よーいドンのスタートライン
おすすめのSCPを紹介する、という前書きに書くものが無くなった時にやろうと思っていたことを脳が消去していました。また時折、タイミングがあれば。
SCP-167-JP、おすすめです。
結果から言うと俺はあのまま牢屋への直行便切符を受け取って冷たい石の床の上に転がされた。
あたりまえである。殺人を犯した人間が目の前に居たのだから。そして、まぎれもなく俺が殺した。
数瞬意識が飛び、覚醒を繰り返す。何度も何度も反芻するかのように今の状況を頭の中で整理していた。
フィールド、SCiPの憑りつかれた人間。そして最後の一人になるまで終わらないインシデント。
もし消照闇子のようなSCiPがまだこのバトルロイヤルに残っており、そして……最終的に勝利したらどうなるだろうか。
実態を持ち、収容違反を起こした最強のSCiPの誕生は最低でもGH-クラスシナリオ、一番ありえるRK-クラスシナリオ、そして……考えたくもないけどXK-クラスのシナリオにまで発展しかねない。
簡単に一人目の闇子を殺せたことは助かったと考えるべきなのか……。頭の中に発生するこまごまとしたこの現状が終わった後の靄は、今は考えないことにした。
『実際に殺したのは私……というかSCiPですけどね』
頭の中でカインが正論のような何かを語るが、それで助かるのは俺だけだ。ボイスレコーダーで終焉を予言しても、どんなにポケットの中のメモに予想されるすべての最悪の事態を書き留めても、元の世界に伝える方法が……ない。
「黙っておいてくれ」
それが俺の答えだった。
Dクラス職員が死ぬ現場なんて見慣れているし、エージェントや博士が実験に巻き込まれて命を落とす現場に立ち会ったこともある。
死ぬよりもひどいミーム汚染を受けて泣きながら射殺を懇願してきた同僚を撃ち殺した時の硝煙の匂いがその日の夕食の匂いにかき消されるほどに、俺は慣れていると思っていた。
いや、俺は慣れていた。だが今、心に巣くっている謎の胸糞悪さと吐き気と悲しみと焦燥感とその他すべての感情がどこに向いているかを言語化する力はなかった。だから分かりやすい理由に逃げていた。
笑えない。一応トップレベル……いや、日本の中でもトップの大学を出たにもかかわらず俺はこんなことも整理できないのか。歯がゆさが牢屋の床に涙となって零れ落ちていく様子に、ただただ肩を震わせることしか俺にはできなかった。
数刻、といっても牢屋には窓が無く一日後なのか数十分後なのかすらわからなかったのだが、面会だと言われて牢屋の前までやってきたのは、シュバルだった。古い牢屋であるためか、大人の男性が立ち上がった時に頭が来る位置に面会窓が付けられているためいささか話しにくかった。
「あぁ、シュバル、来てくれたのか」
「あのなぁ、トスク。一応外の世界との交信に関しては寛容だぞ? だが、それでもお前ルールっつーか、常識っつーかさ。一日目にして人道から外れた道突き進むことはねーべ」
「そうなんだけどね。ちょっと色々事情が……」
逸らした目の先には、何もない。ただ真っ暗な石の壁が広がっている。
一応異世界、文化の古さが目立つのか面会用の窓自体にアクリルがはめ込まれているわけでもないため、シュバルはそこに肘を置く。
「まぁ、相手方もナイフ持ってたしある程度緩くはなると思うが重罰は覚悟しときなよ」
ほら、といってコップ一杯分の果実酒を手渡された。聞くと毒見を済ませたうえで施設側のコップを使いその他いくつかの条件をクリアさえすればこういった飲み物の差し入れも可能らしかった。
一気に飲み干し、のどが熱くなる。最近酒なんてものを飲んでいなかったせいか、久々のアルコールに脳髄から手足の指先までが一瞬多幸感に包まれる。数秒で現実に引き戻されることを除けば、今の俺には最高の薬だった。
「ありがと」
「おう」
一言二言と言葉を交わし、面会用の窓は閉じられた。
—―バタンッ!
数秒も経たないうちにもう一度開けられた面会窓の向こうには、シュバルともう一人、鎧を着た壮年の男性が立っていた。
「トスク様、少しお時間をよろしいでしょうか」
「……はい」
意外と早く判決が出たようだ。ガチャリ、という音とともに鍵が開かれ、牢屋の中は一気に明るく照らされた。シュバルが案外平気そうだったのは、見た目が一緒なだけの別人と言う不可思議な立場の友人だったからなのかもしれない。
そのはざまで少し傾いている非情さと良心が、何気にうれしかった。
そのまま連れてこられたのは、誰も居ない三畳ほどの個室だった。中には椅子とテーブルだけ。俺がさっきまで閉じ込められていた牢屋よりも狭いところだった。
扉も鉄でできており、ぴったりと遮断する。ここで俺は何をされても誰にも気が付かれない。
「それでですね」
扉の鍵がしまる。それと同時に壮年の男性はこちらへと話題を振ってきた。
「トスクさん。あなたは今どういう状況だと思いますか?」
にじり寄ってくるその男。誓って言うが俺に男色の趣味はないし、恐怖を感じる心もまだ残っている。
「あの、ちょっと……やめていただけないかなぁと、思っています」
ひきつる口角を何とかなだめて、平静を装ったまま扉とは反対側の壁に背を付ける。俺と男の距離はわずか二メートル。カインは黙れと言う指示に馬鹿正直に従っているのか何も言わないし、今手元に本はない。SCiPを呼び出せる状況ではない。倦怠蝶の能力を借りていたはずなのにもかかわらず、さっき振れた時に何も起きなかった。
「あ、怪しいものではないんです! って言うと怪しく聞こえますね。トスクさん、最初に言わせてください」
男は置いてあった机に頭をこすりつける。
「同胞を救っていただき、ありがとうございました」
その場に一番ふさわしくないであろう単語が、男の喉から発せられた。
ストーリーを組むのは良いんですが、どこまで間の描写を入れるか悩みますね。まだまだリハビリ中なので、ここが分からないなどあればぜひコメントを頂けるとありがたいです。
参考にさせていただいたものは以下の通りです。
複数人作成「K-クラスシナリオ」
http://scp-jp.wikidot.com/k-class-scenarios
"ripeya-"様作「SCP-167-JP - 海岸定食」
http://scp-jp.wikidot.com/scp-167-jp
"Kain Pathos Crow"様作「SCP-073 - "カイン"」
http://www.scp-wiki.net/scp-073 本家
http://ja.scp-wiki.net/scp-073 日本語版
"jabyrwock様作「SCP-3209 倦怠蝶」
http://scp-wiki.wikidot.com/scp-3209 本家
http://scp-jp.wikidot.com/scp-3209 翻訳版
"home-watch"様作「SCP-835-JP - ゼノフォビア→消照闇子」
http://ja.scp-wiki.net/scp-835-jp
※1.SCP-835-JPはゼノフォビアに取り消し線が引かれ、矢印は存在しませんが表記の都合上このような形にさせていただいています。
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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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