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第2話 幼馴染に看病された

「お昼ご飯何か食べた?」

「いや、食べてない」

「じゃあお粥作ってくるからそのまま横になって待ってて」


 随分と手際がいいことで。いやでもありがたい。

 おそらく1人だと夕食さえ抜きにしてしまっていたかもしれないので非常に助かる。


 そして同時にあることが疑問に浮かんだ。

 

 恩を感じたから借りを返す、とは言えなぜここまでしてくれるのだろうか。


 風邪薬やスポドリを持ってきて渡す、とまでは予想していたがまさか看病をしてくれるとは思ってもいなかったわけである。

 そもそも俺は真白に嫌われていたはずだ。


 用があり話しかけたらそっけない態度で返されるし、たまに目が合うと睨まれる。


 そこまで嫌われていたら看病するのも嫌がるはずである。


 たしかに幼馴染とはいえ高校に入ってあんまり話していない仲だ。今は深い仲というわけでもない。

 普通ここまでしてくれないだろう。


 と、色々な思考を巡らせたが風邪をひいているので正常な思考ができていないだけかもしれない。



 しばらくすると真白がトレーを持ってきて机に置いた。


「すまん、ありがとう」

「それじゃあもう遅いし、私帰るね、ばいばい、安静にしてるんだからね」

「ああ、もちろんだ」


 そして真白は部屋から出ていった。


 俺は真白の作ったお粥を冷めないうちに食べるのだった。



 ***


「おはよう、もう風邪は大丈夫なのか?」

「ああ、日頃の睡眠不足が祟っただけだ」


 朝、俺は登校して早々に赤木 柊(あかぎ しゅう)に話しかけられる。

 赤木は数えるくらいしかいない俺の友達の1人と言っていい存在である。


「ふーん、そういえばお前風邪ひいてる時看病イベントあったんだろ?」


 少し性格に難はあるが。


「おい、お前どこまで知ってる」

「あー、引っかかった、やっぱり看病イベントあったんですね」

「......かまかけかよ」

「いやまあ、帰りにコンビニ寄り道しようとしたら真白がお前の家の前立ってたから」

「なるほど、まあ別に特に何もない、薬貰っただけだ」

「ふーん」


 赤木はニヤニヤしてこちらを見てくる。

 その表情に思わず顔が引き攣ってしまう。


「別になんもないっての」

「想像してみろ、超絶可愛い幼馴染が頭撫でながら......」

「どんなイベントだよ、そんなの風邪うつるわ」 


 別に真白に対しては可愛いと思ったことがない。というか意識したことがない。

 他の人が可愛いといえば可愛い方なのではないだろうか。

 学年で結構モテているのでおそらく美人に入る部類なのだろうが、ずっと一緒にいるとそういう感覚もない。


 俺にとっては今も変わらない幼馴染である。

 

 疎遠になった、がついてしまうのだが。



 それでこいつのように俺と真白とが幼馴染であることに羨望や嫉妬の感情を持つ者は少なくない。


 赤木もその1人だが、こいつはただの恋愛オタクだ。


「それで真白のことどう思ってるんだ?」

「ん、まあ、また仲良くできたらなとは思うよ」

「あー最近距離が遠くなってるって言ってたもんな」

「はあ......」


 俺はぐでーっと机にもたれかかる。


 真白とは今まで通りに仲良くしたい。

 ただ相手から拒否されては何もできない。

 

 本当に高校に上がった時からである。


 俺真白に嫌われるようなこと何かしたのかな。


 そう考えれば色々と腑に落ちる部分はある。

 

 心当たりはないのだが、もしそうならば謝らなければならない。


 生理的に無理とかだったら普通に傷つくが今までずっと一緒にいたのだ。流石にそれはないだろう。

 ......多分。


「あらあら、随分とお悩みのことで」

「お前は親友が急に態度変えてきたらどう思う? 仲良かったのにいきなり話しかけても無視されたりしたらどう思う?」

「それは、まあ傷つくな」

「そういうことだ」

「......なるほど、お前の悩み結構重いな」


 赤木はようやく俺の悩みに気づいてくれたようだ。


 そんな時、赤木が『ゲッ......』というか声を出して俺の席から離れた。


 急にどうしたんだと思いながらもたれかかっている体を起こすと、目の前には涼風 彩葉(すずかぜ いろは)がいた。


「よっ、薫生」

「彩葉か......」


 それは赤木も逃げるわけだ。彩葉は苦手なタイプって言ってたからな。


 彩葉は中学時代からの真白以外の唯一の異性の友達である。

 

 彩葉には色々と恩がある。同じクラスにいて良かったと思う。

 

 無駄にテンションが高い。陽キャというやつだろう。ただ不思議な者だ。

 陰っぽい俺でも話しやすいと思う相手なのだから。コミュ力が相当高いのだろう。

 

「なんで来た?」

「ん? なんか悩んでそうだったから?」

「お前が疑問系になってどうする」

「やっぱり真白のこと?」

「まあな」

「ふーん」


 そして彩葉は誰にでも分け隔てなく接することができるので、クラスの人気者と言ったところだろうか。

 

「彩葉ー」

「あっなになに?」


 友達であろう人に呼ばれて彩葉はここを立ち去った。


 ギャルとまではいかないが完全陽キャだ。


 赤木はこういうやつが苦手だ。まあ気持ちはわからないでもない。

 俺だって最初は苦手なタイプだったし。


 でも今ではたまに遊んだりするので不思議なものだ。


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