89.錬金術士鬼のチャンピオン
「はじめ!」
「全員散開!」
俺たちは横に広がる。
ミケが果敢に突っ込むが、それを無視してグラニさんがザクロ目がけて突っ込んでくる。
やはり魔法が苦手か。
「ザクロ!目つぶしだ」
「はいです」
ザクロが土魔法でグラニさんの顔に向けて砂をかける。
顔に砂が掛かったと同時に行く手に鉄壁。流石に2mの高さは無理なのであえて膝丈だ。
顔にかかる砂をもろともせず突っ込んでくるが俺の鉄壁に足をとられるグラニさん。
転ぶかと思ったが一瞬よろけただけだ。
そこに両脇からピピとミケが襲い掛かる。
その間鉄壁を外周にそって構築。
ザクロとユンを視界から隠す。
ピピの渾身の一撃を脛に、ミケの斬撃を腕に受ける。
「ぐっ」
それなりに効いてるようだ。
たぶん。
だがミケがつけた傷が見る見る治っていく。
「ミケ、もっと深く刺せ」
「やってるにゃ!鉄を刺してるみたいに固いにゃ!」
「ザクロは隠れながら目つぶしと炎で攻撃を続けてくれ」
「はいです」
ピピとミケの攻撃が思ったより効いたからなのか、グラニさんはザクロを探すことなく2人を相手している。
最初にここに来てオーガたちの練習風景を見て思ったが、オーガは確かに力が強いんだろうがやはりスピードに劣る。
グラニさんの武器は大きいというのもあるがどうしても大振りになってしまう。
動きをよく見てさえすれば、2人ならうまく避けられるだろう。
グラニさんはというと、そもそも2人の攻撃を避ける気はないようで、打たれても切られても力任せに攻撃を繰り返している。力だけでなく体力も無尽蔵にあるんだろう。
なので長引くとこちらに不利になる。
「ムチムチソード!」
背後に回ってグラニさんの体に鎖を巻き付ける。
避ける気がないというのは助かるな。
一瞬動きが止まるがグラニさんは体に巻き付いた鎖を引き裂いた。
鋼じゃだめか。
その後あろうことか標的を俺に変えたようだ。
「なかなかやるな」
「いえいえ、まさかそんな簡単にその鎖を切られるとは思いませんでした」
「連携もいい。そこらのオーガでは勝てないだろう」
「5体5ではどうでしょうか」
「まだまだ隠し球もあるんだろ?」
「えっと、鬼に毒って効きますか?あと溶かしたり凍らせたりしても大丈夫でしょうか」
「全部効くぞ。恐ろしいなお前たちは」
「では降参してもらえます?」
「王の前なのでな」
「ですよねー」
そこからグラニさんの動きが変わった。
大振りは大振りだが隙が少なくなり、こちらからの攻撃がなかなか当たらなくなった。
ファルコンに乗っている限り俺に攻撃が当たることはないが、ピピもミケも攻めあぐねている。
「グラニさん!」
「なんだ」
「そろそろ終わりにしたいんですけど」
「いや、俺はまだまだいけるぞ」
「まあ、そうなんでしょうけど。膠着しちゃってるじゃないですか。多分王様も退屈してますよ」
「そうだな」
「これから自分の最大級の攻撃をします。それに耐えたらグラニさんの勝ちってことでどうでしょう」
「よし、いいだろう。来い!」
「ファルコン、見せ場だぞ」
『バウ!オレ見せ場』
「これからグラニさんにカメショット打つからかっこよくグラニさんのとこに向かっていくんだ」
『バウ!かっこよく向かう!』
「かなりの衝撃がくるから気を付けろよ」
『バウ!だいじょうぶい!』
どこで覚えたんだ。
「行くぞ!」
『バウ!』
「咆哮!」
「ギャオーーーーン!」
別に咆哮させる必要はないんだが、一応見せ場ということで。
観客が一斉に耳を塞ぐ。
グラニさんは怯むことなく大斧を構えたままだ。
「カメショット!」
水蒸気爆発を利用して槍の穂を噴出させる。
今回は先端を丸くしているがアダマンタイト製だ。
グラニさんがそれを大斧で受け止めるが大音響とともにそのまま後ろに吹っ飛んだ。
観客席の壁面に突撃し、そこから土煙が上がっている。
やりすぎたかな。
辺りは静寂に包まれる。
ガラッ
瓦礫の中からグラニさんが現れるが手にした大斧が真っ二つに割れている。
「そこまで!」
王様の声が響くと歓声が沸き起こる。
「おおおお!」
「すげーなあいつ」
「グラニさんを吹っ飛ばしたぞ」
「それよりグラニさんの大斧折っちまったぞ」
俺たちは共に王様の元に行き跪く。
「2人ともよくやった。いいものを見せてもらった」
「は!」
「今宵は晩餐に招待しよう。暫く後に訪れろ」
「は!ありがとうございます!」




