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第1話 幼馴染に傘を貸した

「......」


 花咲 真白(はなさき ましろ)は雨が降りしきる中、困った顔で屋根下で立ち尽くしていた。

 彼女の手にはバッグしか持っておらず傘を持ってきていないようだった。


 ただ無言で雨が鳴り止むのを待っているようだ。


 ただこの調子だと止みそうにもないだろう。天気予報を見ても雨マーク。

 一瞬傘を貸してあげることを考えたが話しかけづらい。

 

 今は話していない相手だし、彼女とは今では他人と言えるほどの仲なのではないだろうか。

 他人と言っても小中ずっとクラスも一緒だった幼馴染なのだけれど。


 俺、元宮 薫生(もとみや かおる)にとって真白は親友だと思っていた。


 ずっと一緒だったし仲は良かったと思っていたのだが......。

 真白と俺はたまたま同じ高校に入ることになった。

 

 また同じクラスだったらなと思ったわけだがそれぞれ別のクラスになった。

 

 そこからお互いに話したりする機会が少なくなった。

 

 それになんだか彼女の反応も前より大分冷たくなった気がする。

 話しかけてもツンと冷たくあしらわれるし、目が合うとたまに睨んでくる。


 どこか機嫌を損ねたのだろうか。

 話を聞こうとしてもそもそも話をすることができないので真相は定かではない。


 疎遠になった幼馴染といったところだろうか。


 高校に入ってから一気に真白はモテ始めた。女子からももちろん男子からも。


 そんな彼女に傘を貸したことがバレたら彼女に気があると思われ唆されるだろう。

 妄想すぎるかもしれないがその情景が容易に想像はできた。


 俺は無視して傘を差し、真白の横を通り過ぎようとする。

 

 ただ俺の足は自然と踏み止まった。


 このまま傘を貸さなかったらどうなるだろうか。

 学校で迎えを待つことになるだろう。それができなければ雨の中ずぶ濡れになりながら帰ることになる。

 

 そんなことになれば間違いなく風邪を引くだろう。


 それでは相合傘? それは逆効果である。


『大人しく彼女に傘を渡して俺がずぶ濡れで帰る』

 

 これが無難な選択だろう。ちなみに俺は1人暮らしなので迎えにきてくれるような人はいない。


 俺は彼女に傘を渡すことにした。


「真白、傘ないのか」

「なっ何? ......ないけど」


 まさか話しかけられるとは思わなかったのだろう。彼女は一瞬驚いたような素振りを見せた。

 

 そして俺はそんな彼女に傘を押し付けるように渡した。

 あまり話しても拒否られて色々悪態をつかれ、俺が傷つくだけだろう。


 俺は傘を渡すと先ほどより強くなった雨の中バッグを傘代わりにして走り出した。


「ちょっちょっと!」


 後ろから声がかけられたような気がするがそれを無視して帰路についた。


「......薫生」


 ***


「仕方ない、うん、仕方ない......うう」


 異変に気づいたのは朝のことだった。


 なんだか体が怠くてぼーっとしていた。

 最初はただ疲れているだけなのだと思っていたのだがそれも様子がおかしい。


 鼻水やくしゃみも出てきて体が熱っている感じである。


 風邪だと思いたくはなかったが案の定熱を測って見たところ38度を超えていた。

 というわけで俺は1人寂しく自室のベッドで横になっているのである。


 ちなみに俺の家に両親はいない。

 父が転勤することになったのだが、俺は残りたかったためそれを機に1人暮らしすることにしたのである。


 頭がぼーっとする。時刻を確認するともう正午を過ぎていたがここから動く気にも慣れずそのまま寝た。



 次に起きたのは家のインターホンが鳴らされた時だった。

 郵便か何かだろうか。ただ中々動けない。ベッドから体を起こしては見たものの頭がくらくらとする。

 朝より酷い状態だ。


 するとスマホに一件の通知がきた。


『もしかして風邪? 大丈夫? 薬とか色々持ってきたんだけど......』


 急に学校を休んだので友人が心配してくれたのだろう。


 そう思い、スマホを手に取り開いた。


 しかしメールの送り主は真白だった。


 ......え? 真白?


 意外な人物に唖然としてしまう。


 とりあえず俺は、ちょっと待ってて、といいおぼつかない足取りで玄関まで行った。


 玄関まであまり距離はないのだが、いつもよりも長く感じた。



 俺はスリッパを履きドアを開けた。


 そしてやはり真白が立っていた。白いビニール袋を手に持って。

 彼女の性格上申し訳ないと思ったのだろう。借りを返さなければ気が済まないという気持ちもわかる。

 まあ俺が勝手にやったことなので自業自得ではあるのだが。


 そもそもあれが大きな原因というわけでもない。


 日頃の睡眠不足とあの後帰ってよく体を温めなかったのが原因なのだ。

 どれか1つでも欠けていなかったらこうなる可能性はまず低い。


「あっえっと......大丈夫?」

「見ての通り風邪をひいてる」


 受け答えするのさえ辛い。真白には悪いが帰ってもらおう。


 俺はなんとかそう言おうとした。しかし真白は家に上がり込んだ。


「お邪魔します」

「え、あっちょ......」


 しかし現在の衰弱している状態ではそれを拒否することさえ億劫だった。


 真白は手の袋を床に置き、肩を貸してくれた。


「......すまん」

「気にしないでいいよ」


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