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よーいドンのスタートライン 4

SCP-2597-JP、面白かったです。

 ナツメグは唇をぺろりと舐め、まるで獲物を捕獲し終えた狩人のような喜びの表情を浮かべていた。


「ここまで情報量の多い血は初めてだよ。発狂しそうなほどに脳にあふれてくる」


 平気そうな顔をして「はいはい」と受け流すシュバル、光景にドン引いている俺、恍惚の笑みを浮かべるナツメグの三人が同じ空間に立っており、その場は異様な空気に支配されていた。


「あ、そうか。トスクは知らないのか。姉御は味覚異常者なんだよ。味でいろんなことを感じることが出来る。空気を呑めば天候はあらかた予測できるし、人の、とくに血液や精液なんかは情報の宝庫だから舐めるだけでそいつの情報が大方察せられるほどなんだよ」


 その言葉に合わせるかのように大きく開いた口の中からこれまた特段大きな舌が顔を出す。ザラりとしたその表面はまるで突起一つ一つが意志を持っているかのようにうねり、大海原のように見えた。


「バカ、その言い方は差別っぽくてアタシは好かないって何度言えばわかるんだい。アタシは味識者ソムリエだって何度も言ってるだろう。それにアタシは男のシモを舐めるほど貧弱じゃないんだよ。もし食ってほしいなら金玉をテリーヌにでもしてにして持ってきな」


「姉御~、何度も言いますがダサいんですってその二つ名。それにテリーヌなんて料理知らねぇんでつっこめねぇんですよ」


「あの、それで……」


「あぁ、服さね。分かった。アンタちょっとはできるようだし、作らせてもらうよ。さ、後ろ向いた。ちょっとはからせてもらうよ」


 そう言ってナツメグは自分の頭に巻いていたバンダナをほどくと、カウンターの向こうからこちら側にやってきて俺の肩や腰に当て寸法を測り始めた。


 そんな彼女の頭の上には、人の物とは思えない隆起した何かがひっついていた。


 あれは……なんだといぶかしげに見ていると、その奥に立っていたシュバルと目が合う。


「あ、なるほど。そうか。あはははは! そうだわな! 交信してるってことは常識外だもんな。すまんすまん。オレやお前みたいなのが人間、ジジイはドワーフだって言ってたよな。言ってなかったか? 覚えてないやすまんな。それと一緒で、ナツメグは獣人とエルフのハーフなんだよ」


「つってもアタシのエルフ要素なんざ美人ってことくらいだけどな! ハハハ! おい、なんか言えよ」


 肩に置かれた手の力が段々と強くなっていく。ミシミシという音が段々と骨を伝って鼓膜に流れ込んできた。


「なんてな。女の子が悲しまないようにするのが本当の紳士だぜ少年。耳が親父に似やがったせいでエルフというより人間みたいな見た目になっちまったわけさ。この大きな口も親譲りが混ざり合った結果ってわけさ」


「しっかし、獣人、しかも牛のやつとエルフが出会うなんてきょうび聞いたことないんですが、というか詳しく聞いたこともなかったんですが、姉御はその……言いにくい事情でも……?」


「殺すぞ汚物顔面男(shit man)。純愛って言葉も知らない初心なガキほどそういうことを考えるんだ」


 なかなかに口汚いののしりが一方的にしばらく行われつつも、俺の体の採寸はしばらく続いていた。


「あの、ちなみにお代は?」


 そういえば、ともう心もおれているのにもかかわらず投げつけられている罵倒の間に割って入って聞く。シュバルの目は真っ赤に充血し、こちらにありがとうと物語っていた。


「お代ねぇ。シュバル、コイツの持ち金はいくらか知ってるかい?」


「知らねぇなぁ。ただでもそこまで持ってなかったはず」


「ならなんで連れてきたんですか!?!?」


 おい、じっとしてな。という声とともに両肩が掴まれて俺の体が半回転させられる。


「そりゃお前」「そりゃあんた」


「「出世払い」」


 見事なまでにハモったのは、示し合わせているからだろうか……。


「言い方が荒いせいで誤解されるんだけど、アタシもシュバルも詐欺ってやろうってわけじゃあないから安心しな。単純な話、タダ働きさね。ほれ、シュバル、これよろしく」


 そう言って一枚の紙がシュバルと俺に手渡される。


 そこにはワーテルトードの粘液、朝露蝶の繭、ヒヒ鳥の死骸(新鮮なもの)といったよくわからない単語が羅列されていた。


「今回はこれを持って来いってことね。っつーことだトスク。出世払いと言いつつ俺らはもう出世して冒険者だからな。物々交換だよ。だいぶん……ボられてる気はするけど、姉御、気のせいか?」


「そんなことないさ。門出祝いだよ」


 言い訳になっていない気がしたが、装備が無ければどうにもならなさそうだったので仕方なく受けることにした。


「まぁ、オレが手伝うからなんとかなるか。もともと予定してたやつもこなしつつだからちょっと遅くなるかもしれないが、姉御……いい?」


「それくらいはいいさ。シュバルは信じてるからね。逃げたらマジで殺すよ」


「はいはい」


「んじゃ、アタシは奥でソイツの服作ってくるからちょいと待ってな」


 足先まではかり終えたナツメグはそのままバンダナを頭に巻き、奥へと入っていった。何日待つことになるんだろうという不安とともに。


前書きで名前を出しただけですが、今回参考にさせていただいたものはこちらです。

"Ikkeby-V"様作「SCP-2597-JP - 東弊十二試艦上戦闘機」

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2597-jp


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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

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