ああ、空に輝く星々よ 2
次回からまた書くことが無ければSCPをおすすめする形にしていきます。よろしくお願い致します。
さて、ここから先少し日付が飛ぶことになる。
もちろんその間に何もなかったわけではなく、魔法の練度も上がり、シュバルとシズクの教えによって一人でもある程度クエストが行えるようになっていた。だがネズミたちの捜索はだいぶ時間がかかっているらしい。報告書を読み返しながら、何かミスが無かったかを毎日僕は確認していた。
向こうからの拒否が無かったという事は、探し物は彼らが見つけられない場所にあるということではないはずだ。それにもかかわらず数日間も連絡が無いという事はだいぶと難航しているに違いない。
「おいトスク、なにぼーっとしてんだ。行くぞ」
今日も今日とて街の外で薬草を採取し、モンスターを狩る。その間にSCiPで使えそうな物をピックアップする。その繰り返しだった。
報告が来たのはそこからさらに数日経った後のことだった。相変わらず僕の部屋はシズクにとられたままで、シュバルの部屋で夜中に報告書を漁っていたころだった。
相変わらず散らかっているシュバルの部屋の一部分を掃除し、そこで座って本を読んでいる僕の足元に、ネズミが一匹ちろちろと歩いてきた。口には紙を加えており、もしかしてと思ってネズミからその紙を受け取る。しかしそこには走り書きのように「シケドラ王国 王城」と書かれている。
「持って来れたりとかはしないか。まあ予測は付いていたけど、それでも良い働きだったね。ありがとうネズミ。お金はあるから明日の朝市で望む大きさのチーズを買ってあげるよ」
ネズミの頭をなでると嬉しそうに耳を揺らす。
『案外早く見つかりましたね』
「早い? 結構日数は経ってたと思うけど」
僕が突然話し出したことにネズミは驚いているが、守秘義務は保たれていると信じておこう。
『まさか。世界中から求めている紙一枚を探し出すなんて年単位でかかってもおかしくは無いですからね。この世界がどれほど広いのかは私にも判断がつきませんけど、それこそ無くしてしまった財布をサイト内で探し出すことと比べれば明らかに』
「まあ、それもそうだけど、本人……人? というかネズミたちは報告書を見る限り相当探し物が得意そうだし、それくらいじゃないかな」
『そんなもんなんですかね』
カインはそう言うと静かになってしまった。話しかければ返答はしてくれるだろうが、これ以上何を話すと言うわけでもなく、僕はそのまま眠りにつくのだった。
ーーー
朝日が登りきり、窓の外ではもうすでに少しずつ人の往来が始まっているような時刻に僕の目は覚めた。ネズミは一旦どこかに隠れていたようで、僕が目を覚ますと同時に肩に乗ってくる。持ってきた紙片に向かって書いた文言によれば、どうやら代金を払うまではどいてくれないらしい。
もちろん払うのだが、払そびれた場合はどうなるのだろうか。協力的なSCiPに対して非人道的な実験はあまり推奨されておらず、この先どんな不利益がもたらされるかわからなかったのでネズミに聞くだけにとどめたのだが、本人から語られたことは「取り立てる」の一言だけだった。
シュバルには先にクエストの受注を行なってもらいつつ、朝市を先に回ることにした。ネズミたちが探し回っている間に見つけたのだが、新鮮な食材やその場で作ってもらう既製品がなんとも美味しくたまに通っている。
元の世界での食事は世界中にフロント企業を持つ財団にも関わらず日本支部のワーカホリックさを表すかのように固形で簡易的にとれる食事が多かったのだが、自炊やこういった食事も悪く無いと思えた。
「っと、ごめん。朝市にネズミが紛れ込んじゃうと色んな人に迷惑がかかっちゃうから、ちょっとだけ隠れておいてもらってもいいかな」
小声でネズミにそう伝えると、器用にネズミは僕の胸ポケットに入っていった。外が見えるのかと心配に思ったが、バレないようにチラチラと外を見ている辺りその心配はないのだろう。あまり朝市に店を出している人たちには見つかりたく無いが、そんなヘマをするようなネズミでは無いと信じたい。
「トスク! 新鮮な魚が入ってるんだ。どうだい? 今日の朝食は魚にしねぇか?」
