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一条兼定なんて・・・(泣)  作者: レベル低下中
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激動の年

永禄11年(1568年)1月


 今年は激動の年になる。主に織田家周辺で・・・


 既に美濃と伊勢の北部を制圧し、天下布武を標榜している。お市の方もそろそろ、いや、もう浅井に嫁いで同盟を結んでいるかも知れないし、足利義昭を奉じて上洛するのも、六角氏や三好三人衆が蹴散らされるのも時間の問題だろう。

 伊勢も遅くとも来年までには制圧されるだろうし、天下の趨勢は織田に大きく傾く節目の年だ。


 一方で毛利と大友の雲行きも怪しい。既に高橋鑑種らが毛利方に内通し、反乱を起こしており、大友から支援要請が来る可能性が高く、身の振り方を問われるだろう。


 そんな中で、領内の戦力分析と今後の作戦を立てないといけない。

 一条家の兵力としては、宇和を含む土佐で一万五千、伊予、讃岐、阿波もそれぞれ同じくらい。淡路二千、備前・備中が宇喜多を含めて二万、播磨二万の計十万余りが、後先考えない場合の最大動員兵力だろう。実際は頑張っても七万くらいが妥当な線である。

 このうち、直属の足軽衆が約四千で、これに水軍衆が約四千ほど加わる。


 課題は山積している。何と言っても弱点は備前、播磨の準備不足である。


 兵の動員力こそ高いが、まだ臣従間もない下克上上等の無頼漢揃いである。どこまで真面目に戦ってくれるか計算できない。

 また、主戦場になりそうな地域の防御力も惨憺たる状態である。これは、前統治者である赤松や浦上の力量不足に起因している。

 頼りになるのがよりにもよって宇喜多直家だけ、というのは、私でなくても泣きたくなるだろう。


 ただし、強みもある。一番は鉄砲の多さである。浦上から接収した物や古津賀と福岡で生産された物を含めれば、すでに四千を保有しており、大砲も百五十を数える。

 また、海上戦力も圧倒的で、大友麾下の水軍も合わせれば、四国上陸だけは防ぐことができそうだ。


 結論として、当家に一番足りないのは時間である。金よりは稼ぐことが容易そうなのは、せめてもの救いだが、今すぐに戦に巻き込まれるというのが最悪の想定だ。


「さて、課題は間違いなく備前と播磨にあるが、どうしたものかのう。」

「御所様、まずは各要所の守将を速やかに配置し、守りを固めることこそ急がれます。」

「そうよのう。しかし、天神山や置塩では、国を守るに不適極まりないのう。」

「はい。美作方面からの侵攻を考えますと、天神山はまだ使いようがございますが、置塩は直ちに廃城とした方がましでございますな。」

「ということは、播磨においては鶏頂山と姫山が最重要拠点となるかの。」

「はい。それに前線の守りとして赤穂、御着、明石、加古川辺りに拠点が欲しいですな。」

「備前はどうじゃ?」

「やはり最前線は長船になりましょうが、あれでは守れますまい。」

「単なる居館じゃからのう・・・」

「やはり、最前線は砥石と高取山(ともに瀬戸内市)の二つを取り込んだ大規模な城とすべきでしょう。そうすれば海を渡る兵の安全にも寄与いたします。これと富田松山(備前市)くらいしか、現状で整備する暇は無いでしょう。」

「後はもしもの備えとして三石(備前)くらいかの。」

「あそこなら整備しなくても、現状で何とかなりそうですな。」

「それと、備前と播磨で足軽を募らねばならん。」

「鉄砲隊の育成もございますな。」

「それと、主だった城主の子息を学問所に放り込まねばの。」

「やることが目白押しでございまするな。」

「麿はいつになったら、のんびり贅沢ができるのじゃ?」

「後数年は我慢していただきましょう。」

「宗珊の隠居とどっちが早いかのう。」

「同時では困りますな。それがしもいい歳ですので、南学の教えに沿い、ここは年長者に譲っていただかなければ。」

「そもそも、麿が当主なのじゃが・・・」


『さあ、これからが正念場だぞ。』

『何か、いつも正念場な気がするがのう。』

『それは気のせいだ。これからは戦ではなく、交渉が生き残りの鍵になる。戦では役に立たないのだから、ここでは当主らしく活躍しないとな。』

『戦でも・・・・散々役に立ってきたでおじゃる。』

『気のせいかな?何かありもしない事が聞こえたな。』

『麿は不敗の英雄じゃぞ。』

『そういうのは、敵将の首を一つでも取ってきてから言うものだ。』

『そんなことしたら、本家から絶縁されるぞよ。』

『まあ、確かにそのとおりだな。』

『それはそうと、あの鬼足軽隊はどうなった。』

『土佐中から集めた二十名で作ったぞよ。もちろん鬼八郎が頭じゃ。』

『今度、見てみたいな。』

『具足もやたら派手で造りの良いものをあてがったそうじゃぞ。見た目も同じ隊と分かるように兜以外はお揃いなのじゃ。』

『まあ、彼らが付ける具足なんて、特別に作らないと小さすぎるからな。』

『戦場のどこにいても見えるぞよ。まさに鬼の集団じゃ。』


 ハッタリが一条家の十八番だと言うことが良く分かった茶畑であった。


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