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ドレイクの殲滅

「これ以上は近づけねえ。悪いがここで降りてもらうぞ」

「分かりました」


「しかし本当に不憫だね。第一王子から転落して……ここの領主になるなんて」


 馬車の御者が可愛そうな目で俺のことを見る。

 まあ……そうだろうな。第一王子から辺境の領主なんてすごい落ちぶれようだ。


「別に俺はなんとも思っていませんから。それでは」

「ああ。達者でな」


 俺は歩きでアルバート領の中心地へ向かう。

 中心地だからと言っても、設備が整っているわけではない。


 地面は荒れ果て、魔物の気配がぷんぷんする。


 そりゃ、馬車の運転手も近づきたくないわけだ。


「ああ? なんだあいつ?」

「あの服装……貴族じゃねえか?」


 街まで来ると、多くの領民たちが俺のことを見てきた。

 明らかに敵視している。


 まあ……想定通り。


 とりあえず屋敷に行って休もうかと考えていると、目の前に少女が立った。

 手にはナイフが握られていて、体は震えている。


「お、お前たちのせいで……! お前たちのせいでみんなは……!」


「おい止めろ嬢ちゃん! 貴族に近づくな!」

「勝てるわけがねえ! 死ぬぞ!」


 遠くの方で領民たちが叫ぶが、決して近づこうとはしない。

 そう。一般人は基本的に魔法が使えないのだ。


 そのため、貴族や王族に勝てる者はいない。


 もし立ち向かおうものなら――死ぬ。


「君は、ここの領民だよね。初めまして、ここの領主になるジェフだ」


「何を偉そうに! 挨拶なんてして、どうせそのあと弄ぶ気でしょ!」


 はぁ……ここの領主はこれまで何をしてきたんだ。

 どうやったら信頼をここまで地に落とすことができる。


「私は……お前に弄ばれる前に殺す!」


 その言って、少女がこちらにナイフを持って走ってきた。

 刹那のことだ。


 ――ドゴォォォォォン!!


 轟音が辺りに鳴り響く。

 領民たちは慌てふためき、音がした方を見た。


「魔物だ! 魔物の襲撃だぞ!!」


 あれは……ドレイクの集団だ。

 ドラゴンの子供だが、数がいかんせん多い。


 少女は止まって、ただ愕然とその様子を見ていた。


「また……また仲間が死ぬ……」


 なるほど。

 ここは定期的に魔物の襲撃を受けているってわけか。


 辺りを見渡すと、ボロボロの家屋が多い。

 多分、それが理由だろう。


「大丈夫。仲間は死なないよ」

「え……?」


 俺は少女の前に立ち、ドレイクを見据える。


「俺はここの領主だ。領民を守るのが領主の仕事……だと思わないかい?」

「本気で言っているの?」


 どうやら信じてくれていないらしい。

 未だに、ナイフの先は俺に向けられている。


「とりあえず信じてくれ」

「ちょっと!?」


 俺は駆け出し、虚空に手を突き出す。

 《暗黒収納》を発動し、魔剣を取り出す。


 これも魔族が扱っている代物。

 手に入れるのになかなか苦労したものだ。


「ドレイク! こっちを向け!」


 ――ビシャァァァァァン!


 地面を蹴り飛ばし、ドレイクに突っ込む。

 

「《暗雲の一撃》」


 剣が黒い靄に包まれ、雷のような音が鳴り響く。

 同時にドレイクに向かって剣を振り下ろすと、声も出さずに斬り倒された。


 それを何度も繰り返す。


 ここにいるドレイクは全て殲滅する。


「ふう」


 地面に着地し、嘆息する。

 少し疲れたな。やっぱり闇魔法は魔力の消費が激しい。


「き、貴族が俺たちを助けた……のか」

「ありえねえ……何かの間違いじゃないのか?」


 ちらほらと出てきた領民たちが口々に声を上げる。

 やはりすぐには信用してくれないか。


 だが――


「ははは……まさか闇魔法を見ても驚かないなんてな」


 やはりそうだったか。

 ここには魔法に詳しい人間はいない。


 つまり、闇魔法を見ても何も思わないわけだ。


 これほど俺にとって都合のいい場所はない。

 くくく……悪を極めるにはちょうどいい場所だ。 

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「この戦いが終わったら結婚するんだ」と言った後、本当に魔王を倒して帰ってきた結果~完全に死んだと思われていたようで、何故か伝説になっていた。いや、その墓は俺じゃない。お前の隣にいる~


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