婚儀を執り行う
弘治4年(1558)
1月、伊予国大洲城主、宇都宮豊綱の娘である松姫と婚儀を行った。
ちなみに、史実よりは若干早いが、ゲームだからなのだろう。
「本日は名門宇都宮家と誼を結べたこと、誠に目出度い。これから、一条家も益々発展していくことでございましょう。」
「御家老様、もったいなきお言葉、光栄至極に存じます。この松、両家の繋がりがより深くなりますよう、全力でお尽くしいたします。」
「まずは目出度いことよの。松よ、これからよろしく頼むぞよ。」
「はい、御所様。」
『のう悪霊よ。麿はこれからどうすれば良いのじゃ?』
史実では、彼女との間に嫡男内政が産まれるものの、後に大友宗麟の娘を妻に迎えるに当たって、宇都宮家に帰されることになる。どこまでも政略結婚である。
『とにかくまずは子を成すことだ。』
『やはり、それは最も重要なことかの?』
『一条家は先代も早くに亡くなり、今は少将が唯一といってもいい。もっと直接の血族を増やさないことには勢力拡大に支障が出る。』
『しかし、増えると跡目争いの懸念は増えるそよ。』
『確かにそのとおり、しかし、最近とみに勢いのある島津、北条、毛利などは一族がまとまることで強さを発揮している。隣の長宗我部もそういう意味では要注意だ。逆に将軍家、尼子、大内といった頼れる一族が少ない、あるいは一族で反目するような所は衰える。』
『確かにそなたの言うとおりよの。』
『正室は松姫として、他家からも妻を娶り、早急に陣容を整える必要がある。』
『そうなのか。』
『それと、妻同士が反目せぬよう、序列を守り、常に正妻を立てること。そして、寵愛が移っても正妻は別格だ。』
『そんなに男は器用ではないぞよ。』
『松姫がよほど酷い者ならともかく、そうでないなら姫の良いところを引き出すのも、夫の大事な役目だ。』
『なるほど。』
『他の妻については、他家との絡みのあるから、宗珊と良く相談して決めよ。』
『わ、分かったぞよ・・・』
「あの、御所様?」
「あ、ああ、松姫か。何でも無いぞ。最近、神懸かっておっての。少し、考え込むことがあるのじゃ。」
「そうでございましたか。先年の戦でも華々しい大勝利を挙げたと聞いております。」
「まあ、麿の実力であれば、特に驚くほどのことではないがのう。」
おだてに弱い兼定である・・・
そして、宴も終わり・・・
「お松よ。」
「はい。」
「まず最初に伝えねばならぬことがあるぞよ。」
「はい。いかような事でも。」
「まずは、子を成すこと。それがそなたに与えられた一番の大仕事よ。4人ほどは欲しいぞ。」
「まあ、それほど愛していただけるなど、光栄の極みでございます。」
「それと、当家は公家じゃかのう。いろいろなしきたりやら教養を身につけてもらう必要があるからの。飛鳥井や町らによく習うがよいぞ。」
「はい。」
「それと、一条の家をさらに盛んにするためには、他の家の力も必要じゃ。その都合で側室を娶ることもあるでの。それはあらかじめ承知しておくようにの。」
「もう、側室のお話でしょうか。」
「麿はそなたに隠し事はせぬ。もちろん実家に不義理もせぬ。じゃから最初に言うておく。」
「畏まりました。御所様。」
「それと・・・」
『おいおい悪霊。こんなことまで言わぬといかんのか?』
『当たり前だ。世の中の半分はおなごが作っているものだぞ。』
『そなた、楽しんでおろう・・・』
『我の言った事で今まで間違っていたことは?』
『あったと思うぞよ・・・』
『つべこべ言うな。サッサと言え!』
「麿は・・・終生そなたを大事にする。好いて、おるからの。・・・殺伐として、何も信じるところのない・・・今の世にあっても、これだけは信じて大丈夫じゃ。」
「まあ、御所様・・・こんな私にそこまでおっしゃって下さり、ありがとうございます。この松、終生変わらぬ忠誠を誓います。」
「ささ、近う寄れ。」
「はい。」
兼定は少しだけ大人になった。