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饒舌な混乱 3

次回結構出てきます。

 牢屋のような控室の中で、俺は一人カバンの中の本を読み漁っていた。


 時間のない現在の状況から、何か使えるものはないかと急いで探しているのだ。


 しかし、俺の記憶している中でも使えそうなSCPというものが軒並み無いのだ。


 Keterクラスのもの、Euclidクラスのもの、Safeクラスのもの、思い出せる限りなにか無いかと探してみたが、無い。


 そもそもの話、ナンバリングまで覚えていないというのもあるのだ。


 現在財団が収容しているSCiPは一万以上だと言われている。


 俺が死ぬ前の一週間でも十数個のSCiPが発見され、収容物と認定されたはいいがSCiPではなくAnomalousアイテムとしてサイトに保管されたものも加えると相当な数に上る。


 時折反財団組織に襲撃され、ナンバリングされていた報告書ごと消えてしまうSCiPも存在するのだ。


 発見されたSCiPはその空いたナンバリングに放り込まれることもあるため、把握が難しい。


 それに時間があまりないのである。


 多分ではあるが、俺がここに入れられたのも俺がエキシビジョンマッチとやらに参加するための準備に時間がかかるからだろう。


 流石に闘技場の様子までは知らないのでどういった準備が必要なのかは定かではないが、一日二日とかかるようなのであればロットはそう言ったはずだ。


「これと……これは組み合わせて使えるか。いや、こっちの方が……」


 色々なものと照らし合わせて今俺が使えるものを検証していく。


 クロステストというのは本来財団内部でも推奨されておらず、確保、収容、保護の理念に少しでも反するのであれば申請即却下が普通だ。


 しかし、この世界には財団は存在しないし遠慮はいらない。


 少し実験者気質な俺は、このさいいくつかクロステストのようなものをしてみようと考えたのだ。


 ただ、俺自身がSCiPの能力を授かる以上あまり技術の要するものはできない。


 それに今回はあくまでも「なにか」と「なにか」を組み合わせて、この状況を何とかするのが先なのだ。


「あ、うん。これなら良いんじゃないか?これなら多少の無理を利かせても何も起きないだろうし、なによりよっぽどではない限り沈静化を図れる」


 方向性が決まった。


 あまり気乗りはしないが、ここでは勝つことよりも「相手に降参させること」を目的としてやっていこうと考えている。


 最終的な自衛としてのものは準備しておくが、あくまでも準備である以上使わないにこしたことはない。


 出来れば使いたくないのも事実だ。


 世界中の支部で対抗合戦したあの野球の大会とはわけが違う。


 これは人との闘いなのだ。


「――覚悟ができた」


 最悪は想定している。


 これ以上はもう死ぬしかないほどに。


 ならばここからは全力で「なんとかする」しかない。


 一言に重い気持ちをのせて、言い切ることにすべての息を使い果たし心を落ち着かせる。


 それと同じタイミングで「準備が終わった。出てこい」と言われ、俺は闘技場の中でも一番熱気がある場所、観客席に囲まれたバトルフィールドへと向かった。


 もちろんこの世界ではどう呼ばれているのかは知らないが。


 もちろん道のりなんてものは分かるはずがないので、時折「違う。こっちだ」と腕を引っ張られる。


 逃げ出そうと考えているかのように疑われるのはすこししゃくだが、どうしようもない。


「ここで待て。武器の選定も自由に行って構わない。ただ、扱う者は大人を想定している。貴様のようなガキが扱える武器があるかどうかは分からないので注意しろ」


 連れてきた守衛も俺が極端に道を間違えすぎるのに辟易したのか、言葉にとげをはらませてこちらに言ったのちどこかへと去っていった。


 さっき入った時に入り口に二人監視員が居ることは確認済みであり、逃げ出せることがまず不可能だろう。


 そもそもそんなにザルなのであればこんなにも野蛮な建物など秩序が崩壊して通路で殺し合いが始まりそうだ。


 ……特に使えるものがなさそうだ。


 そう武器を選定しながら考える。


 剣、やり、棍棒、盾、ナイフ、etc様々なものがそろってはいるが、どれも俺は使ったことがない代物で素人が使えるものとは思えない。


「しょうがない、準備に取り掛かるか」


 そう言って俺は、いくつかの武器を手に取った。


 ――――――――――――――――――――――――――――

「そろそろスタートだ」


 入り口の扉から声をかけられる。


 それと同時に、入り口とは逆側の壁がガラガラと音を立てて開いた。


 隠し通路である必要性は定かではないが、ここを進めば戦いが始まるのだ。


 小説を雑多に読んでいる以上、転生ものライトノベルのお約束に一度は触れてみたかった。


 俺の圧倒的な勝ち試合を観客に見せてやろう。


 石畳の隠し通路を抜けた先は、観客が上から見下ろす舞台のようになっていた。


 一つ舞台と違うことと言えば、地面は全く遮蔽物のない運動場のような砂地になっていたことだろうか。


 そんな風に観察していると、突然どこからか声が聞こえてきた。


 さっき聞いたロットの声だ。


「皆様方お集まりいただきありがとうございます。今回のエキシビジョンマッチは、いつものように大人が蹂躙される様子ではなく、子供が蹂躙される様をご覧になれるレアな機会となっております。これに満足していただけたのであれば、次のエキシビジョンマッチもよろしくお願いいたします」


 ロットは何者かにマイクを渡す。


「皆さんこんにちは!今回は悲鳴を十分に楽しんでいただくためあえて実況はいたしませんが、その代わり我々の持ちの中でも最上級を準備いたしております。では存分にご堪能を」


 そう言い終わると同時に、俺が出てきた扉の正面、同じ大きさの扉から2mはあろう筋肉の塊のような大男が出てきた。


 言葉を離さず、息の音しか聞こえてこない。


 観客席からは「いけー!殺せー!」と叫び声が聞こえてきた。


 ここまで来たら逃げ出せない。


 頑張るしかない。

今回はこちらのTaleを基づかせてもらいました。ありがとうございます。


"darumaboy"様作「ワールド・ベースボール・コンテイン」

http://ja.scp-wiki.net/world-baseball-contain


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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

https://ncode.syosetu.com/n2348hs/

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