千変していく詮索 2
文字数がちょっと少ないですが、ステージが変わるタイミングなので見逃してください。
「闘技場に迎えに行ったらそんなヤツ来てねぇなんて言われたんだが、一体全体おめぇは何をしていた?ん?」
ずいっと顔をこちらに近づけ、シュバルは俺に問いかけてきた。
「いや、俺にもよくわかっていないんだが……」
そう言って俺は闘技場で起きたことをシュバルに説明した。
リローネという女性の戦士に取材をしたこと。
シェスティアーノ家のロットとかいう嫡男に因縁を吹っ掛けられたこと。
ほとんど真っ暗な場所で、謎の大男に殺されかけたこと。
そこから脱出しようとしていた時に手助けした脱獄者集。
消照闇子についてはあえて伏せておいた。
その部分は何か集団に襲われたとでも言い換えておいた。
俺がなぜ助かったのかはその時瞬時には思いつかなかったが。
アレに関しては俺も報告者を読んだことがない人間である以上、財団職員が見ている偶像的な消照闇子しかしらない。
その偶像的な象徴をあえて表現したところで、アレの原動力である「闇の中で想像上の何かに襲われる不安」は解消しきれない。
一応上からは「あれが全てである」という通達があった上に、俺は異常を見慣れているからあれが全てだと感じとれるだろうが、一般人がそれを知ったらどうなるだろうか。
想像に難くないことは事実だ。
絶対に俺の言う「黒いセーラー服で包丁を持った女の子」なんてものを信じずに、影の中からこちらを狙う暗殺者のようなものを想像するだろう。
それは死を意味することと同義なのである。
一応俺は知っているうえでの警戒をすべきなのであろうが、彼らは彼らですべきではない想像を極力避けさせる必要がありそうだ。
だからこそ俺は「消照闇子に襲われた」のではなく「集団の何者か」に襲われたと表現した。
そう表現することによって、後の調整も狂わないようにできるはずだ。
もし明日何か騒動になっていようと、それは俺が「集団の何者かに襲われたことが原因である」と言っている以上、それがイメージになるからだ。
「……というわけで、命からがら逃げてきたんだ。とは言っても俺の記憶しているのは脱獄した人たちに手を貸したところまで。そこからは倒れちゃってよく覚えてないんだけどね。多分その人たちに連れてこられたんだと思う。俺が交信した人間だってことは伝え忘れていたし、ここに連れてくれば何とかなると思ったんだと思う」
無言でこちらの話を聞いていたシュバルは
「うん。分かった。大体は把握した。相当厄介なことに巻き込まれていたんだなお前。で、これ聞いてどう思いますかね、リーダー?」
とテーブルの向こうに声をかけた。
俺の見えている限りではシュバル一人しかこの部屋に居ない気がするのだが、誰に声をかけたのだろうか。
「あぁ?今は抗争なんておきとらんぞ。停戦協定が結ばれてるはずじゃからの。そのガキが嘘をついている可能性は大いにある。だがワシだって知らんこともあるからな。どこぞの弱小貴族が下剋上狙いで突発的な大量殺人を起こした可能性も無きにしも非ず。それくらいじゃの」
その声は、テーブルの向こうから聞こえてきた。
俺はテーブルの向こうへと周り、何者が居るのか確認する。
そこには小さい背丈の男性が、座っていた。
俺が来ようと一つも目を動かさずに、テーブルゲームの盤面に向かい「終了宣言じゃ」とコマを進めている。
「え、あ、ちょっと待った今話してる最中だったじゃないですか。ほら、注意が逸れてて考え切れてなかったんですって」
「あの、シュバル。この人は……?」
「あ?ああ、うちのパーティのリーダー、ドワーフと人間のハーフでな。子供っぽい見た目だがそこらの大人より生きてっから気をつけろよ。トールって名前なんだが、おめぇやオレみてぇな簡潔な名前じゃなくてもっと長ったらしい名前があったらしい。長すぎてなんだったか忘れたそれを捨ててまで冒険者やってるベテランさ」
そう言ってシュバルはトールと呼ばれた人物に隠れてコマを戻そうとする。
「シュトールン・ハイム・サザンビア。サザンビア家の落ちこぼれじゃて。そんなに誉めそやされても何にも出んわい」
シュバルの待ったもコマの戻しも聞き入れられることがなく、盤面がしまわれてテーブルの上がきれいになった。
伸びをしながらトールはこちらに語り掛ける。
「お主が交信で来たヤツだってことは聞いたんじゃが、初日からここまで不運が続くとどうにもその素体に交信が不運だったって冗談も言えんな。シュバルから聞いとるのはお主が話したこと大体すべてじゃて」
そう言ってトールは初めて俺の方を向く。
子供の俺の背丈と同じ視線に、座ったトールの顔があった。
「うん。きれえな目じゃて。嘘をついていたとしてもまぁ人を思った嘘じゃろう。ただ、右目がくすんどるな。おいシュバル。コヤツはもとからこうか?」
「ん?いやぁ……多分前から綺麗な濃いヒスイ色の瞳だったと思うが、どうかなってたか?」
「いや、なんでもない。多分ワシの見間違いじゃろ。ええぞ。ワシが許可する」
シュバルに目を向けてトールはにっこりと笑う。
シュバルはガッツポーズをして
「ヨシ!これでお前も仲間だ。冒険者としてよろしく頼む」
「……え?」
いつの間にか進んでいた話に、俺は動揺を隠せなかった。
今回基づかせていただいたのはこの作品です。
"home-watch"様作「SCP-835-JP - ゼノフォビア→消照闇子」
http://ja.scp-wiki.net/scp-835-jp
"kyougoku08"様作「Summer Live!!!」
http://ja.scp-wiki.net/am-i-idol
※SCP-835-JPはゼノフォビアに取り消し線が引かれ、矢印は存在しませんが表記の都合上このような形にさせていただいています。
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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。
対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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