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第7話 彩葉の罪滅ぼし

 昼休みの誰もいない屋上。彩葉は真白を呼び出していた。


 彩葉の浮かべるどこか哀しげな表情に真白もただごとではないと察する。


「......真白、謝らないといけないことがあるの」

「謝らないといけないこと?」

「うん、そう」


 (真白とは親友とさえ思ってたけど、それも無くなるんだろうな)


 けど、真白の恋路を邪魔してしまったのは事実。


 気づけば小刻みに震えていた。


「だっ大丈夫? 彩葉」

「うん平気、とりあえず、私の話を聞いて」


 彩葉は1呼吸おいて話した。


「真白さ、卒業式の日に薫生の下駄箱にラブレター入れたでしょ?」


 真白はそう言うと驚いたように目をパチパチとさせた。

 そして何かに気づいたようにハッとした。


「......私の言いたいことわかる?」

「......」

「手紙捨てたの、私」

「そっか」


 真白は彩葉に近づいた。


 (あー、これよくあるビンタされるやつだ、まあそりゃそっか)


 半ば自虐的に心の中で笑い。目を瞑った。

 しかし痛みが走ったのは頬ではなく頭の上だった。


「いてっ......」


 予想外のところに痛みが走り思わず変な声を出してしまう。

 どうやらビンタではなく頭をチョップされたらしい。


「そんな哀しそうな表情をしてるってことは何か事情があるんでしょ?」

「ないよ、真白の手紙を捨てたのは事実だもん、それを謝りに来ただけ......ごめん」


 視線を真白から逸らすとまたまた頭の上に痛みが走った。


「はあ、私は彩葉を親友だと思ってる、だから全部言って?」

「......」

「そんなに親友が信頼できないの?」

「あっえっとそんなつもりじゃ......」

「意地悪だと自覚はしてる、でもこうでも言わないと、彩葉は言わないでしょ」

「......分かった」


 そうして彩葉は全てを語った。


 いじめられていたこと、この性格は本当の自分じゃないこと、手紙を捨てた日のこと。


 真白は最後までそれを黙って聞いた。


 そして話終わった後に発した言葉は......。


「そっか大変だったね、辛かったよね」

「......っ!?」


 彩葉はその言葉を聞き、そのまま膝を地面につけて、今まで溜まっていた分を全て吐き出すようにして泣いた。


「なんで......なんで真白はこんな私を殴らないの?」

「簡単だよ、親友だから」


 彩葉が言うまで察することができなかった自分も悪い、と真白は思っていた。

 親友だと思っていたのに親友のことを何一つ知らない。


「手紙を捨てたのは許せないことだし、これからも許さないかな」

「......」

「でもどうしてだろ、怒れないや、彩葉に対して、私と薫生の距離を今まで以上に縮めてくれたのは間違いなく彩葉だし、告白するきっかけになったのも彩葉、なんで私にもっと早く言わなかったのかに関してはちょっと怒ってるかな」

「真白......」

「それにどうせ卒業式の日に告っても結果は同じだっただろうし、あの恋愛に興味ない鈍感のことだから」


 彩葉の胸から熱いものがさらに込み上げてくる。

 今まで押さえていた分が一気に放たれる。


「ほら泣かないの、ハンカチ貸してあげるから」

「ありが......と......」


 しばらくしてから彩葉は少し落ち着いた。


「ごめん、真白、取り乱して」

「いいよ、全然、別にこの姿誰にも言うわけないんだし」

「......ありがと」

「あっ後もう一個隠していることあるよね?」

「えっいや特にな......」

「薫生のことぶっちゃけどう思ってるの?」

「ふえっ!?」


 彩葉は一気に顔が赤くなった。

 それを見て真白はぷふっと笑う。


「やっぱり彩葉も薫生のこと好きなんだ」

「......好きかどうかはわからない、好きなのは無意識に偽ってるだけなのかもしれないし」

「なんか難しいこと言うね、まあとにかく、彩葉がライバルになるんだったら私も頑張らないとねー」

「だから好きってわけじゃ......」

「私もう行くから、バイバイー」


 そうして真白は屋上から立ち去っていった。


「まあ、真白には勝てないだろうけどね」


 彩葉も後を追うように屋上から出た。


 彩葉はここで決めた。

 彩葉としては薫生のことは確かに気にはなっているのだが、好きかどうかと聞かれると微妙だった。

 今まで自分を偽っていたから。


 好きという感情なのかもしれないが今までそれを自分なんかが......と思っていたため、彩葉は自分自身の本心が分からなかった。


 なのであの2人が付き合って欲しいという思いの方が強かった。

 鈍感系とデレ多めのツンデレ系の幼馴染カップル。謎のオタク心が彩葉をくすぐった。

 

 それに真白は許してくれたけれども、せめてもの罪滅ぼしである。

 最終的には薫生の気持ち次第だが真白の恋を応援しようと彩葉は密かに決心したのだった。

 



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