千変していく詮索 4
良い感じに仕上がり始めました
ミーム殺害エージェント。それは、なにもエージェントと言っても代理人や調査者という意味ではない。
では何かと問われるとそれはまた難しいのだが、まぁ対処なく見た者を即死させる何かであるということだけは説明ができる。
閲覧権限なんて生易しいものではない上層部に許可が必要な報告書に記載されていることが多いらしいものだ。
なぜ「らしい」なのかというと、現状までに対処をせねばならないほどの緊急事態は、俺の観測している限り起こっていないからである。
そうなれば必然的にミーム殺害エージェントを記載している報告書のSCiPなんてものは必要ないのであり、閲覧もされないのだ。
対処なく閲覧してしまった人間は即死であることも、詳しく何なのか伝わっていないことの一端なのであろう。
俺はこれをあの時に見ていたのだ。
報告書に書かれた能力は借り受けることもできるが、同時にあいまいにしか認識していない報告書ほど危険なのではなかろうか。
偶然にもあのSCiP以外は報告書を理解したうえで使っていたおかげで何とかなった。しかし、もしここから同じことをするとき、あいまいにしか理解していないSCiPを使用するという事は、今回起きたことと同じことが起こるかもしれないことを示しているわけだ。
今回の失敗が重かったものなのか軽かったものなのかはわからない。
しかし、絶対にこれからはあいまいに記憶したものを使うことはやめておこうと思う。
それは俺の身のためでもあるし、最悪この街を滅ぼしかねない大災害に発展するかもしれない。
いや、まぁこの街に未練もなければクソみたいな思い出しかない以上別に問題はないのだが、だからと言って良心が痛まないはずがない。
あまり無茶なしようは控えた方が良いのではないかと本の前で俺は心に決めた。
さて、SCP-1621-JPに関してはこれくらいで構わないだろう。
次はこれからの対策だ。
俺は使えるものがないかとパラパラと本をめくった。
あの時みたいに時間制限もないのだ。
余裕をもって一から十まで気になったものは読む。
多分俺は今大規模な収容違反を犯しているんだろうなぁと頭で思いつつも、手は止められなかった。
「……ん?」
一つ、面白いSCiPを見つけた。
いや、面白いというよりも「見覚えのある」の方が正しいだろうか。
SCP-073、メタタイトル「カイン」。
どこかのサイトに俺がまだ平として勤務していた時、大規模な報告書の漏洩が起きた。
どっかのエージェントの娘にまで閲覧可能許可が下りたほどだが、それは俺たち職員にとって驚愕の物だった。
SCP-073、そしてSCP-076。
全く知らない人物にとっては「これF〇teのパクリ?」と言われるほどにリアリティのないそれは、しかして報告書に存在する以上本当に居るのだと実感するしかないほどに恐怖だった。
何度も神に祈りを捧げ、末尾にJをつけ忘れたんじゃないかといつまでも信じている博士だって居た。
それほどだったうちの片方が、俺の能力として存在するのだ。
これは一度試してみなくてはならない。
俺はあの時恐怖を覚えたものの、このカイン自体はそこまで危なくないものだとふんでいる。
危ないのはどちらかといえばアベルなのだ。
良いことに今は夜、外は危ないかもしれないがその分誰もいないことも事実だ。
この場所で発動するわけにもいかない。
カイン自体も危険ではないとはいえ相当危ない能力を持っている。
存在するだけで土で成長する生命をことごとく殺戮する能力を、あたかも副次的な作用化のように持っているのだ。
今この場所は木造だ。
厳密にいえば声明ではないのかもしれないが、だからといって安易に能力を発動させて大惨事というわけにもいかない。
ちょうどあらかためぼしいSCiPをピックアップし終えたころだったことも幸いし、すぐに行動に移した。
適当な路地裏に歩いていく。
真夜中だったことが幸いしたのか、特に誰とも出会わずに開けたところまで出た。
うん、ここなら大丈夫そうだ。
「SCP-073 カイン」
本を開いてそうつぶやく。
「ぐあっ……」
呟いた瞬間、左目に熱い何かが流れ込んできた。
その何かは俺の左目をどんどん侵食していく。
今日は目の厄日か何かかと問いたいほどの痛みが俺の脳にじんじんと襲ってくる。
のたうち回りながらもなんとか痛みが治まったころには、体中が砂まみれだった。
「はぁっ……はぁっ……」
現状を確認しようにも鏡のないこの世界でどう確認しようか迷った。
左目の中で何かが常にうごめいているような気がしてならないのだが、ぐらぐらとした頭ではその正体が何なのか予測すらも立てられなかった。
近場の池で顔を洗う。
水面、そうだ水面があった。
鏡はなくとも水面に映せば現状左目はかけているのか何なのかがはっきりする。
俺は水面をのぞきこんで今左目がどうなっているのかを確認した。
水面に映ったその顔の左目は、まるで特大サイズのカラーコンタクトを入れたかのように白目の部分が真っ黒だった。
黒目というものは厳密には黒ではない。
そのおかげか、そのせいというべきか、はっきりと黒目の位置がわかることがまた怖かった。
またなにか地雷を踏んでしまったのかと頭を抱える。
その時、頭の中に声が響いてきた。
『あー、テステス。聞こえてますか~? 私カイン。あなたの名前は宗博士で間違いないですね? 端的に言います。あなたの体を乗っ取ろうとしたんですが、右目の方からは入れなかったのであなたの左目に寄生させていただきました。もちろんですが、えぐりだそうだとかそういう考えはおやめくださいね。一応強度はあなたの体のどの部位よりも固くなっていますので』
不気味なほど明瞭に聞こえてきたその声は、まるでバイノーラル音声のように脳内に響き渡った。
今回基づかせていただいたのはこちらの作品です。
"imoken"様作「SCP-1621-JP - この世の全てのあく……」
http://ja.scp-wiki.net/scp-1621-jp
"Kain Pathos Crow"様作「SCP-073 - "カイン"」
http://www.scp-wiki.net/scp-073 本家
http://ja.scp-wiki.net/scp-073 日本語版
「SCP-076 - "アベル"」
http://www.scp-wiki.net/scp-076 本家
http://ja.scp-wiki.net/scp-076 日本語版
"tokage-otoko"様作「SCP-014-JP-J - 『奈落の悪鬼、黒き翼の堕天使アイスヴァイン』」
http://ja.scp-wiki.net/scp-014-jp-j
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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。
対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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