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饒舌な混乱 2

少々間が空いてしまいました。

今回も一つもSCPが出てきませんが許してください。

SCP-1733

おすすめです。

「えっと、じゃあまずは多分知ってる人も多いと思われますがリローネさんの得意な武器や戦う方法なんかから聞いていきましょうか」


「ああ、いいよ。アタシはこの槌をずっと使い続けているのさ」


 そう言って部屋の隅にたてかけてあったハンマーのような大きい何かを指さす。


「あれはアタシがここに入った時から使っていてね。まぁ頑丈なうえに使いやすさもピカいちで、手になじむのさ」


 一発ふりまわしてやろうか?と言われたので遠慮しておいた。


「なるほど。では戦い方についてはどのようなイメージや、考えがあるんですか?」


「いやぁ、とくにはないね。天性の勘と、必要だと思ったことを瞬間的にやる。そう思ってるよ。だって理論立てて行ったってここの連中なんかただ突っ走るだけの攻撃のやつが多いからね。獣の直感の方が強いのさ」


「そうですか。ではほかの質問に移らせていただきます」


 そう言ってインタビューはしばらく続いた。


 リローネは何でも答えてくれた。朝は何からスタートするか、からその服はどこで購入しているのかまで「多分使われなさそうだな」と思えるような質問にも片っ端から答えてくれた。


「お、そろそろ時間じゃあないか。あたしは闘技場に向かうことにするよ」


 気が付くと、もう開始してから結構な時間がたっていた。


 時計はなかったが、この世界にも太陽のようなものは存在するらしく質問開始の時よりも幾分か傾いているように思える。


「じゃあ闘技場に向かう間歩きながら軽い質問でもしていいですかね?」


 必要か必要ではないか、失礼か失礼ではないかは別として、リローネは「ヒーローインタビューまで売りつける」と言っていた。


 ならば開始直前までついていった方が良いと判断したのだ。


「ああ、いいさね」


 そっけなく言ったリローネは壁に立てかけてあった大きな槌を手に取る。


 そのまま応接室のドアノブに手をかけ、開こうとしているリローネが何かを思い出したかのようにこっちに振り向いて忠告した。


「ただ気を付けな。ここはあくまでも闘技場だ。若くてヒョロいお前なんざ指鉄砲でも殺せるやつが山ほどいる。アタシが居ないところでケンカを売られたら逃げるか謝るかしないとその記事を書く前に壁のシミになってしまうからね」


「ええ、わ、わかりました。肝に銘じておきます」


 そう答えるしかなかった。


 何も分かってなどいないのに。


 応接室を出た直後であるにもかかわらず、俺は死を覚悟することになった。


「おやぁ?リローネさんじゃないか。今日も美しいね」


「あ?殺すぞクソボン。四重奏クアドラプルの通り名通りに四つ裂きにしてやろうか」


 応接室の前に、まるで出てくることを知っていたかのようなタイミングの良さで何者かが通りかかった。


 声をかけてきた何者かは、リローネの罵倒など歯牙にもかけないかのように表情を変えず、そのまま俺の方に視線を伸ばす。


「ああ、なるほど。シュードバッハ社のトスクだっけ。君昨日インタビューを受けるって張り切っていたね。そんな顔もとても綺麗だったよ」


「必要なこと以外しゃべらないって礼儀が無いのかお前は。金を湯水のように使ってくっだらねぇことばっかしてるくせに口も大洪水とは今日は一段と楽しそうだな」


 リローネはいやらしい目をしたその視線にイラついたのかさらに口調が悪くなっていく。


「だめだよ、リローネ。打斬の姫(フラッシュバック)がそんな汚い言葉を使っていちゃいけないじゃないか。それに君は僕の、ひいてはシェスティアーノ家の跡取りになる予定なんだよ?今からでも遅くない。言葉使いを改めてはどうだい?


