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第10話 幼馴染と誕生日

 今日は日曜日、そして俺の誕生日である。かといって祝ってくれる人は誰もいない。

 ぼっち誕生日パーティーである。


 親はいない。1人暮らしだ。中3の春休みごろに親が転勤した。

 俺はまだ地元に残りたくてここの高校に行くと親に少し無理言ったのだが1人暮らしを許可してもらえたのである。


 だが結構1人暮らしは大変である。自炊しなければならないし、洗濯や掃除など家事全般を自分でやる必要がある。

 

 おかげで非常にいい経験にはなっている。


 親のありがたみを改めて感じる。


 

 日曜だからどこかへ出かけてもいいけど昨日行ったしなあ。

 と思い、俺はスマホを触ってゴロゴロとする。


 もう少ししたらコンビニでケーキでも買って食べよう。

 自分へのせめてものご褒美である。

 

 正直今欲しいものはない。

 親に、よかったら送るよ、と言われているが特にないので漬物が欲しいと返しておいた。

 貰われたものは使うが、自分から欲しいというものはこれといってないのだ。


 お金も別にありがたい仕送りで足りている。


 赤木からも常識の範疇で欲しいものあったら買うぞと言われたがなんとなく悪いので、別にいらん、俺とこれからも友達でいてくれ、なんて返したら抱きついてきそうになったので避けた。


 気持ちだけでもありがたい。


 そんなことを考えていると家の呼び鈴が鳴った。


 宅配便だろうか。


 俺はベッドから体を起こし、やや小走りで玄関へ向かった。


「はい、どちら様ですか......真白?」


 扉を開けるとそこには真白が立っていた。


「あっ今なんかやってた?」

「いや、暇してたところだ」

「えっとさ、その......」


 後ろに手を回してもじもじとしている。そして何やら持っている。


「薫生誕生日だから......その、えっと、たっ誕生日おめでと」


 そして少し豪華な包装に包まれた箱を渡した。

 思わず胸が高鳴ってしまう。誕生日プレゼントか。中身はなんだろう。


「ありがとう」

「べっ別に勘違いしないでね、いつものことっていうか、今まで薫生には色々と迷惑かけちゃったっていうか」

「おっおう......」

「じゃあ、これだけだから、また明日ね」


 真白はそう言い終えた後、そそくさと帰ってしまった。

 

 俺は扉を閉め、部屋に戻る。


「さて、中身はなんだろうか」


 真白の誕生日でのお返しも考えなければならない。

 俺は丁寧に包装を取り、箱を開けた。


「......これは、随分とありがたい」


 中身はタオルハンカチだった。

 実用性は抜群である。可愛らしいハンカチで文鳥が描かれている。

 

 真白らしいプレゼントだなと思い、口元が緩んでしまう。


 大切に使わせていただくことにしよう。


 ***

 

 終業式。


 やっと1学期の終わりである。思えば色々あったなと俺は振り返る。

 校長の話はフル無視で。


 めちゃめちゃ長い校長の話を聞いている生徒は約5%。


 それ以外の生徒は聞いているふりをしてボーッとしているか、聞いているふりすらせずに寝ている猛者もいる。


 俺はしっかりと聞いている......ふりをしている。

 確かに節目は大切だがこうも長々と話す必要はあるのだろうか。


 大体の生徒があくびをしてまだかまだかと終わるのを待っている。

 

 校長の話は大体10分くらいである。しかしどんな授業よりも体感長く感じるのだ。


 とまあ、そんなこんなで無事に1学期が終わり、夏休みが始まった。



「夏だー! プールだー! 美少女だあー!」


 赤木は俺の肩を揺さぶりながらそう叫んでいる。


 まあ気持ちも分からなくない。ようやく長期休みである。

 俺としてもどんな夏を過ごそうかと計画を立てている。


 ただ盆に祖母の家に行かないといけないので1週間くらいは潰れ、課題で見積もって1週間潰れる。

 それでも休みは長いか。まあ結局最終日まで課題が終わらないと言うオチが丸見えなのだが。


「課題は後回しでとりあえず遊びだよな」


 こいつに至ってはもう確定の未来である。


「初日に終わらせないのか?」

「ちっちっちっ、初日から遊ぶのです」

「どうなっても知らんぞ」


 とはいえ初日から遊ぶことなんてない気がするのだが。

 来週ぐらいには夏祭りがある。

 別に誰と行くとかは決めていない。......真白とは行きたいとは思うものの、俺から誘ってしまって良いのだろうか。

 親友には変わりないが、あの一件以降多少なりとも意識するところが増えたのは間違いない。


「夏祭り誰と行くとかは決めてんのか?」


 俺の心を読むように赤木は言った。


「いや別に」

「じゃあさ、俺ら含めて4人で行かね?」

「4人?」

「真白、彩葉、俺、お前」


 あれ、こいつ彩葉苦手だったはずじゃ?

 毛嫌いしていて、彩葉に出会うたびに、げっ、っと言っていたはずである。


「いやあ、彩葉とは訳あって友達になったんだ」

「そうか、なら良いんだが」


 メンツとしては悪くない。普通に楽しいだろう。


 ただ不安要素があるとしたら彩葉と赤木だろう。危惧していることが起こる可能性が高い。

 なんだかんだ言って2人とも恋愛オタクって部分は似ているところがあるのでそんな2人は混ぜるな危険だったのだ。


 まあ混ざってしまった以上仕方ない。


「それ全員行くのか?」

「まあそうだな、全員オッケーしてるぞ」

「俺は別に良い、むしろありがたい」

「じゃあ決まりだな、またメールするわ」


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