鼻高々簡単な浅はかさナンバーワン 5
病気、怖いですね。体が弱いので罹患しないように様々な対策は行っていますが。
予防接種や点滴よりかは痛くはないですが、それでも注射は怖いです。
万能薬の開発、待ってます。
「あ、そうだ」
頭を掻く手をとめ、シュバルが思い出したかのように手を打つ。
「お前の服、出来上がってたぞ。今持ってくっから待ってな」
たぱたぱと足音を響かせて隣室へと戻っていくシュバル。数分後、折りたたまれた服を持って戻ってきた。
「お代はオレの顔に免じて後払いで大丈夫だそうだ。とりあえずサイズが合うか着てみろとさ。姉御がサイズミスを犯すはずはないとは思うんだが、一応、な」
「ありがとう。あっと……どこで着替えようかな」
いくら眠っているとはいえ、異性の居る前で着替えられるほど俺のモラルはまだ壊れてはいない。が、この部屋はワンルームで、クローゼットもなければ戸棚のようなものすらない。
部屋の前の廊下で着替えるのは元も子もないし……。
「あ、じゃあオレの部屋使えよ。しばらくオレはこっちで待っててやっから。なんかあったら壁叩いて呼びな」
「じゃあお言葉に甘えさせてもらって……」
送り出されるままに、シュバルの部屋を使わせてもらうことにした。
シュバルの部屋は俺の部屋と同じ間取りであるにもかかわらず雑多に物が積まれており、俺の部屋と比べると一回りほど小さく感じる。足元に積まれている布切れや直方体に切られた石、何本も立てかけられた大きな骨に空き瓶の数々。実験室時代のデスクを思い出すような雑多な中で、しかしベッドの上だけは綺麗に何も置かれていなかった。
仕方なくベッドの上に着替えを置き、今着ているものを脱ぐ。
全く気が付いていなかったが、今の俺の下着は子供のそれにそっくりで自らの恥ずかしさに頭から湯気が出そうになった。
「まだ子供……ってわけではなさそうなんだがな」
細身で筋肉も見受けられるほどにはついていないこの体、中身が財団職員、しかも博士だなんて信じられない。窓にうつるその姿は顔も含めてオッドアイの少年だ。髭面のアラサーではない。
「っと、下着下着」
悲しいかな、ナツメグの仕立てた服の中に、下着は含まれていなかった。ため息とともに、諦めの感情が噴き出してくる。
「しょうがない、か」
下着を探しながらすべてベッドの上に広げてみてわかったのだが、今回ナツメグが仕立てたのはシャツ、上着、ズボンが二つ、そして帽子と長短それぞれベルト二本らしかった。
「ん?なんだこれ」
シャツの胸ポケットに一枚メモが入っていた。
「二枚目も欲しかったら来な。正当な対価をもって仕立ててやるよ」
「一張羅ってことね。汚せないな」
そうつぶやいてメモを脇に置き、仕立ててもらった服を着てみる。シュバルの部屋には鏡が無く、窓の反射で自分の今の姿を確認しつつ、それぞれがどう上下するかを考えるのに少し時間がかかってしまったが、どの順番で着こなすことが正解なのか段々と把握できて来た。
まずベージュ色のワイシャツを着、そして下に半ズボンをまず履く。そしてサイドが丸く太ももまで空いた布製のオーバーオールを履くのだ。太ももの下部、絶対領域と世間では呼ばれていた部分が外気に少しさらされてしまうが、これは防寒の観点からみて大丈夫なのだろうか……?
最後にベストを羽織り、キャスケット帽を被って着こなしは終了する。オーバーオール、半ズボンそれぞれ左サイドにベルトの装着可部があり、オーバーオールは履かずとも良くなっているようだった。ベストの肩にもベルトの装着可部があった。はじめはこのベルトが意味をなしていないものなのかと悩んだが、どうやらそうではないらしい。
ベルトは、つけてみるとナイフの鞘をさすことができるようになっていた。構えてみると少し浅めに調整してあるらしく、しゃがみながらでもナイフを抜くことが容易な位置に取っ手が来るようになっていた。
肩に装着するベルトは、むしろベルトというよりもカバンに近しいものだった。肩掛けカバンのようなそのベルトには、SCiPが書かれた本がすっぽりと入るようになっていた。
全体的に引っかかりもなく、むしろ体格をしっかりと理解した上でなおもう少し余裕をもって作られているため少しの体格変化にも対応している。
「すごい……」
ここ数年安物のワイシャツに財団支給のズボン、健康サンダルと地面に付く部分を荒く切り取ったXLの白衣しか着た記憶がなかった俺にもわかるほどにクオリティが高く、それでいておしゃれに見えた。防寒性は……コートでもどこかで見繕えばいいだろう。
元着ていた服を手に持ち、シュバルの部屋を出る。
「一応こんな感じ。サイズもちょうど良かったよ」
俺の部屋の扉を開け、サイドテーブルの下に乱雑に汚れた服を放り投げた。
「おー、似合うもんだなぁ。……寒そうだが」
ごつごつとしたシュバルの手がオーバーオールのサイドから太ももに触れるようにつっこまれる。この街の今の季節が比較的温暖なのか今の服装で大丈夫なものの、やはりこの街に住んでいたシュバルからしてもおかしいものなのだろう。
「ちょーっと、くすぐったいからやめてくんないかね? それになんか変態チックだよ」
「おっと、すまんすまん」
両方ともハンズアップして何もする気はないと言わんばかりに無実を主張するシュバル。
「あ、でさ」
「ん?」
ふざけた空気が場を支配して、談笑という言葉がそのまま似合うほどに物腰砕けた会話が始まる。
「やっぱりこれ寒そうだよね? コートとか買っといた方がいいのかな」
「あー、そうだな。一応まだしばらくはあったかい季節が続くが……朝露蝶捕まえに行くときちょっとばかし冷えるかもな」
朝露蝶、ナツメグに欲しいと言われたメモの中の一つだ。
「じゃあ防寒着も買っておいた方がいいかもね。最初に案内してもらった時にいくつか街に店はあったし」
「んー、いいんじゃねぇの。それよりもさ」
ランタンの火が揺れる。
「トスク、お前金ねえぞ」
当面の問題が今ちょうど、浮き彫りになった。
「だからヒヒ鳥を仕入れつつ、なんか仕事こなすしかねぇべな」
頭の後ろで手を組んだシュバルが楽観的に言うが、俺のこの細身の体で仕事ができるとは到底思えなかった。
今回参考にさせていただいた作品はありません。
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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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