまでほぼ史実ペースで進んでいる。
ということは姉川や三方ヶ原の戦はあるし、本能寺も起こる。
たかがゲームなんだから、どうでもいいと言えばそうであるが、一条家に天下を統一する力が無い以上、生き残りと今後の国や社会のあり方を含めた長期的なビジョンを持っておかないといけない。
全く望まない世界になってしまっては、生き残っても地獄である。
まず、最大の課題は、本能寺の変を起こすか起こさないか、である。
起こしたくなければ、信長へ事前に知らせてやればいいし、秀吉を出世させなければ、信長死後も織田家は安泰ではあろう。しかし、本能寺が起きなかった世界線は、もうすでに誰も知らない未知の世界だし、そこに踏み込むのは勇気が要る。
史実では、変革者信長、それをランディングさせた秀吉、堅実な家康と三人がいいリレーをした結果、天下太平が250年続き、世は中世から近世に脱皮した。
個人的には、歴史上稀に見る奇跡だと思っている。これ以上の未来を描けるかといえば、全く自信はない。ゲームならクリアすれば明るいエンディングでめでたしめでたし、なのだが、本当にそうか?島津や伊達が統一した世の中が、家康以上になるのか?なんて疑問は当然ある。
一条なんて、統一した途端、朝廷相手に翻弄され、建武の新政の二の舞になってしまうんじゃないか、なんて思う。
そして、なまじ世の中に影響を与えかねないだけの力を持ってしまっているだけに、プランニングは必要なのだ。
まず、将軍家と織田家の対立、これは防ぎようが無いし、力の無い幕府には、さっさと退場いただかなくては、戦乱の時代が終わらない。ということは、信長包囲網と武田家の滅亡辺りまでは史実準拠で行ってもらうしかない。
そして、問題の本能寺であるが、兼定なら、起こさない方向を望むだろう。アイツはああ見えて人が好い。友達を救うことを無条件で選ぶだろう。
そうなると、秀吉は天下を取れない。
彼は野心家だが、同時に、熱烈な信長信奉者である。むしろ、彼の忠誠心は信長限定といった雰囲気すらある。信長存命中は下手なことはしないだろう。後は、どちらの寿命が長いかだ。そして、子だくさんの織田家は、嫡男信忠さえ天下人として軌道に乗れば、後はスムーズに事が運ぶような気がする。そして、信長なら、東北から九州まで武力制圧を成し遂げるだろう。
その後、織田家による長期政権樹立が達成できるかどうかは、全く分からない。
10年、20年なら安泰だが、さすがに250年ともなると分からないのだ。
どこかで、織田家当主が武家の棟梁になる決心をすれば別だが、平家の末裔を標榜する織田家に将軍職が許されるか。皆がそれを認めるかは不透明である。
徳川家康の成功の要因に、幕府発足があるなら、これは織田家の抱える大きな懸念事項である。これが上手くいかなかった場合は、再び世は混乱と収束を繰り返すことになる。
では、その中で一条家がどう振る舞うかであるが、基本的には時の権力者に媚びて生き残るということだ。まだ秀吉がポスト信長になる可能性はゼロではないし、この下克上の風潮が残る限り、実力有る者は天下を目指し続けるだろう。
長生きする予定の家康やその2世代くらい後ろにいる伊達政宗、うちにも黒田官兵衛なんてのがいる。
『のうのう、さっきから珍しく黙っているが、何を考えておじゃるか?』
『まあ、先のことを色々とな。』
『先の事は全てお見通しではないのか?』
『色々変えてしまったからな。本来なら、一条家はあと五年程度の運命だった。』
『そうか。そんなに変わってしまったのじゃのう。』
『中納言よ。』
『まだ権中納言ぞよ。』
『長い。中納言でいいだろう。どうせあと何年かしたら、そうなるんだから。』
『大納言かも知れんぞよ?』
『ああ面倒くさい。中納言だ。』
『別にいいぞよ。』
『それでだ。もし中納言にとって大切な人が死ぬと分かっていたら、それを何とかしたいと思うか?』
『そりゃそうであろう。誰でもそう思うのではおじゃらぬか?』
『それが弾正なら、そうするか?』
『もちろんでおじゃる。あれは良い飲み友じゃ。』
『分かった。じゃあ、彼が少しでも長生きできるように取り計らおう。』
『そうか。そなたは良い悪霊じゃな。』
『何だよ、それ。』
本能寺以降は、全く知らない世界線に突入するが、まあ、それも一興だろう。