「野菜も摂りなよ。昨日はあっちの店が収穫期だったから相当鮮度がいいのが入ってるってさ。うちのも負けちゃいないけどね」
何度か通っているとはいえ、驚くほどの確率で声をかけられるのには相変わらず慣れない。店を持つ人の記憶力の高さはどうなっているのだろうか……などと考えつつ彼らの誘いを断り、乳製品の店を目指す。
あった、と見つけた店はレストランなどに乳製品を卸す専門の店だった。店頭には大きなチーズの塊が何個も積み重ねられており、僕が今向かっているものとは規模が違う……のだが、胸ポケットに入っているネズミはそこに行きたいと催促するかのように暴れ回っている。
「まあ、いいか。今後ともって事で」
テント型の店構えをしているそこの暖簾をくぐり、俺は中に入る。すでに今日のある程度は終わったのか、店の中は外と比べるとだいぶ少ない人数の人が乳製品を物色していた。店番をおこなっていたのは気さくなおばさんで、僕の顔を見るなり新規の客だと判断したのだろう。ゆっくりとした足取りでこちらに歩み寄ってきた。
「いらっしゃい。何かお探しのものが?」
「あー、えっとチーズを探してて」
「なるほど。ウチは切り分けての販売を行なっていないのでお一人で食べられるものとなるとこれとかになるかな」
積み上げられたチーズの上の方に置かれている、形は歪だが少し小ぶりなものを店員は見せてくる。胸ポケットのネズミはそれを見ながら僕の胸を二回タップした。
「じゃあ、それを二つもらってもいいですか?」
「あら、チーズ好きなのねお兄ちゃん。いい事よ〜背も伸びるからね。おばさんおまけしちゃおっかな」
そう言いながら店員のおばさんは紙袋を取り出してチーズを二つ入れる。そしてその脇に棚の端に陳列されていた握り拳ほどのサイズのものをおまけとして詰めてくれた。
店員のおばさんはそれをカウンターに持って行き、置かれていたメモに計算式と金額を書く。
「じゃあ代金はこれくらいで。またチーズが欲しくなったら来てね」
僕は持っていた袋の中からお金を差し出し、店を後にした。チーズの値段は思っていたよりも安かったのか、ここ数日間で貯めたお金はほとんど減ることはなかった。今後食糧難になったらチーズを食べるのもアリかもしれない。
それでも今日の分の朝食に使えるお金は残っておらず、僕はそのまま朝市を後にした。
その足で僕は近くの路地裏に入り込んだ。人通りはなく、薄暗い。歩いている最中、チーズの匂いに我慢ができなかったのかずっと胸ポケットで暴れていたネズミがすぐに飛び出す。
「はい、代金。ありがとうね」
チューと一声ネズミが鳴くと、僕の差し出した紙袋を咥えた。
「はは、そのサイズは持っていけるのか?」
僕の返答を求めていないような質問に対してネズミは答えるようにチューとまた一言鳴くと、路地裏の至る所から何匹ものネズミが現れ、隊列をなす。そしてそのまま彼らの背中を荷台のようにしてチーズの入った紙袋を運んで行った。
『案外ネズミも賢いもんですね』
「アレも腐ってもSCiPだから、多少は普通の人間よりも知能は備えてるんじゃ無いかな」
元から静かだった路地裏はさらに一気に静かになったように感じさせ、僕の呟いた「シケドラ王国か」という呟きは暗闇に吸い込まれていった。
今回お借りさせていた作品はこちらです。
"Kain Pathos Crow"様作「SCP-073 - "カイン"」
http://www.scp-wiki.net/scp-073 本家
http://ja.scp-wiki.net/scp-073 日本語版
"Labiosis"様作「SCP-6369 - ネズミ失せ物探し隊」
https://scp-wiki.wikidot.com/scp-6369 本家
http://scp-jp.wikidot.com/scp-6369 日本語訳
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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。
対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
https://ncode.syosetu.com/n2348hs/




