よーいドンのスタートライン 3
ゆっくりではありますが、投稿も頑張っていきます。何度もおやすみをいただいてすみません。活動報告の方に更新報告を逐次書かせてもらっているので、もしよければそちらをチェックしていただけると幸いです。
久々に見る日の光は案外懐かしさもなく、それでいて特段求めていたものと言うわけでもなかった。
もともと研究者気質な俺にとって日の光は一カ月に一時間以下程度しか浴びないことはザラだったし、最長記録となれば一度大掛かりな実験のタイミングで一年間サイトから出なかった時期がある。
サイトというものはどこも基本的な施設を除いて収容のために窓もなければセキュリティ用にドアも極力少なくしていることが多い。バカの脱走も収容違反も起こさないためにはそれくらいでまだ甘いほうだと俺は考えている。
「なに考え込んでんだよ、トスク」
後ろからシュバルが声をかけてきた。
「牢屋に入れられてたとはいえ、一応今日からお前は冒険者ってことなんだから。ほれ、仕事」
何枚かの紙を束ねたものをシュバルはこちらに渡してくる。
「お前の元居たとこから記事の作成が二件、それに採集が一件と見回りが一件。討伐系は他のやつに任せてあるからとりあえず今日は訓練と……あと服だな。お前の服、一応ほら、それじゃん?」
シュバルが指をさす先には、大きい円形の血痕。
「それに記者の服ってのはいつ見ても冒険者向きじゃねぇな。丁寧に作られてるが、動きにくそうでいつ見ても背中が痒くなってくる」
「結構着やすいんだけどな、これ」
普段着が白衣だった俺にとっては、案外ドレスコードのしっかりとした服という物はなじみが深かった。
「あ、そう。じゃあそれっぽい感じでせめてみるか~。とりあえず防具屋と、武器はどういうのがいいんだ?」
「う……ん~」
マズイ。非常にマズイ。本を使えば割と何とかなるんだが、それを言ってしまうと面倒なことになるのは必至。というか正直異世界人にSCiPをちゃんと説明できる気がしない。
「迷ってんなら武器屋できめるか。体格的にでけぇ獲物は持ちにくいだろうしな」
『私は素手でいいと思いますけどねぇ。アベルも結局素手で死にましたし』
「黙れ超人」
「ん?」
「あ、いや……なんでもない。こっちの話」
あっそ。とだけ言ってシュバルはまっすぐ目の前の道を歩き始めた。昨日の朝はまだ起きたばかりだったからかこの歩幅の差についていくことが出来たが、よくよく考えると青年と子供ほどの差がある歩幅はこちら側の負担がだいぶんと大きい。
いろいろなことが起こりすぎて、結局ネタの兼ねてないのかわからないような一晩を過ごした俺にとって、その差が重くのしかかってきた。
「記者様は足で稼ぐんじゃなかったでしたっけ? ……っとそれは前のお前の話だったな。失敬失敬」
「正直なところ元の体と背丈が違いすぎてこれだけはまだ慣れないんだよね」
「よくお前それであの切り裂き魔倒せたなぁ……まぁいいや。もうすぐで防具屋だから、一旦きばれ」
「……おう」
数分きばると、防具屋らしき店が見えてきた。店先に置いてある肋木のような棚には、どこに巻くのかわからないほど短いベルトや水着のような服、果てはシルバーアクセサリーなどが雑多に並んでいる。
安い!と大きく書かれている辺り、売れ残りの叩き売り品なのだろうことは見てとれた。
「起きてっか〜」
シュバルが入り口の暖簾をかき分けて中へ入る。それに倣って俺も後ろについていった。
中は表に並べられた雑多な小道具とは違い、様々な体を守る防具が理路整然と並べられていた。
「起きてるよ〜。なんだいなんだい知らない顔が来たじゃないか。…………息子かい?」
カウンター奥、真っ暗な向こう側からその声と共に短髪の女性が顔を出す。頭にバンダナを巻き、首までタトゥーだらけのその女性は、気怠げな目でこちらを見つめてきた。
「バーカ。そんなんじゃねぇよ姉御。新人だよ、し・ん・じ・ん」
視線を遮るようにシュバルは俺の目を覆い、女性から隠すように彼の後ろへとその身を誘導させてきた。
「ジョークだよ。ジョーク。アタシはナツメグ。よろしくネン」
「よろしくお願いします」
シュバルの腰の裏から顔だけ覗かせてナツメグと自己紹介したその女性に挨拶をした。今にも俺の体を丸呑みしそうなほどの大きな口がにっこりと笑っている。
「新人なんて珍しいねぇ。坊や、案外しっかりしてたりして?」
「切り裂き魔殺し、やったのコイツだよ」
「は〜????? あっはっはっはっは!!! シュバル、嘘も大概にしとかないといつか死ぬよ? 大体今にも服も血だらけで死にそうじゃないか」
カウンターから乗り出して俺の肩をバシバシと叩く。その細腕にどこまでその力があったのか疑問に思うほどに強い力で、だ。
「アタシの細腕でもこんなになってるガキんちょが、あんなにボディーガード連れたお貴族様を大量に殺した切り裂き魔を殺せるはずないじゃないか」
「そう思うなら、ほれ」
そう言ってシュバルは俺の服に付いた乾き切った血に持っていた水をかけて滲み出たものを指につけた。
「ん〜?」
その指をナツメグはペロリと舐める。
「なるほど。これは確かにあの切り裂き魔の血だ」
SCiPも真っ青なほどに動物的な判断に、俺は若干引いていた。
今回も参考にさせていただいたものはありません。
異世界っぽくなってくればいいんですが、もし何か気になるところがあればコメントよろしくお願いします。
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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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