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第5話 幼馴染と元通り

「やっぱりフラれちゃったか、でもそれもそっか」


 真白は枕に顔をうずくめる。胸から熱いものが込み上げてくるがそれを抑えた。


 (今まで冷たくしちゃってたんだし......)


「あーあ、あの日、手紙とかじゃなくて直接言っておけばよかった」


 

 卒業式の日、真白は薫生宛てに手紙を書いた。


 放課後、体育館裏で待ってます、という手紙だ。


 真白はそれを下駄箱に入れた。


 

 要するに本当は告白をする予定だった。しかしいくら待てども薫生は来なかった。


「......酷いよ、薫生」



 真白は酷く傷ついた。無理もない。真白としては人生で1番勇気を使った瞬間でもあったのだから。


 フルならフってくれればいい。もしその日行けなかったのなら一言伝えてくれればいい。

 しかしモヤモヤしたまま春休みを迎えて、高校に入学。


 薫生はいつも通り話しかけてきた。

 しかしどう反応すればいいか分からなかった。複雑な気持ちだった。


 もうあんなやつなんて好きじゃない、と思い込み冷たく接することにしたのだ。


 でもやっぱり心のモヤは晴れなかったのだ。手紙のことを薫生が知らないというまで。


 ***


 あれからというもの、少し2、3日は意識してしまい気まずい関係が続いたものの、今では元通りである。


 そんなことを考えていると彩葉がやってきた。


「最近真白と何かあったの?」


 来て早々聞くことがこれかよ。


「別に何も」


 俺はいつものように返すがやはり見破られているらしい。


「嘘だー、最近めっちゃ仲良いもん、絶対なんかあったでしょ」

「さあ、どうだろうな」


 白を切ることにした。これで切り抜けよう。


「まあでも仲直りしたって感じ?」

「そうだな、誤解は解けた」

「......そっか、よかった」


 彩葉は少し悲しげな、それでも安堵した表情をした。


「どうした?」

「ああ、いや、別に、これだけだから、じゃあ」


 そそくさと彩葉は立ち去って行った。


 ......なんだあいつ。


 恋愛話を早々にしてくる相手に俺は既視感を覚えた。



 そして赤木はそれを見計らっていたかのように入れ替わりで近づいてくる。


「俺やっぱり彩葉苦手なタイプだわ、無理」

「お前がコミュ力なさすぎなだけじゃね」

「うるせえ、人には誰しも苦手なタイプというものが......」

「はいはい」


 こいつと彩葉が仲良くしたら面白そうなんだけどな。

 ......いや、俺が迷惑を被るだけか。


 ***


「うーん、美味しい!」

「彩葉、こういうの好きだもんね」


 放課後、彩葉は真白と一緒にパフェを食べに来ていた。

 彩葉1人で食べに行くというのも気が引けたので真白を誘ったわけである。


 真白はチビチビとカフェを食べていく。その様子に彩葉は少し萌えを感じた。


「真白、やっぱり可愛い」


 そう言うと真白は少し赤面した。



「そっそうかな」

「うん、だって男子にもたまに告白されるでしょ?」

「まあ......断ってるけどね、申し訳ないけど」

「そうだよね、心に決めた人がいるもんねー」


 ここまでの質問がテンプレである。しかしいつもより真白は顔を赤くした。


「いやいやいやいやいや、いないよ、うん」


 (ありゃ、いるな、これは)


「ふーん、もしかして薫生......とか?」

「絶対ない! そんなことない! うん! あんなやつ誰が好きになるかって言うの」


 真白はすごくわかりやすいタイプである。ただ、ここまで顔を真っ赤にした真白を彩葉は見たことがなかった。

 

 

 彩葉は真白が薫生のことを中学時代に好きだったことは知っている。

 しかし高校に入って、2人の仲は気付けば悪くなっていたので今はどうなのか聞きたかったのだ。

 

 この反応を見るに、どうせ真白が薫生を照れ隠しで一方的に嫌っていただけなのなのだと彩葉は気づく。


 それを察すると同時に胸がだいぶ痛くなった。しかし平然を装う。


「どうしたの? 体調悪い?」

「ああ、いや、なんでもない、薫生と実は付き合ったりしてるのかなーって」


 そう言うと真白はしばらく黙り込んだ。そして話し始める。


「......実はね、薫生のことが好き、それでね、最近......2、3日前かな、告白したんだ」


 いつもとは違い、少し暗い、それでも明るい表情で話し始める。


「......結果は?」

「フラれたよ......でももうちょっとだけ頑張ってみようかなって」


 無理に真白は笑った。全体として暗い表情だが、目元からはうっすらとまだ諦めない心が垣間見える。


 (......私のせいだ、言わなきゃ、絶縁覚悟でも謝らなきゃ)


「ねえ、真白」

「ん、何......」


 すると横から声がかかってきた。


「あっお前らも来てたのか、ここのパフェ美味いって話題だしな」

「かっ薫生!?」


 彩葉たちに声をかけたのは薫生だった。そしてその横に少し硬直している赤木。


 先ほどまで薫生の話をしていたので、真白はまたまた顔を赤くした。



「どうした、熱でもあるのか? 顔赤いぞ?」

「なんでもない、なんでもないから、うん」

「そうか、じゃっ俺ら向こうで食べるから」

「うっうん......」


 (真白はピュアすぎ、薫生は鈍感すぎ、......似合ってるかも?)

 赤木は改めてそう思った。彩葉から意識を逸らすためにもそう再確認した。


「何硬直してんだ、ほらいくぞ」


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