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誰がために お仕事開始の ベルは鳴る 5

知り合いに教えてもらったのですが、この作品が少なからず皆様に愛されているようでうれしい限りです。ゆっくりではありますが更新を行っていくつもりではあるので、よろしくお願い致します。


 結論から言うと、採取自体に関して苦労は無かった。それもこれも魔法サマサマ、と言うべきなのだろうか。研鑽と才能でまた更にこれ以上進歩することが信じられないほどに初歩の段階から万能性が高かったのだ。


 鑑定(アポイント)と手のひらから小さく灯る炎、今のところ出来る魔法はその二つだけだったが、一介の研究者時代にこれを持っていればもう一カ月は早く研究結果が出せたのではないかと思うほど、採集と言うものだけで言うなら十二分な能力だった。


 帰り道、シュバルと俺はそれぞれの籠の中を確認する。シズクは最初こそ色々と手伝ってくれていたものの、俺に渡された依頼書の抜き取った部分をこなすために先に街へと帰っていった。ハニーバジャー種の干し肉は帰りの市場で手に入れられるものらしく、……むしろなぜこれがギルドの依頼掲示板にあったのかは謎だがそれはさておき、それも買っておいてくれるそうだ。


「いやぁ、トスク。お前すごいな。ま、鑑定って初心者でもできる簡単な魔法なんだけどよ。それはそれとして結構魔力の消費が激しいからあんまり乱発できるものじゃねぇんだよ」


「いや……結構ぎりぎりだから。乱発してるように見えたなら上手いこと調整できてただけだよ」


 そう。この便利さの欠点は運動でフィジカル面に影響をかけるようにメンタル面に負荷をかけることであった。最初こそ楽しく、むしろ久々のフィールドワークに心躍らせていたのだが、段々とその真意を……というか乱発しないようにと釘を刺されたにもかかわらずに乱発しまくった結果この惨状である。


「いや、それにしてもだな。トスクが交信前に何してたか詮索するつもりはねぇんだが、魔法をそこまで耐えられるほどのメンタルを持ってるってのは案外稀だぞ。まぁ、あくまでもトスクの年齢では、ってとこだが」


 ユバル山地の丘陵を背にしながらシュバルはそう話す。その声色は賞賛と同時に憐憫のような色も交じっていた。まぁ、間違いはない。メンタルを鍛えるなんて、そんなものは天性の才能が無ければ過酷な状況に身を置かなければ出来るわけがない。


「まぁ、そうだね。人が死ぬところは見慣れてるかも」


「はは、冗談であってほしいな。その言葉は」


 街の建物が段々と見えてくる。ワーテルトードの討伐に出たのは街の東、今日の採集は街の西、そして俺とシズク、シュバルの本拠地の南に港があるといった話、そしてギルドのあった北の様子から、案外この街は小さいのだなと、変な物思いにふけるほどには疲労感がたまっていた。


「ん、まぁ話を聞きたいかって言うとオレもそこまでそういう話に興味があるわけじゃねぇからいいや。それよりも、ギルドに報告しに行こうぜ。リーダーにも報告しといた方が良いだろうしな」


 ギルドにはまだ夜になっていないからだろうか、まばらに人が歩いているだけだった。


 トールの居たところとは別の受付カウンターで手続きを済ませ、倉庫番のような人物に集めたものを渡す。シズクはもうすでに手続きを終えていたのか、干し肉を渡していないにもかかわらず報奨金がもらえたことは驚きだった。


「っと、初仕事にしては大した収穫だ。俺の取り分はこれで、お前のがこれな」


 手に持った袋からシュバルは何枚かの貨幣を取り出し、残り全てを渡してくる。


「え、こんなに貰っても良いの? あんまり俺なんも出来てなかったと思うんだけど……」


「ん、良いってことよ。手が増えたことの祝い金も含めてあるわけだから」


 まあ、僕もサイトで働いていた時にDクラスが新しく一人増えると嬉しく思ったものではある。もちろんすぐに終了してしまうかもしれないし、それ以上に彼ら彼女らはここに来るべくして来た人物であるためここまでの高待遇にはしなかったが。


「そんじゃ、今日はこんくらいかな。シズクは……っと。いたいた。おーい!」


 シズクは何の手続きを行うかも分からないカウンターで受付の人物と話していた。どうやら少し見知った顔らしく、話し込んでいたようだ。


「シズク、飯行こうぜ。飯」


「お、シュバル。ん、了解なのだよ。じゃあまた今度、絶対勝つ!」


「あいあい、その意気込みで頑張ってくれな」


 受付のその人は適当にシズクをあしらい、また仕事へと戻っていった。その後は他愛もない話をしつつ、夕食を三人でとって自室へと戻る。僕の所持金は何故かその食事では減らず、シュバルとシズクにおごってもらう羽目になったのだが、一応もと居た世界での年齢を加味するなら僕のほうが年上なわけで、なんだか面はゆいような空気にずっと包まれていた。


―――


「で、なんでお前も居るんだよ」


 シズクは今晩も泊まる宿が見つからなかったようで、僕の部屋の僕のベッドに座っている。


「んえ~、元々この部屋は私の部屋なんだよ? 良いじゃんちょっとくらい~」


 べッドの上でじたばたと暴れるシズク。見た目は完全にもう大人の女性にもかかわらず、その様子は明らかに子供のそれだ。


「トスク、お前の判断はどうなんだよ。こんな女の言うままにしてていいのか?」

 

 不満そうな顔でこちらにシュバルは同意を求めてくるが、僕としては別に何とも思わない。そっちのケがあるわけではないが、別に女性が一緒のベッドだったからと言って変な気を起こすわけでもない。


 多少気になる時も昔はあったが、今はもう過去の話だ。雑魚寝していた部屋でその日のうちに何人もが血を流している様子を見たあの日から、もう何も感じなくなっている。


「なあに? 案外不満じゃなかったりしちゃったり? うれしいなあトスクくん」


 ベッドに寝転びながら頬杖をつくシズクは、にやにやとこちらを見てくる。


「いや、そういう訳じゃないけど……まあいいか。今日もシュバルの部屋で寝て良いかな?」


「ん、まあお前が良いなら良いけどよ。この部屋も相変わらず貧相だし、盗まれるもんなんてないか」


「嫌だなあ。私もさすがにそんなことはしないさ。ま、ベッドで寝はするけどね~。じゃ! おやすみ」


 ぼくの決断を聞いたシズクはその返事が僕の口から発せられたその瞬間、即座に僕とシュバルの背中を押して部屋から押し出した。カギの一つもついていないような部屋だ。無理に押し込めばもう一度は入れるのだろうが、それはやめておくことにした。


「ま、しょうがないか。トスク、何かやる事あるなら俺は先に寝てるがどうだ?」


「あー、分かった。先に寝てていいよ。ちょっとだけやることがあったりなかったりするから」


 なんだその言い方と言わんばかりの顔をしてシュバルはそのまま自室に入っていった。その足で僕は朝、顔を洗った井戸に向かう。月夜の中、あかりの少ないそこで周りに誰もいないことを確認し、僕は本を開いた。

今回お借りさせていただいたものはありません。


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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。

対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

https://ncode.syosetu.com/n2348hs/

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