表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
123/241

捜査方針が固まる

 御所に帰った兼定は、半次郎親分を呼び出す。


「あ、あの・・・ここが御所でございますか?」

 半次郎親分は青ざめて固まっている。そりゃそうだ。足軽風情が気軽に入れる場所じゃない・・・


「まあ、こういう所もたまには良いでおじゃろう。茶でも飲むが良い。」

「これが本物の茶でございますか。」

 じゃあ、いつもはどんな茶を飲んでいるのだろう・・・


「まあ、それはそうと、聞き込みの具合はどうじゃ?」

「はい。近所の者や仕事仲間、品物の卸先、出入り先などを洗って見ましたが、評判は散々でございました。むしろ、自業自得と申す者すらいたほどで。それに毎晩、賭場や酒場に出入りし、荒事も多かったとか。」

「そうか。それで、三太に家族はおるのか?」

「はい。しかし、年老いた両親は興津に住んでいるとのことでございました。」

「随分遠いところから出てきたものよのう。まあ良い。それで、麿の方でも調べたが、金貸しのようなこともしておったようじゃの。」

「金貸しですか。あの身なりで・・・」

「そなたでもそう思うか。ならば、素性を上手く誤魔化しておったのであろうのう。しかも、あれが賭場の胴元じゃと聞いた。」

「賭場は中村でも三つほどございますが。」

 この小さな町にそんなものが三箇所もあるなんて驚きだ。どんだけ賭け事が好きなんだ?俺のご先祖様たちは・・・


「半次郎も行ったことがあるのか?」

「いや、その、そうでございますね。その、組の仲間たちと何度かは・・・」

「構わぬ。別に責めておる訳ではないでおじゃる。どうせ、賭け事もせぬようでは大人扱いされぬとか、そういう雰囲気なのじゃろう?」

「そ、そうでございます。その、大人の嗜みといいますか。男の器量と言いますか。」

「まあ、そちのことは良い。悪いのは人を殺めた下手人の方じゃ。」

「はい。まことにありがとうございます。」

 一応、悪い事だという認識はあるみたいだ。これにも驚いた。てっきり何が悪いのか解らず、ポカンとされると思ったが・・・


「それでじゃ。三太の家から何と32枚もの借用書が出てきての。もちろん、恨んでおるのがそれだけとは限らぬが、そこに書かれた者達は取り調べねばならぬ。」

「承知しました。直ぐに手分けしてやります。」

「それ以外にも、動機のある者は数多いじゃろう。それに、下手人が一人とは限らぬ。少しでも疑わしいと思ったら、残すとこ無く調べるのじゃぞ。」

「分かりました。」

 半次郎は再び現場に走る。


 借用書の相手方は住所と氏名を一覧にしておいたものを渡した。半次郎自身は字が読めないが、上役の誰かは読めるだろう。


『やっと捜査がまともに動き出したな。』

『しかし、麿の仕事は溜まり放題じゃぞ。』

『まあ、いいじゃないか。親分だって日に日に成長している。あのまま育ってくれれば、中村の治安責任者にしたっていいじゃないか。』

『町のことは、敷地掃部が取り仕切っておるぞよ。それに、字が読めぬと何かと都合が悪いぞよ。』

『それもそうだな。では、喧嘩や事件があったときに、それを取り締まる顔役的な者に育てれば良い。もちろん、普段は足軽のままで。』

『そんな厄介事、引き受けてくれるかのう。』

『その代わり、戦に出なくてもいいことにしてやったらどうだ?』

『まあ、そのくらいは、お安いことではあるのう。それでこの騒動、この後はどうするつもりなのじゃ?』

『まずは動機のありそうな者を徹底して洗い出しする。借用書の名義人はもちろん、賭場や酒場の関係者などだ。金だけで無く酒や女、喧嘩絡みということもあり得る。』

『もう、中村の人間全てが疑わしいのう。』

『そして次に、疑わしい者が当日に何をしていたか、その言い分を証明してくれる者がいるかを一つ一つ洗い出す。』

『それは地道じゃのう。』

『心配するな。やるのは親分たちだ.』

『なら、どんどんやらせるぞよ。』

『だが、それらを全て紙に書いて残さないといけないな。』

『それは敷地に押し付けるぞよ。』

『それならば問題ないな。』

『そして、怪しい者は軒並み拷問に掛けるのじゃな?』

『そんなことをしたら、中将が恨まれるぞ。三太のようになりたいか?』

『それは嫌じゃぞ。慈悲深い神懸かりの評判に傷が付くぞよ。』

『あくまで証拠と理によって追い詰める。』

『そんなことができるでおじゃるかのう。さっさと吐かせれば良いのではおじゃらぬか?』

『人を一人、罪人にするのだ。そんな安易な方法ではいけない。』

『面倒なことよのう。』

『任せておけ。今回は容疑者こそ多いが、構造は単純だ。』

『ようぎしゃ?嫌疑のある者のことか。』

『そうだ。まだまだ忙しいぞ。』

『分かったぞよ。でも、宗珊に叱られん程度に頼むぞよ。』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