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夜明けの光をあつめながら  作者: 白石ヒカリ
1章 星がふる世界
3/75

3.大好きなおばあちゃんの今

私の家は、二階建ての一軒家だ。

住宅街に並ぶ、よく見る普通の形の家。


亡くなった私のおじいちゃんが建ててくれた家らしい。

なんでも私のおじいちゃんは、『大工さん』だったとか。


まあでも、私が四歳の時に亡くなっちゃったけどね・・・・。

まだ四歳の私だったから、『おじいちゃんと過ごした記憶』は殆んどないし。


「・・・・はあ。またですか?」


その家に入ると、早速私はため息を一つはいた。

まるで『強盗』に襲われたような、荒れた玄関。


傘立ては横に倒れ、靴もまるで誰かに蹴飛ばされたように、散らかっている。

玄関に置かれた『スタンドミラー』も割れちゃっているし。


まあ、鏡が割れているのは、結構前の事だけどね。

あの頃は酷かったな・・・・。


「・・・・ただいま」


私はそう言いながら靴を脱いで、家族がいるリビングに向かった。

リビングも玄関同様に荒れている。

テレビは倒れているし、本当に困ったものだ・・・・。


「おかえり七瀬。

悪いけど、ご飯食べたら手伝ってくれる?」


台所から顔を出して、疲れた表情を見せるお母さん。

今日はかなり苦戦したのか、『お母さんの顔は死んでいる』も同然だった。


本当に、いつも苦しそう・・・・。


「・・・うん。

それで・・・・おばちゃんは?」


私はお母さんに言葉を返すと、周囲を振り返る。


そして私は『お目当ての人物』の姿を確認できた。

ソファーに座り、まるで子供のような『無邪気な表情』を見せてくれる、私のおばあちゃん。


おばあちゃんも私の様子に気づいてくれたのか、私に『笑顔』を見せてくれた。


でもそこに、『心』はない。

いや、『心』と言うより、おばあちゃんの『面影』はもう残っていない。


目の前の人は、私が生まれてきてからずっと側にいてくれた、『大好きなおばあちゃん』なのに・・・・・。


「はじめまして。どなたさん、ですか?」


その『何百回』聞いたかわからない、『おばあちゃんの言葉』に、私は瓶で頭を殴られたような気分になった。

私にとって、『心をえぐられるような言葉』だから、何度聞いてもその言葉には『耐性』がつかない。


でもこんなやり取りを『何百回』もやってきたから、私から言葉はすぐに出て来た。

まるで『ただいま』と言う、挨拶代わりのような言葉。


「・・・・星野七瀬です。

あなたの孫娘です」


私はそう言葉を返すと、おばあちゃんの隣に座った。

そして『とても暖かい、おばあちゃんのしわくちゃの手』を握りながら、私もおばあちゃん同様に『笑顔』を見せる。


まあ、『作り笑顔』だけど・・・・。


一方のおばあちゃんは、何も答えなかった。

さっきと変わらない『笑顔』を見せて、私の手を握ってくれるだけ。


多分、『私の声』なんて、聞こえていないのだろう。


でも私は言葉を続ける。

もちろん『笑顔』も見せる。


「後で一緒にお風呂入ろうね。

それで今日は、一緒に寝よ?

それまでは、絶対に外に出ちゃダメだからね」


そう言っても、おばあちゃんの様子は変わらなかった。

頷いたり、言葉も返してくれなかった。


『見ていて辛い笑顔』を、私に見せてくれるだけ・・・・。


それが本当に私にとって、辛い。

・・・・つら過ぎる。

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