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饒舌な混乱 5

主人公の指針がうまく定まっていないのですが、まだ序盤なので許してください。

 俺にしか見えないバッターボックスは、今か今かとボールが飛んでくるのを待っている。


 屋根に覆われたこのグラウンドでは、炎の明かりだけがこうこうと俺と大男を照らしている。


 観客の顔はいまだ見えない。


 声色で分かることは結構な量の人間が、俺がいたぶられて死ぬことを今か今かと待ち構えていることだけだ。


 観客席の奥にかろうじて見える、普通の装飾品よりはるかに大きい水がめへと、どこからともなく水が流れていく音がなぜか少し心地よかった。


 相手方は、どのタイミングで投げてやろうかとじっとこちらを見据えてきている。


 よけられれば、俺の隠し玉がまた攻撃に転じるのではないかと内心躊躇しているのだろうか。


 観客も息をのんでこちらを見ている。


 いつの間にか最初の目的であるなぶられて死ぬ俺を見ることから、反撃をした俺が次はどうするのかを期待している方向へ感情がシフトした観客も感じ取れた。


 様々な音が耳に届いているにもかかわらず、これが静寂かと自分の心で感じ取る。


 今一度、ホームランを打つ手順を踏みなおす。


 あまり派手な動きはないが、その分相手の攻撃も誘い出せるはずだ。


 これ以上緊迫した空気になっていても仕方のないことだろう。


 ザっ……と相手の足が少し動いたのを感じた。


 俺は手の内に握る棒を構え、絶対に打ち返してやると心に決める。


 飛んでくるのは絶対俺の方。


 都合よく腹の30㎝脇なんて飛んでこないことは分かっている。


 だから、相手が投げてからこちに飛んでくるまでに一歩バックステップを入れ、少しでもこの棍棒に当てなければいけない。


 振りかぶって、投げた。


 鉄球は思っていた以上に早くこちらに向かってくる。


 しかし、あくまでも投げるのは人間。目視できないほど早くもなければ、準備していても頭部を割られるような衝撃もない。


「さぁ、こい!!!」


 一歩ステップを踏んで、狙いを定めてブチ当てた。


 あまり詳しく報告書を読み込めていなかったからだろうか、鉄球が入射角と全く違う方向へ飛んで行ったと同じタイミングで、棍棒はボキィ!と音を立てて折れた。


 この鉄球をブラフにし、こちらを素手で殴ろうとしていたのだろう。


 飛んで行った鉄球の水がめを割る音は、その驚きと、死ぬという事実で聞き取れはしたが認識はできなかった。


 折れた棍棒の方に気を取られていた俺の目の前には、大男がいつの間にか立っていた。


 襟首をガッシリと掴まれ、大男とでは象とアリほども体格差のある俺が地面から1mほど離れた時、その現象は起こった。


 割れた水がめが、水を別方向へ流し始めたのだ。


 大量の水が流れ込んでいたのに、ここまで少ない量しか流れてこないのは不自然だと感じたが、多分底から別のところに流しているのだろう。


 一つ一つとこの会場の明かりが消えていく。


 まるでマスカレードのパーティーはこれで終わりだと言わんばかりの速度で会場が暗くなっていく。


 状況を理解できていない大男は、元凶が俺であるとは全く思わずつかんでいた俺を無造作に地面に落として辺りを警戒しはじめた。


 ここで攻撃をしたところで一切通らないことくらいは分かる。


 まず腕力なんてものは絶対に通らないであろう筋肉量が見てわかるのだ。


 ここは一度距離を取るしかない。


 幸い俺は壁に近いところに居たので、壁伝いにおおよそ反対側の壁までダッシュで移動する。


 追いかけられているかもしれないが、それでも逃げるほかなかった。


 何か周りが見えるSCiPはなかったかと走りながら逡巡する。


 後ろから足音は聞こえないので、追いかけてきていないことを祈って一度息を整えながら壁にもたれかかる。


 あの時間でいくつか見たはずだ。それに見たことのある報告書の中にも何かこの状況で周りが見えそうなものがあったかもしれない。


 そうだ。ランプ。ランプのSCiPがあった。


 あれは本体は火だったはずだ。


