鼻高々簡単な浅はかさナンバーワン 4
組んでいるプロットが大まかなものなので、キャラが自由にうごきまわるのが困りものですね。
強制的に動かさず、それでいて思い描いた作品を作り上げられる方には驚嘆しかありません。
結局のところ、カエルの討伐で身に着けたのは自信と、そして「なんとかなりそう」という曖昧模糊とした感情だった。一日という長い時間の間に成長できた実感が湧き、久しぶりにぐっすりと眠りたい気分だった。
その様子がシュバルにも伝わったのか、それともあからさまに疲れが顔に出ていたのか、街に戻った時にシュバルは「オレが姉御んところに持って行っとくから、トスクは寝てな。どうせ牢屋でもロクに寝れてねぇんだろ。夕方までまだ時間もあるしな」と言い残してどこかへと去っていった。
日の傾き方からして午後三時ほどだろうか。疲れた体を引っ張るようにして一番最初、俺が目を覚ました建物まで到着する。俺の部屋は確か、二階の一番奥だった。
久方ぶりの比較的安全圏にある拠点に戻ってこれたという感動は、ベッドに倒れて意識を失う直前に実感した安堵感がもたらしてくれていた。
気が付くと窓の向こうから月明りが部屋を照らしていた。いつの間にかベッドに垂直になる形で倒れていたのに、しっかりとベッドで寝る姿勢を取っている自分に驚く。
「……ん?」
体を起こそうとして、自分の胴回りをガッチリとホールドしている何者かの存在に気が付いた。ここは自室で、鍵はついていないものの何者かが入ってくるほどの金目の物もない。ましてや……ましてやこの背中に当たる感触からして女、女性が俺を抱きしめて寝ているなんてことがあるはずがないのだ。
犯罪ならまだあきらめもついた。寝るときに持っていたナイフはベッドの上に投げ出されていたし、抵抗もできる。
しかし、この状況は何が起きているかの判断を判断力を鈍らせるという意味でも低下させていた。
この今の自分の背丈はおおよそ百四十後半ほどの小さなものだったことから概算するに、この人物は百八十ほどある高身長の女性ということだろうか。シュバルと同じ冒険者か、あるいはそれと同じような職業についていることが容易に想像できるかのように、俺をホールドした腕が離れない。
「ちょ、ちょっと!」
ぐいぐいと腕を押しのけつつ、目の前にある手の甲をバシバシと叩く。ぐっすりと眠っているその女性の腕がそれに反応するかのようにピクリと動き、そのホールドを強めてきた。
骨のきしむ音が、全身を駆け巡って鼓膜へと到達する。空気が口から自然と漏れ始め、自分の死を連想させるような気分にさせられた。
「おきて……死、死ぬ、死んでしまう……!」
苦し紛れにバタバタと暴れ、最後の一息を吐き出すように大声で叫ぶ。その声に反応するかのように後頭部のその上の方から目覚めたのであろう明らかに自発的に発生させた言葉では表現できない抽象的なあくびともとれない声が聞こえてきた。
その瞬間にホールドも緩まったため、急いでその腕の間から抜け出す。小さな体躯の有利な点として、こういったタイミングで逃げ出すことが容易であるということがまさに体感できるほどにスルスルと抜け出すことが出来た。
ベッドが簡素なもので、上下に転落防止の柵が付いていないことも幸いしそのまま部屋の角に立つ。
「なんで俺の部屋に居るんですか……」
ぜぇぜぇと胸で息をし、新鮮な空気を肺に送り込みながら寝ているその顔を見た。
「ふわぁ……なんでって、久しぶりに帰ってきたら私の部屋に見知らぬ男の子が居て、可愛かったから神様がご褒美をくれたのかな~って」
「っ、ここは俺の部屋ですよ!?」
間違いない。ベッドの下に残していたケースはちらりと見たが未だに健在であったし、メモ書きもサイドテーブルの上に一枚おいてある。
「んえ~? なんで? ここ確か私の部屋だったような……」
その時だろうか、騒ぎを聞きつけたのか、シュバルが部屋の扉を開いて俺の部屋に駆け込んできた。
「何があった!!」
昼間に見たようなものではない、普段着……というか肌着だけ、それと片手に折りたたまれた槍を持っている。
「シュバル! 見知らぬ女が部屋にいて……」
状況を説明しようとしたその時、シュバルはその女性の顔を見て心底驚いたような表情を浮かべた。
「シズクじゃねぇか! なんだ帰ってきてたなら教えてくれよ!」
「シュバルくん、お久しぶり」
「あぁ、久しぶり。ところでいつ帰ってきたんだよ」
「数刻ほど前なのだよ。とりあえずギルドの方に挨拶を済ませて疲れて帰ってきたところなのです」
この二人は知り合い、なのだろうか。いぶかしげな目線に気が付いたシュバルが話し出す。
「あぁ、そうか。この人はシズク。オレらと同じ冒険者の一人で、北方の出身のやつ。一年位前に里帰りするって言って一旦この街を離れたんだが、帰ってくるタイミングも未定のまま出ていきやがってな……」
「でも大体一年で帰ってくるって私言ったじゃないのさ。なんで私の部屋が勝手に使われてるのよ?」
ベッドに座りながら頬を膨らますシズクの肩に、シュバルの手が置かれる。
「お前、家賃一気に十二か月分しか払ってなかったから契約解除されたんだぞ……」
憐みの目でまっすぐシズクを見つめるシュバルに、驚きの声で「マジで……」と瞳孔をすぼめてまっすぐにシュバルを見つめ返す。
「というわけでここはもうお前の部屋じゃない。一カ月前からコイツの部屋だ」
シュバルはそう言って俺の方を指さす。
その現実を段々と受け止め始めたのか、シズクから滝のような涙がこぼれだした。
「じゃ、じゃあ私……住む場所……ナイ……」
ギャグ漫画を彷彿とさせるような滝の涙が、延々とシズクの頬を伝っていく。その光景がさすがに不憫に見えてきて、助けなければといった庇護欲を掻き立てられた。
「じゃ、じゃあだけどさ、俺の部屋に一緒に住む……? もともとこの部屋に住んでたんだったら使い勝手もいいだろうし」
「あっ、お前バカっ……!」
その一言にパっと顔が明るくなるシズク。
「いいの!? ありがとー!!! 私の名前はシズク、獲物は弓と大太刀! よろしく! じゃあ私眠いから寝るね!」
立て板に流れる水のごとく言葉を並べ立てると、シズクはそのままベッドに倒れこんだ。
その背丈では後頭部を壁に打ち付けるのではないかと危惧したが、その心配はいらないと言わんばかりにベッドに倒れる途中で方向転換が行われた。シズクの頭はそのまま俺の使うはずだった枕に沈む。
「お前、いくら見た目がそれだからって交信してることも伝えずにこれはどうかとおもうぞ……」
あきれたシュバルが、頭をポリポリと書きながらこちらを見つめていた。
今回参考にさせていただいたものはありません。
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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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