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信用を勝ち取るために

「さて、と」


 俺は下手に絡まれるより先に、先程見ていた少女の方に戻る。

 周囲の反応からして、彼女はここの領地で可愛がられているのだろう。


 つまり、俺は誰よりも早く彼女と仲良くなる必要があるわけだ。


「信頼してくれたか?」

「……何よ。さっきの馬鹿みたいな力」


「闇魔法。まあ、魔族の魔法って認識で構わない」

「魔族……!? どうして人間のあなたが――」

「それよりも」


 俺は近くまで行き、耳元で誰にも聞こえないように喋る。


「一緒に国家に反逆しよう。ぱっと驚かせてやろうぜ」

「は……? 何を言っているのよ……」


 驚いた様子で彼女は俺のことを見る。

 それもそうだ。貴族……ではないが、まあいい。


 ともあれ、そんな身分のやつが急に国家に反逆しようと提案するのだから。

 俺だって驚く。


「俺にはその力がある。さっきのが証明だ」


 闇魔法。それは光である神と相対するもの。

 その力を持つ俺には、国家だってひっくり返すことができるはずだ。


「それは……でも、どうして国家を敵視しているの?」

「なら聞くけど、君はどうして国家を敵視している?」


「……理不尽な目に合わされてきたから」

「同じ理由だよ。俺は第一王子でありながら、家族や仲間から悪と呼ばれ虐げられてきた。そして今ここにいる」


「第一王子!?」

「そう驚くな。もう王子じゃない」


 地位は剥奪され、今はただの領主である。


「俺も国家に散々な目に合わされてきた、仲間だ」


 少女に手を差し出し、俺はニコリと笑う。


「名前は?」

「アリア……」


「それじゃあアリア。一緒に手を組もう。国家に反逆しようじゃないか」

「分かった、信用するわ。国家に反逆しましょう」

「良い返事だ。俺はその返答を待っていた」


 さて、と俺は振り返って領民たちを見る。

 まだ俺のことを怪しんでいるようだ。


 すぐには信用してくれないと思っていたが、かなりの重症らしい。


「話は私がするわ」

「嬉しいよ。それじゃあ、俺も付いていく」


 そう言って、俺は人々が一番集まると言われている冒険者ギルドまで足を運んだ。

 やはりというか、そこには屈強な戦士たちが数多くいる。


 しかし、アリアと俺を見てすぐに表情を変えた。


「嬢ちゃん! そいつは確かにここを救ったが……少し距離が近いぞ!」

「万が一何かあったら……俺たちは……!」


「大丈夫よ! この人は信頼できる!」


 アリアが叫ぶ。彼女がどういう立場なのかは知らないが、一声で冒険者たちが黙った。


「この人は――ジェフは私たちと一緒よ!」


「一緒……?」

「どういうこった?」

「貴族と俺たちが一緒?」


 冒険者たちが不思議そうに首を傾げる。

 それもそうだ。共通点なんて同じ人間くらいしかないように思える。


「ジェフも国家に散々な目に合わされてきたの。説明は難しいけど、私は信じることにしたの!」

「ありがとう。後は俺が言うよ」


 そう言って、俺は一歩前に出る。

 ここにいる人たち全員に聞こえる大きな声で叫んだ。


「一緒に手を組み国家に反逆しよう! 俺たちは虐げられてきた仲間だ! 今こそ、反逆の時だ!」


「「「は……!?」」」


 愕然とする冒険者たち。

 それもそうだ。突然そんなこと言われたら誰だって口を開ける。


 静まり返るギルド内。


「おい」


 その中で一人、巨大な男が俺の方へと歩いてきた。


「信用してやってもいい。だが、お前みたいなナメクジに付き合うほど仲間たちは暇じゃないんだ」

「ふむ」


 目を向けると、鋭い視線が俺を突き刺してくる。


「ギルドの頭である俺様に勝てたのなら、信用してやろう」

「俺と勝負するってことか」

「ちょっと二人とも! 落ち着いて!」


 アリアが慌てた様子で止めに入るが、俺が制する。


「大丈夫。俺は領民に信用してもらうことを第一に考えている」


 そう言って、男を見る。


「勝ったら信用してくれるかな?」

「もちろんだ。だが、勝てるか? この俺様に」

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「この戦いが終わったら結婚するんだ」と言った後、本当に魔王を倒して帰ってきた結果~完全に死んだと思われていたようで、何故か伝説になっていた。いや、その墓は俺じゃない。お前の隣にいる~


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