千変していく詮索 3
主人公がやっとこさファンタジーらしい動きをし始めます。
混乱した俺は、一度出された席に腰を掛けリラックスさせてもらった。
一応100項までの素数を頭の中で数えてみる。
57を加えることは忘れずにすべて暗唱できた。
だからと言って何になるわけでもこの状況が変わるわけでもなかったが、心が少し落ち着いたのは事実だ。
「で、だ。全く聞いていないんだけど、どういう経緯でそんな話になったんだ?」
腕を組んでシュバルを見つめる。
いつの間にか飲み物を準備していたトールは横で悠長に茶をたしなんでいた。
「一応最初の予定としてはおめぇが帰ってきたら知らせようとはしてたんだよ。ただいかんせんおめぇの帰ってくる時間がおせぇのなんのでさ、ほら、急いでいかないと色々申請もあるからさ。あ、出版社はやめてきてくれ。シュードバッハ社だっけか?交信者だって言えばすぐにやめさせてくれるはずだ。オレはトールさんと一緒に他の申請にあたってっからよろしくな。一応シュードバッハ社まで案内はするから」
「いや、それに関しては別に構わないんだけどな。これからじゃなくて経緯をきかせてほしいんだ。何故俺が冒険者になることになったんだ?」
「ああ、説明か。簡単なことだ。朝に言ったことを覚えてるか?『交信した人物にも自由が保障される』って言ったと思うんだがな、実はそこに義務も追加で発生する。交信した者は一度すぐに冒険者になる義務だ。とは言っても警邏の持ち回りとかなんだが。もちろんこれは国の取り決めだし、拒否すると最悪強制退去もある。慣れないこの世界で強制退去は死ぬと同義だからな。あんまりおすすめはしねぇ」
そうだったのか。まぁ郷に入っては郷に従えと言う以上はしょうがないのだと割り切るしかない。
冒険者と言っても俺のような子供にやらせることなんてたかが知れているだろう。
そこまで危ないところに駆り出されることはないはずだ。
「ああ、そういうことだったのか。分かった。義務ならば仕方ないね。冒険者としてよろしく頼む」
国外追放は少し危険だ。
安全地帯がないことは、えてして失敗のもとになってしまう。
従っておくのが得策だろう。
未だ分かっていないことは多々ある。
「じゃあ、決まりじゃな。お主のその体はシュバルの知り合いじゃそうだからワシのパーティに入ることになるじゃろ。肩肘張らんでもそんなに難しいことはせんつもりじゃて、よろしく頼む」
テーブルの上に茶を置いて、トールはそう俺に言った。
「ああ、よろしく頼む」
俺はトールにそう言って、ギルドをシュバルと去った。
結局この場所は何のための場所なのか分からなかった。
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部屋の集まりのような建物に戻り、自室の前で立ち止まる。
「トスク、ありがとな」
シュバルがそう言って俺の肩をたたいたからだ。
「交信した人間ってのはあんまり人と交流を持ちたがらない人間が多くてな。お前もそうかもしれないと思ったんだ。今日も帰ってこないかと思ってな。だからさ、良かったというか、まぁそんだけだ。じゃあな」
一人そう言って勝手にシュバルは自室へと入っていった。
心配してくれていたんだな。
そう感じ取れた一言だった。
やることやって俺も明日から頑張らないといけないな。
そう思って俺も自室へと入った。
だからといってすぐに睡眠に移るわけではない。
もとの世界のように就寝前に洗顔等をするわけではないが、今日起きたことのメモと、この本をある程度読んでおくことはしておかなければならない。
いざというときに使えないなんてことは無いようにしておかないといけないのだ。
とりあえずあの鍵を開けるSCiPはなぜあそこまで害があったのかを調べなければならない。
そして、あくまでも現状では予測の域を出ないことではあるのだが、この能力は昏倒すると消失してしまうのではないか。
その仮説も試してみねばならない。
試す方法は今のところ思いついてはいないが、しかし気を失うタイミングで解除されるのであれば大体のことに説明がつく。
初めに思ったのは闘技場で大男に殴られた時だ。
口腔内に軽い切り傷ができた時違和感を覚えた。
SCiPにおいて、普遍性を保つものは軒並み全てにおいて傷がつかなかった。
俺があの時能力として持っていたSCiPも、例外ではない。
口腔内であろうと傷がつくことはまずないのだ。
しかし、あの時背中に傷を負うことはなかった。
ということは背中が壁に激突した直後から、落下の衝撃で口を切った時までの間に起きたことが解除の何か原因なのであろう。
そのとき何が起きたか。
思い出す必要もない。
一瞬とはいえ衝撃で気を失ったのだ。
落下した衝撃で瞬時に目が覚めたおかげか特に気にすることはなかったが、確実にそれが原因であろうことは素人でもわかることだ。
それに、カギを開けた時もそうだ。
俺は血反吐を吐いてその場で気を失っている。
記憶が間違えていなければ……だが、そこまで間違えているとは思えないのであの時意識は飛んだのだろう。
ここまで判断材料がそろっているのだ。
これはもう予測ではなく確定と判を押しても構わないほどに自明である。
あとは右目のあれだけだった。
ひとまずベッドの脇のサイドテーブルに荷物を置き、カバンの中から本を取り出す。
他のSCiPで使えるものがないか調べる前に、今回のようなことがないよう対処せねばならなかった。
SCP-1621-JPのページを開いて確認する。
上から順番に読んでいくと、このSCiPはあの症状さえなければいくらでも使いたいほどに便利なものであることが分かった。
ただ、これはいわゆる現実改変の領域だ。
「開け」と思ったら「開いている」、「悪」だと思えば「悪になる」。
そういった能力をだれでも使えるものだった。
あの時のように斜め読みではなく、上からゆっくりと実験記録、補遺も含めて読んでいった。
実験記録004の補遺2までで一通り全てのようだったが、その下にいくばくかの空白と、こんな言葉が添えられていた。
『このSCiPを知った時点でヒュームアナライザが検知し、ミーム殺害エージェントが表示される』
つまり俺の右目には、あの時ミーム殺害エージェントの一部が映っていたのではなかろうか。
今回基づかせていただいた作品です。全てにおいてそうなんですがとても面白い作品ですので是非本家も見てください。
"imoken"様作「SCP-1621-JP - この世の全てのあく……」
http://ja.scp-wiki.net/scp-1621-jp
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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。
対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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