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第13話 幼馴染に恋した

 待ち合わせ場所に赤木たちが来なくて、メールを見てみたらあいつら2人ともバックれやがったことに気づいた。


 今日は夏祭り。俺からしたらいつもの友達だが、全体で見ると一風変わったメンバーである。

 何せ赤木と彩葉は昔から仲が悪かったはずである。しかしすっかりと打ち解けた様子が見られる。

 

 というわけで非常に楽しみにしてたわけなのだが......2人ともバックれた。


 赤木からは『ごめん、俺女の子と行くことになった』

 まあ、いい感じの女子と行くのであれば致し方ない。

 そして彩葉も同じ。『ごめん、私男の子と2人で行くことになった』

 ただ何故か彩葉に関しては許せない。


「あはは......まあ仕方ないね」

「......そうだな」


 誰か誘うか? ......そういえばこのメンツ以外に友達いないじゃないか。


 真白と2人きりも悪くないか。


「2人で行くか」

「うっうん、そうだね」


 よし、あいつらは次に会った時にしばいておこう。


 ***


 夏祭りの会場に着くとやはり多くの人で賑わっていた。


 さらに色々な屋台が置かれている。

 良い匂いも漂ってくる。



 しばらくどんな店があるのか歩いていると、真白の肩と通行人の肩がぶつかった。


「あっごめんなさい」

「すいません、こちらこそ」


 人が結構いるので無理もない。

 

「大丈夫か?」

「うん、全然平気」


 これだと逸れてもおかしくない。

 ......少し恥ずかしいが仕方ない。


 俺は手を差し出し、真白から視線を逸らして言う


「えっと、まあ、逸れてもあれだし......」

「そっそうだね」


 真白は俺の手を取り、手を繋いだ。


 これは......そう、不可抗力だ。

 そう心の中で言って、落ち着かない心臓に言い訳をする。


 それによく......と言ったら誤解を生みそうだが、小さい頃はたまに繋いでいたじゃないか。

 ......小さい頃は。


「薫生、どうしたの? 顔赤いよ?」

「......なんでもない」


 そして真白が何かに気づいたかのようにニヤニヤと笑った。


「異性と手を繋ぐのが恥ずかしいんだ~」

 

 的を得たことを言われ、俺は何も言い返せず目を逸らす。


 すると真白は突然、手を真白の指を俺の指と絡まらせた。

 恋人繋ぎというやつである。


「ふふーん」


 真白は頬を赤くしながらも得意げに笑った。


 これは......流石に俺の心臓が持たん......。


 ***


「いらっしゃい、いらっしゃい、くじやってるよー」


 屋台を歩き回って楽しんでいると、真白が空いている方の手で指を指した。


「あっあれやりたい」

「ん、くじか」


 景品付きのくじ、というよりか大吉や小吉と書かれているくじのようだ。

 神社の近くということもあり、神社のくじを屋台として出したのだろう。


 くじは1回100円とお財布に優しい。


「一緒に引くか」

「だねー、運勝負でもする?」

「ありだな」


 運勝負に関しては五分五分である。

 正直こればっかりは運なのでなんともいえない。


 俺たちは100円ずつ店主に渡して、真白から先にくじを引いた。



「何だった?」

「吉だった、まあまあかな」


 真白がくじの中身を俺に見せる。

 吉と大きく書かれており、その下の部分には何やら色々と書かれていた。


「勝運アップだって、これは薫生に勝てるかもね」

「本当だ、まじか......」


 大吉引かなきゃ負けな訳だし、負けるかもな、そう思いながら俺もくじを引いた。


 そして俺はくじを開く」

 結果は......。


「どうだった?」

「......」


 大吉だった。別にこれだけなら勝ったで終わりである。

 しかし下の部分は少し見せられない。別にやましいことはない。

 ただ今の自分に少し刺さる部分があったのだ。


『恋愛運大アップ、好きな子とか気になってる女子か男子に告白すればオッケー貰えるかも、勇気を持って告白してみよう! 例えば横にいる異性とかね』


 これほぼ俺のために書いただろ、というくらい的を得たものである。


 真白が見ようとしてきたので、俺はくじを折って閉じた。


「うん、俺も吉だった」

「同じかー、それでなんて書いてあったの?」

「内緒」

「えー、気になる」


 俺はくじをバッグにしまった。


 それからも射的をしたり型抜きをしたり、かき氷を食べたりと時間を忘れて楽しんでいた。

 そして気づけば屋台は閉まり始め、帰る人々が増えていた。

 楽しい時にも終わりはくる。


「私たちもそろそろ帰ろっか」

「楽しかったな」

「ね、結局くじの中身は見せてくれなかったけど」

「......そんなに気になるのか?」

「多少はね」

 

 と言われても俺は見せない。

 そんなやり取りをしながら、帰ろうとした時、真白から俺の指に真白の指を絡めて手を握った。


 耐性は少しついたとはいえ、ドキリとはするものである。


「......まあ別にいいんだが、もう人いないし手繋ぐ必要ないんじゃないか? 

「いいんだったらこうさせて、こういう機会ないし」


 そうして俺たちは帰路につく。

 今日も星は綺麗だ。


 やっぱり真白に想いを伝えるべきなのだろうか。

 ......俺のために席を残しておくとは言ってくれたものの、俺は一度真白をふった。

 それに今のままの関係でいられなくなるのも怖い。この関係のままでいられなくなるのではないか。

 俺は真白や彩葉以外の異性とあまり関わってきていない。なので乙女心というのをあまり知らない。

 だから、ひょっとしたら無意識のうちに真白を傷つけてしまうのではないか、それが1番怖い。

 誤解されていたとはいえ、真白に一度嫌われてしまった。......それがもう嫌なのだ

 

 

「......なあ、真白」

「ん、どうしたの?」

「俺のこと、その......まだどう思ってるんだ?」

「まだ好きだよ、というより前よりもずっと好きになってるかも」

「......そうか」


 ただ、真白の想いにも応えたいし、真白の彼氏としてずっと一緒にいたい。


「やっぱり、私じゃダメ......?」


 悲しげな表情を浮かべながらも笑う真白に胸が締め付けられる。


「そんなことない、むしろ好きだ」


 そう答えると、真白は驚いたように目をパチパチとさせ、顔を紅潮させた。


 あまりにどストレートに言うので、少々困惑気味である。


 真白が手を離そうとするが、俺は離さない。


「でも、もう少し待っててくれるか? ......臆病な幼馴染でごめん」

「そっか......いいよ、私ずっと待ってるから、そんな不器用な薫生も好きだから」


 真白にそう言われ、俺の心は少し救われた。


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