「シェスティアーノ家のボンボンことロット様は教育がなされておりとても良い環境で育ったのですね。クソして死ね。そしてアタシは嫁にはならん」


 ロットと呼ばれた男性はこめかみに少し血管を浮きだたせ、薄い笑みでなおもリローネを口説く。


 しかし、リローネもそれに返し挑発をつづけた。


「そうか、君は彼が好きで目の前に居るから良いところを見せようとしているんだね。そんなヤツと結ばれちゃいけない。将来が見えていない子供なんて趣味悪いよ?」


「ああ、貴様よりかはよっぽどましだ」


「なるほど。じゃあソイツは殺すのが早いね」


 そう言ってロットはこっちを見る。


「ああ、殺せるもんなら殺してみろよ。優秀なシェスティアーノ家の血が汚れるぞ」


「あはは、そうだね。リローネ。でもね、ここは闘技場で、汚い金さえ流せば割と何でもありなんだよ?」


 そう言うとロットは指を鳴らした。


 置いてけぼりになってしまった俺は流れ弾で嫌な何かを押し付けられた気がする。


 リローネの方を向くも、ロットをなんとかすることにしか頭が回っていないようだった。


「守衛!今から僕はロット・フーロ・シェスティアーノの名においてエキシビジョンマッチを開催する!このトスクという男を連れていけ!」


 いやな予感は的中したと思う。


 エキシビジョンマッチと称してこの男は俺を殺すつもりなのだろう。


「いや、僕はそういうモノには参加はしませんし人と戦うなんてできませんから……」


 なんとなく無理だとは思うが自分の意志を言っておく。


 リローネもさすがに何が起きているのかを一瞬で把握したのかこっち側のフォローに回ってくれた。


「そういうことか。貴様流石にやりすぎだぞ!一般市民を巻き込むなんて闘技場の責任者が黙っているとでも思っているのか」


「なに、このトスク氏はちゃんと書面にサインをして、エキシビジョンマッチに参加し無残に死ぬだけさ。そこには何の違和感もない」


 ロットはウエストポーチから書面を取り出す。


 そこには書いた覚えのない紙に俺のサインが書かれていた。


 いや、正確にはこの世界に来てからなのだから書いていたのかもしれないが。


「偽造とは情けないな。シェスティアーノ家の名が泣くぞ」


「いや、偽造ではないよ。このサインは正真正銘トスクくんのものだ。闘技場ってのは入場者全員が同意しなければならない書類ってものがあるだろう?その時トスクくんはうっかりこの書類にもサインしてしまったのさ」


 まるでここでリローネが取材され、そのまま俺を殺すまでの算段が付いていたかのような口ぶりだった。


 いや、ついていたのだろう。


 こいつは話しているのを聞く限り異様なまでにリローネに固執している。


 降りかかるとても小さな火の粉も、振り払わないと気が済まないのではないだろうか。


 しかし、俺も意思表示だけはしておかないと自分の意志で動いたかのようにあとあと言われるのは嫌だ。


「え、えっと、僕が辞退することは」


「当然できないよ」


 即答された。


 これは多分やらなければいけないことなのだろう。


「じゃあ、少し準備があるからね。君は控室に。あ、リローネ。君はもちろん僕とともにVIP席に来てもらうよ」


 そう言ってリローネは別の屈強な男に連れていかれた。


「待ってください!こんなの不当です!僕は戦うことなんてできません!」


 リローネが去ってから命乞いを始めたように見せ、なんとかここで交渉できないかと考える。


「うるさいクソガキ。貴様なんぞがリローネと対等にしゃべっていただけで大罪に決まっているだろうが。死んで償え。あ、祈る時間は与えてやろう。誰にも祈られていない神にでも祈っておくんだな」


 そう一蹴された。


 そのまま俺は守衛に連れていかれ、まるで独房のようなところにぶち込まれる。


 死を覚悟するまでの時間と、作戦を考えられるまで落ち着くことができたのは不幸中の幸いだっただろう。


前書きのみな上に基づいているのかもあいまいですが、作者様と翻訳者様に敬意をこめてここに基づかせていただいたことを記載します。


"bbaztek"様作「SCP-1733 - 開幕戦」

http://www.scp-wiki.net/scp-1733 本家

http://ja.scp-wiki.net/scp-1733 日本語版


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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。

対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

https://ncode.syosetu.com/n2348hs/

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