 なら、照らせるはずだ。少しミームで周囲が汚染されてしまうかもしれないが、本を見て声に出すのではなく頭で思い浮かべるだけであれば能力も薄まる。


 知って、使って、さらに知る。これが手紙の主の考えなのであれば、最初の知る段階を軽くすればそのぶん次の段階の使う部分でも軽くなるのではないだろうか。


 試してみるしかないな。


 SCP-1406-JP 安息の灯。そう心の中で唱える。


 いつの間にか手の平には火の玉が浮かんでいた。


 弱い火ではあったが、これを使えば周りの様子も少しはうかがえるかもしれない。


 この状況でもエキシビジョンマッチは続けられるのだろうか。


 やけに静かな観客席からは、さっきまで聞こえていた息遣いや、人の動く音、足音や暗闇でパニックになっている人の悲鳴すらも聞こえない。


 この状況はなんなのだろうか。


 人の存在がないと断言できそうなほどに、静かだ。


 ゴトリ。


 突然その音は響いた。


 まるで重くて硬いツボが、割れずに地面に落ちたような音だ。


 俺も財団の日本支部に勤めて短くはなかったから、この音は聞き覚えがあった。


 これは、首の落ちる音だ。


 間違いないとまでは断言できないが、それならばつじつまが合う。


 何者かがここに居る。


 そして、観客も、大男も、殺しているのだ。


 そう思い始めると手のひらの火は、まるでその魂らを導くカンテラの火に思えてくる。


 怖さで一歩、バックしようとしたが、壁があり後ろに下がりきれなかった。


 ……いや、おかしい。


 俺はここまで壁伝いに来ていたが、壁はこんなにも柔らかいものではなかった。


 これはなんなんだろうか。


 そう一瞬考えている隙に、首筋にピタリと刃物が突き付けられた。


「こんばんは~。まだ昼だけど。頑張るあなたにファイトイッパツ。最高の殺し屋アイドル消照けてる闇子やみこちゃんでーす」


 耳元で、小さな声でつぶやいたそれは、俺の掌の火を見て刃物を外した。


 それは、黒のセーラー服を着た少女だった。


 手に持っているのは……包丁か?ナイフではないのか。


 消照闇子……なるほど。名前で思い出した。あのクソオタ博士の推しメンだ。


「何が目的だ。何をした」


 数歩下がってギリギリ顔は認識できるが陰にほとんど隠れているような場所まで少女は移動し、こちらを見つめる。


 俺は腕を伸ばし、その少女に火を近づけた。


「ちょーっとちょっと。それは反則ですよ。その火は闇子ちゃんは苦手なのです。恐怖の対象を自分に移し替える相手なんてまっぴらですからね。殺すのは最後にしてあげます。あ、そうそう何も知らないようですね。一つ教えてあげましょう。ここにいる人間は、全員殺しました」


 そう言って消えていった。


 さて、この状況はすこし大変だ。


 彼女の言うことが本当なら、俺はここから一人で脱出しなければならない。


 どうしようかと、とりあえずだれか生き残っていないか声を張り上げて叫ぶことにした。


消照闇子ちゃん、かわいいですね。私はあのデザイン良いと思います。

今回基づかせていただいたのはこのSCiPらです。著者様、翻訳者様本当にありがとうございます。


"watter12"様作「SCP-439-JP - ホームラン量産法」

http://ja.scp-wiki.net/scp-439-jp

"home-watch"様作「SCP-1406-JP - 安息の灯」

http://ja.scp-wiki.net/scp-1406-jp

"home-watch"様作「SCP-835-JP - ゼノフォビア→消照闇子」

http://ja.scp-wiki.net/scp-835-jp


※SCP-835-JPはゼノフォビアに取り消し線が引かれ、矢印は存在しませんが表記の都合上このような形にさせていただいています。


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対人スキル最強のはずなのに”肥育魔法”特化で何も殺せない呪いをかけられてしまいましたが、それでも頑張っていこうと思います。

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