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遺物と異物

まだそこまで進展はしません。


 薄暗い廊下にはいつくばっている気がした。


 頬に当たる冷たさは冷たい木の板のようで、頭の中を急速に冷ましていく。


 ここはどこだろうか。俺はどうしてこんなことになっているのだろうか。


 周りがぼやけているのか、あまりよく見えない。


 たしか、蒐集院に襲撃されて、どうなったんだっけか。


 そうだ。機動部隊に化けていた蒐集院のリーダー格に首を落とされて……。


 感覚的に今なぜか胴体はあるように思えるが、俺の記憶している限りではそのまま絶命しているはずだ。


 ああ、何か巻き込まれたか。地面に頬をべったりと付けながら考える。


 しかし、瞬間移動をするSCiPは記憶にはない。


 あくまでもうちのサイトで扱ったSCiPに限られはするが、の前提だ。


 運ばれてきたアレか……?いや、レポートにはそんな異常性はなかったはず。


 これはAnomalousアイテムに分類されるのではないかと思うほどに安全だった。


 では何か別の異常性があったのだろうか。いや、エージェントらは「蒐集院をおびき出す作戦」だと言っていた。


 ならばそんな危険があるかないかはっきりしていないものを使う必要性がない。


 なぜだろうか、頭を使えば使うほどにひどく眠気が襲い掛かってくる。


 二度目の死になるのだろうか。異常性に捕らえられているならば、苦しまないものがせめて良いのだが……。


 ―――――――――――――――――――――――


 瞼を通して明るい光が差し込んでいるのに気が付いたのは、意識が覚醒したすぐ後だった。


 死んで……はいないのか?


 何が何やら分からないまま、そっと瞼を開けた。


 俺は今、木製の床に寝転がっていたらしい。


「死んでいない……ということは何かに巻き込まれたか。インシデントレポートを取って本部に報告できれば良いのだが……」


 地面に手をつきポケットに何か入っていなかったか確認する。


 タブレットの一つでもあれば、メモ程度のことはできるだろう。


 電子機器の使用が不可能な状態かどうか確かめることもできる。


 何かの拍子に異常性に巻き込まれているだけなら、白衣の右ポケットに常備している支部から支給されたメモパッドは多分生き残っているはずだ。


 中国支部のどっかの友好的なSCiPがマッドな博士と共同で試験的に作ったもの……を量産して使っているとかだった気がする。


 一応人類に作成可能なものだったためAnomalousアイテム扱いになっていたんだったか。


「ポケット……ポケット……あ?」


 ポケットを探そうとはっきりとまだ覚めてない目の焦点を合わせずに手だけ腹部の方へ寄せる。


 いつも白衣のポケットがあるその場所にいくら手をこすりつけても、そこにあるのは布の感触だけだった。


 焦点を無理やり合わせようとこめかみを抑える。


 グルグルと頭の中で回るもやを振り払って、今の服装を俺は確認した。


「あ、なんだこりゃ。こんなシャツ着ていたか俺は」


 上はシャツとサスペンダー、下は半ズボンだった。


 よく見ると立っている脇にはベッドがあり、その柱の一つにキャスケット帽のようなものがかかっている。


 客観的に見れば古い探偵記者のような格好なのだろうか。


「こんな服は着ていなかった。着たこともない……はずだよな。ポリエステルにしちゃ素材が固い。こいつは麻か……?いや、麻にしちゃ肌触りが良いな。羊毛……そうだ羊毛だ。成分分析にかけたいところではあるが、難しいな……ん?」


 じっと自分の服装を見ていて、少し気になることがある。


 視線が低いのだ。


 もっと言うならば、俺はもともと平均的な身長のはずでこんなベッドは太もも程度の高さのはずなのだが、今は胸のあたりの高さにある。


 最悪のパターンだ。子供になっている。


 鏡を見なければ現状どのような様子かはさっぱりわからないのだが、確実に背丈は成人男性のそれではない。


 このままだと身体能力も制御されてしまう。これはまずい。本来の肉体なのであれば多少の無理は通るのだが、子供の肉体であるのならどの年齢のころかによってはすぐにばててしまう危険性もある。


