最終問題の回答 4
朝から喉の調子が悪いので、万能薬でも飲みたい気分です。
飲めるようにはクリアランスレベル4職員の許可をもらう必要があるのでほとんど無理ですが。
目が覚めた時には、俺はもう闘技場の薄暗い廊下などには居らず、ギルドの前に倒れていた。
辺りは真っ暗で、今が深夜なのか、それともまだ人も草木も眠らない夜なのかは予測がつかないが、人がほとんどいないことから深夜である可能性が高い。
ただ、あの時の廊下以上に町中には明かりがともっているのか、幾分か周囲は見渡しやすかった。
少し違うのは、明かりの種類だろうか。
火でもなければ電気でもない。
発熱している様子は見受けられないが、あれは何を動力源としているのだろうか。
仮に少し特殊な方法で蛍のように発光しているとしてもにしても、大元にはエネルギーが必要になってくる。
これはあとでシュバルに聞くしかない。
俺は帰り道をたどろうとして、一つ気がかりなことがあった。
朝、ここまで来るのに結構な時間と距離を歩いたはずなのだ。
道順を誤っていたりしたらどうしようもできない。
帰る家が暫定的に存在しないことと同じになる。
この世界の生活水準はどうなっているのだろうか。
こんな年端もいかない少年が真夜中の道にぶっ倒れている状況でも襲われない程度には安全であることは予測できるのだが、それはあくまでも運が良かっただけかもしれない。
俺は元の世界の建築になんて微塵も造形がないので、この建築物群からおおよその年代を特定して類似した状況を思い出すことなんて不可能だし、もし予測できたとして絶対に現代日本より良い環境であるはずがない。
ならばここは動くよりも、現在一番近い場所にあるギルドで何か話を聞くほかないだろう。
帰り道が聞けるのが一番楽なのだが、そもそもスタッフや職員が残っているのかどうかも怪しいところではある。
過去に知り合いのオタクから薦められて見たいくつかのこういった状況の作品の中では、こういった建物は夜も開いているはずなのだ。
空港のような最低限の施設しか開いていない可能性もあるが、人がいてくれるだけでもなんとかなる。
最悪SCiPに頼ればよいのだ。
そうだ。SCP-1621-JP。あれはなんだったのかも後で確認しなければ。
あれの能力を借り受けることは、死にかけるということなのか。それとも何か別の要因があったのか。
いや、今は関係ないことで逡巡している時間ではない。
俺は手足を何とか動かし、その場から立ち上がった。
頭がまだぐらぐらする。
右目の奥にはさっきまで見ていた景色がまだ残っている。
思い出すたびに後頭部が殴られるような痛みに襲われるそれは、もう思い出そうとしなくても網膜の裏に焼き付いてしばらくの間離れていかなかった。
「っ……」
ふらつく足取りを何とか元の状態まで戻す。
力技で戻せるのは過去にそういった対策をエージェントチームから教えられていたからだろう。
あくまでも彼女のオリジナルででたらめな対処法だったが、こういった場面で役に立つのであればそれはもう確立された方法だ。
改めてギルドの門を見直す。
横の闘技場は、俺の入った小さな門も、一般客が入るのであろう大きな門もすべてとざされている。
その口は何人も入れさせない強固さを誇っていた。
それに比べてギルドはいまいち閉まっているのか開いているのかが分からない状況だった。
扉に閂がかけられているわけでもなく、ただ閉まっているだけ。
内側からカギがかけてあるにしては少し扉が揺れているのだ。
これはまだ人がいるのではないか。
そう思わせるには十分な情報だった。
俺は扉に手をかけ、とりあえず開くかどうかを確認する。
これで開かなかったらもう記憶を頼りに危険であろう夜道を歩いて帰るしかないのだが、しかしてなんと、すんなりと扉が開いた。
扉の向こうには、思っていた以上に人が往来していた。
カウンターにはまだ人が結構な人数座っており、ワイワイと話声を響かせている。
脇の階段を上る職員のような人物や、立ち止まっている俺を怪訝そうな顔で見つめながら外に出ていく冒険者のような風体の獣人の男女、なにか日用品でも買おうとしているのだろうか値引きを迫る声も響いてきた。
これはとても良い状況だった。
なぜかと理由を言うまでもないだろう。
これならば楽に人を探せそうだからだ。
安全そうな誰かに話しかけて冒険者の一番いそうなところに行けば良い。
最悪の状況で一晩あかせるかどうかは定かではないが、多少のことはできるはずだ。
俺はとりあえず、酒場の方へ足を向けた。
あまり入り口でたむろするわけにもいかなかったという理由もある。
「あの、すみません」
「はいこちらクシュル食堂です。料理はメニューにない物を出すことはできません。キッチンの貸し出しはいつでも受け付けておりますが満員の場合少しお時間をいただくことになります。飲み物に関してはギルドの規約により年齢と能力を確認させていただいたうえで提供しております。なにかご入用でしょうか?」
酒場のカウンターに座っている人物よりも、店員の方に声をかけた方がまだ情報がつかめそうだと思い声をかけたは良いが、あまりにもまくしたてられたので場違いな質問を許容されるのかどうかが不安になってきた。
「あの、冒険者の方々が集まる場所がどこか分からないでしょうか。知り合いを探しているのですが、今どこにいるのかわからなくて。帰宅したかもしれないんですが、一応ギルドの方も探しておかないと入れ違いになったら困りますし」
必要のないことまでまくし立てて相手に対抗する。
マウントを取りに行ったわけではなかったが、会話で情報を引き出すときは相手と同じ量話すことが肝心だとどこかで聞いた記憶があるのだ。
「あ~、それなら多分ここですね。今の時間がちょうど龍の火なので依頼カウンターも終わる時間帯ですし、何よりもギルドの中で唯一の飲み食いできる店な上に違法な食品を扱わないことがうちのウリですからね。お金を持っていない冒険者も何かと利用してくださいます。さっき言ったようにキッチンの貸し出しだけなら安上がりで済みますし、なにより今の時間は外で開いているお店がほとんどないんですよね。なので多分ここが一番だと思います」
店員はそうまくしたてると「すみません。業務があるのでこれで」と言って料理を運び始めた。
目にもとまらぬ速さでテーブルの間をスルスルと通り抜けていく様子は、いくら小柄な俺でも追いかけられるとは到底思えない熟練の技だった。
探し人が見つかるかどうかは分からない。
シュバルが早々に家に帰っている可能性もある。
その時はその時だと思いながら、俺はとりあえず近場に居た冒険者のような男性に声をかけた。
今回はこの作品に基づいて書かせていただきました。毎度のことながらこんな使い方でも怒られないことに感謝しかありません。
"snorlison"様作「SCP-500 - 万能薬」
http://www.scp-wiki.net/scp-500 本家
http://ja.scp-wiki.net/scp-500 日本語版
"imoken"様作「SCP-1621-JP - この世の全てのあく……」
http://ja.scp-wiki.net/scp-1621-jp
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現在連載中の別作品です。こちらももしよければぜひ。
対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。
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