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第14話 疎遠になっていた幼馴染に傘を貸してあげたら借りを100倍にして返された

 あれだけ楽しかった夏休みもあっという間。


 学校が始まって数日が経った。


 赤木は無事に夏休みの課題を終えることができなかったらしい。

 俺は結構初めの方に終わらせていたので、裏切り者め、と言われたがやってない赤木が悪いだけである。


 あくまでいつも通りの日常。そう、いつも通りの。


 そしてその日の帰りは、あの時と同じ雨だった。


 天気予報では晴れだったのだが、突然の雨である。

 俺は無言で屋根下、降りしきる雨を見ながら、雨が止むのを待っていた。

 まあでもこの調子だと止みそうにないだろう。


 このまま雨の中突っ切って行くか? でもこの前そのせいで風邪ひいたしな。


 すると後ろから声がかかった。


「私の傘、入る?」


 声の正体は真白だった。


 この状況に少し既視感を覚える。立場は逆だが。


「ん、いいのか?」

「うん、いいよ」


 真白は俺を傘に入れた。相合傘というやつだ。想像以上に距離が近く、胸が早鐘を打っている。

 以前ならこんなことはなかった。でも前とは違う。俺は真白に恋してる。

 だからこんなにも速くなる。


 そうして俺たちは同じ傘の下、雨の中を歩いていった。



「あっえっと、俺持つぞ」

「ありがと」


 その動作で一瞬だけ手と手が触れ合う。ほんの一瞬だけだ。

 でもそれが心臓をドキリとさせた。


 恋心は日に日に増えている。


 でも告白にはやはり踏み切れない。......怖いのだ。

 真白をまた傷つけてしまうのが。


 それに彼氏としてどう接していいかもわからない。不器用な自分が嫌いだ。臆病な自分が嫌いだ。


 真白はいつまでも待ってくれると言った。でももう待たせられないよな。


「相合傘......だね」

「そうだな、いつぶりだ?」

「中学以来じゃない?」

「まあ、そうだな」


 その会話に俺の意思はほぼなかった。意識は違うところに行っていたからだ。


 雨が止む気配はやはりない。


 周りには誰もいない。それなのにこの狭い傘の空間の下2人。

 俺は真白をチラッと見た。


 ......以前までなかった。真白を可愛いと思うことが。

 真白を異性として認識したことが今までなかったのだ。

 でも今は違う。ずっとそばにいてくれて、可愛くて、笑顔を守りたいと思える異性の幼馴染。


 俺には勿体無いと思えるくらいの幼馴染。そんな子が俺を待っててくれている。

 なのに俺はいつまでも逃げていていいのだろうか。


 いざ言うとなるとやはり緊張する。恋というのも合わさっていつもよりも遥かに。



 すると、何故か雨が突然降り止んだ。


 まるで告っちゃえと囁いているかのように。


「あっ雨止んだね」

「だな」


 俺はあくまでも平然を取り繕う。

 閉じた傘を持ち、俺たちは再び歩き出した。


 太陽を隠していた雲が消え、夕日が差し込んできた。

 虹も軽くかかっており綺麗だ。

 

「うわー、こういうの何気ないけど綺麗だよね」


 

 やはり言うなら今しかないだろう。


 俺は一息ついてから、足を止めた。


 真白もそれに気付き止まった。


「なあ、真白」

「ん、どうしたの?」


 真白も勘付いているのだろうか、いつも通りニコッと笑った。


 再び、軽く深呼吸をして言った。


「俺にとっての真白はかけがえのない人でずっとそばにいたいと思えるような幼馴染、自信はない、でも俺は真白を幸せにしたい、ずっとそばにいたい、だから俺と付き合ってください」


 人生で初めての異性への告白。......言い切った。


 真白は少し目に涙を浮かべて返した。


「......ずっと待ってたよ、薫生、これからよろしくね」


 そして真白は俺の頬に手を伸ばして顔を近づけ、口付けをした。


 心臓が一瞬跳ね上がり、けれど胸が満たされていく。


「ごめんな、待たせて」

「いいよ、その代わりこの借りは私への愛情でいっぱい返してね」

「もちろんだ」


 俺がそう言うと真白は照れながらもニコッと笑った。

 そんな笑顔を見て、俺もまた笑顔になっていた。


これにて完結です。

見てくださった皆様、ありがとうございました!

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― 新着の感想 ―
[一言] 完結お疲れさまでした。 足かに、もう少し後日談があってもよかったですね。 二人に幸多かれ。
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