第11話 料理苦手系男子
「どうしてこうなった......」
俺は一度テーブルに並べられた品の写真を取り、赤木に送った。
別に俺としても普通に作っていただけである。
そうしたらもはや別の料理になってしまったではないか。
苦笑するしかない。
事の発端は数時間ほど前。
ネットでたまたま美味しそうな料理を見つけ、せっかく夏休みなんだし作ってみようと思った訳である。
基本俺は簡単な料理か、母からもらった仕送りの漬物などしか食べない。
故に質素になるのは仕方ない。しかしそれでは物足りなかったのだ。
これを機に覚えてしまえば、これから美味しい料理を食べることができる。
......と思い至ったのだが、自分の不器用さを痛感する。
ちゃんとレシピ通りにやったはずだ。多分。
俺は3つ作ってみることにした。
コロッケ、卵焼き、炊き込みご飯である。
流石に炊き込みご飯に関しては成功する自信があった。
ご飯は毎日炊いてる。失敗する要素がない。
ただ......水分量が違うだけでもう食べられない
開けてみるとご飯の様子がいつもと違う。
びちゃびちゃなのである。
これが普通のご飯ならよかった。ただ炊き込みご飯だ。もうフォローのしようがない。
炊き込みご飯ということもあり、いつもより水分量を多くするか、と思い、いつもより水を多く入れた自分に後悔した訳だ。
そして次にコロッケ。......これに関してはもう切り替えよう。
揚げる前までは順調だった。揚げる前までは。
そしていざ揚げた途端、中身が爆発した。
そして取り出せたのは衣だけ。中身は何処へ。
衣はまる焦げ。もう食べられる箇所がない。
最後に卵焼き。他の2つが失敗した後に作ることにしたのでこれだけは絶対に成功させるという思いだった。
これもコロッケ並みに酷かったかもしれない。
まず初めに卵がフライパンに引っ付いた。
やべっ巻けない、と焦り、なんとかしようとした訳なのだが、無事焦げた。
仕方なくスクランブルエッグにチェンジしようと思ったのだが遅かった。
卵が引っ付いて黒焦げボロボロである。
食べられる箇所がない。
よって俺はコンビニでコロッケ弁当を買ってきて食べているわけである。
こういうの作れる人尊敬するなと思いながら。
一応俺の中身なしコロッケとコンビニコロッケを見比べてみたが全然違う。
いや当たり前なのだが。
俺は食材に心の中で謝罪をしながら炊き込みご飯も頬張っていく。
他の2つは食えないレベルだが、これは普通に食べられる。美味しいか美味しくないかは置いといて。
はあ、料理がトラウマになりそうだ。というかほぼなっている。
誰か料理得意なやついねえかなあ。料理得意そうな人......。
そういう人に教えてもらう魂胆だが赤木や彩葉、真白以外としか話さない俺にとってはそう簡単に見つかるものではない。
すると、赤木からメールが返ってきた。
『これ薫生が作ったやつ?』
認めたくないがそうである。
『我ながらの出来栄えかな』
『拡散しといて良い?』
こいつ......。
俺はミュートにしてスマホを閉じた。
誰か料理得意な人いないかな......。
するとある人物が頭に浮かんだ。
「真白......うーん、ありっちゃありだけどなんか悪いし......」
真白は料理が得意だったような気がする。
真白の料理と言ったらバレンタインで貰った手作りチョコくらいしか思い浮かばないのだが、それは美味しかった思い出だ。
それに女子力が高そう、という謎の偏見である。
俺のこれからの1人暮らしライフに関わってくることだ。
聞いてみるだけ聞いてみるとしよう。