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0005 加減知らずの決戦 ー後編ー

 太陽から火が降り注いだ様な大口径の炎はグラウンドの外に居る僕まで余波の熱が顔が熱くなるほどだった。

 炎はグラウンドの全域に拡がっていたように見えたが、クゥは無事か……!?


「…居たっ!」


 クゥは間一髪で空中に跳んで逃げている。

 しかしそれを見たミハエルの拳が今度は先ほどのお返しとばかりにクゥを思いっ切り殴り飛ばし、グラウンドに叩き付けられるとその小さめの体躯がスーパーボールみたいに跳ね上がっていた。


「やっぱり副団長ちゃんって人間じゃ無ぇ…いや団長や大司教様なら勝てるのか……」


「いやアレに勝てる団長と大司教様も大概おかしいだけだから……」


 それでも周囲からそんな言葉が漏れてくるくらいクゥは平然と立ち上がる、それどころか更に接近してきたミハエルと一歩を譲らない格闘戦に移っていた。

 格闘戦の技術では僅かにクゥの優勢に見えるが、ミハエルがその大きな翼を盾に体当たりを繰り出すと小手先の技術ではどうにもならず、クゥはトラックに轢かれたような吹き飛び方をしながらも華麗に空中で宙返りして着地するとまた衝突が始まっていた。


「……」


「凄いねっ、シノ!」


「あ、ああ…」


 エリーの話しかけてきた声に反応が遅れてしまうくらい、恐ろしいぐらい場慣れしている彼女達の姿に呆気にとられていた。

 クゥは元々あの騎士団に着いていけるだけの地力が培われているからだと理解してるが、それと対等に戦えているように見えるミハエルも…。


「…これなら、まだ…温度上げても大丈夫そう…っ!」


 今までひと言も喋ることの無かったミハエルから嬉しそうな声が聴こえ、今までは必要な瞬間にのみ炎の出ていたミハエルの背中の六翼から絶え間なく炎が吐き出される。

 轟々と轟く音は地鳴りを錯覚するほどで、いよいよ彼女らを止めに割って入れる者は居なさそうだった。


 そして何より決闘が始まるまでは暗い深蘇芳のようだったミハエルのはねっ毛の目立つ長髪が、今や色鮮やかな焔のように輝いている。


「いくよ…!!」


 ミハエルの六翼の砲門全てが同じ前方を向き、さっきは遠距離から地面へと向けられていた熱光線が地面を焦がしながらクゥを襲う。

 クゥが真横に跳んで避けるとひと束になっていた光線が分散し、六本の鞭のようにしなる炎線が再びミハエルへ接近しようとするクゥを追い掛ける。


 クゥは稲妻が地面を駆けるように俊敏な動きで熱線の下を潜り抜け、一瞬の隙でステップを踏み一気に距離を詰める。

 そしてミハエルの横に薙ぎ払うような光線を飛び越えたクゥは…僕が気付いた瞬間にはその空中に居たのはクゥではなく、思いっきり銀の尻尾を振り抜いた後のミハエルの姿だった。


 クゥが空中で軌道を変える手段を持たないことは恐らく彼女のミスじゃ無かった。

 だがミハエルの速度が更にさきほどを上回り、クゥは予想するよりもずっと速い速度でミハエルからの尻尾によるカウンターを喰らったんだ。


「……!!」


 起き上がったクゥが相手を見た瞬間には再び六門の翼が向けられ、先ほどの比では無い熱気が周囲の空気を押しのけグラウンドに風が渦巻く。

 この場に居る誰もがおぞましい予感を覚えたと思う、自身へと砲門が向けられている訳でもないのに。


 ミハエルの鉄翼が繰り出す、恐らく全力の砲撃。

 それは対決相手がクゥで無ければもっと酷い結果を作り出していただろう。


「え……?」


「空に…穴が空いた……」


 僅かな時間で近付いたクゥがミハエルを押し倒し、翼の射線が移り変わったことで明後日の上空に飛んで行った赤と言うよりも白い光は…信じられない事に空に穴を開けてしまったのだ。


「………!」


 いや、空に穴が空いた訳じゃない。


 あの空は……偽物だ―――



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