 どこかの肉体派エージェントみたく歩くだけで様々なものをすり抜けるなんて離れ業はともかくとして、普通に走れたり出来ないだけでも相当な不利である。


 鏡で姿を確認したいところではあるが、現状生命に問題がない以上ここから行動するべきではない。


 先に最低限の行為を済ませておくべきだろう。


 この後もし戻れたとして、始末書及び降格処分を免れるためにもある程度の現在の現状把握は必要である。


 現状把握のためにも過去の事例を参考にできれば良いのだが、あいにくメモパッドも端末も服装を変えられているのであれば持っていないと同義だ。


 財団に入った時に埋め込まれたマイクロチップでも取り出せれば何か出来そうなのだが、あいにく刃物もなければ痛みを我慢できるほどの度胸もない。


 とりあえず思い出せる範囲で何かないか記憶の中を探る。


 年齢と服装を変えられるSCiP……。


 ■■のとこに居るオタ神様は性転換だし、逆に若返るSCiPなんてのはバスタブか本部の薬くらいしか思い浮かばない。


 バスタブはしかもそこまで安全なものではなかったはずだ。


 数個順々に思い出してみたが、本部の記録も支部の記録も一時期仕事に必要な数ほどは読んで覚えてにもかかわらず記憶に残っているものが少ない。


 これは過去の事例が俺の中で今のところ存在しないことと同義だろう。


 だとすればこの状況を事細かく覚えてインシデントレポートを作成し、支部のじいさんの前で床とキスすればなんとかなりそうだ。


 もし過去に事例があったのであれば新規の追加オブジェクトとして申請もできる。キスする時間が短く済むかもしれない。


 エージェントの行動に巻き込まれたとはいえ、SCiPの異常から脱出し復帰した職員など使い勝手が悪くて当然。降格させられると少々困る。


 探られたくもない腹を探られるのは想像するだけで首をかきむしりたくなる気分だ。


 何か、ほかに手掛かりはないものかと周りを見渡すがサイドテーブル付きのベッド以外は何もない。


 仕方がないと諦め、まずはベッドの下から何かないか探すことにした。

この作品は以下の作品に基づき書かれています。ありがとうございます。


"EdwardC"様作「SCP-CN-985 - 受験鮫」

http://scp-wiki-cn.wikidot.com/scp-cn-985 本家

http://ja.scp-wiki.net/scp-cn-985 日本版

"Kwana"様作「SCP-710-JP-J - 財団神拳」

http://ja.scp-wiki.net/scp-710-jp-j

"FattyAcid"様作「SCP-1265-JP - ご主人様は神様です!」

http://ja.scp-wiki.net/scp-1265-jp

"ReiAkai"様作「SCP-451-JP - 母なる浴槽」

http://ja.scp-wiki.net/scp-451-jp

"BlastYoBoots"様作「SCP-483 - 若返りの偽薬」

http://www.scp-wiki.net/scp-483 本家

http://ja.scp-wiki.net/scp-483 日本版


この作品はこれらの作品に基づきます。参考にさせていただきましたものも含まれます。


"ak1-yorunaga"様作「SCP-078-JP - 永久カイロ」

http://ja.scp-wiki.net/scp-078-jp

"tokage-otoko"様作「SCP-014-JP-J - 『奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン』」

http://ja.scp-wiki.net/scp-014-jp-j

"hannyahara"様作「SCP-014-JP-EX - 君のその顔が見たくて」

http://ja.scp-wiki.net/scp-014-jp-ex

"kyougoku08"様作「SCP-2501-JP - 廻り舞台」

http://scp-jp.wikidot.com/scp-2501-jp


"kyougoku08"様作「右近の橘、左近の桜」

http://ja.scp-wiki.net/tachibana-cherry-princes


"tokage-otoko"様作「エージェント・カナヘビの人事ファイル」

http://ja.scp-wiki.net/author:tokage-otoko

作者複数人「要注意団体-JP」

http://ja.scp-wiki.net/groups-of-interest-jp

作者複数人「機動部隊-JP」

http://ja.scp-wiki.net/task-forces-jp

作者複数人「セキュリティ施設-JP」

http://ja.scp-wiki.net/secure-facilities-locations-jp


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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

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