63.錬金術士それぞれの必殺技
マナルスでの俺たちの目的はほぼ達成した。
海水浴やプールは暑くなったらまた考えよう。
そろそろ魔が月が始まる。
俺たちはしばらくそのための訓練をすることにした。
「ザクロ。空中に岩を出して、それで攻撃できるか」
「はい、それくらいならできますです」
「じゃあ、その岩を燃やした状態で落とせないか」
「はわわ、土と火の混合魔法ですか」
「そうそう、できるか」
「あ、あの、がんばりますです」
「よし、頑張れ!ザクロの必殺技だ」
「必殺技です?」
「そうだ、名付けて『ミーティオ!』」
「み、みーてぃお」
「必殺技を放つときは必ずいえ」
「は、はいです」
「ご主人様。ご主人様」
「どうしたミケ」
「うちも必殺技欲しい!」
うーん、必殺技って、はいどうそってあげるものではないんだが。
「よし、じゃあ、空中で回転してから短剣2本を同時に突き刺すんだ」
「にゃ!難しそうだにゃ」
「回転が多ければ多いほど威力が増す。名付けて『ローリングスラスト』だ」
「ローリングスラスト!かっこいいにゃ!」
「いいか、高く飛び上がってなるべく多く回転して、その勢いで急所を抉るんだ。必殺技だから、それで倒せないと駄目だ」
「わ、わかったにゃ!練習するにゃ!」
まあ、思いつきだがいいだろう。実際攻撃力高そうだし。
「ん」
「ん?」
「ん、ん」
ピピさん、もしかして君も欲しいのか?
「ピピ、モーニングスターを構えて力を溜めるんだ」
「ん」
「力を溜めるだけ溜めて、それを一気に開放する感じで一撃を加える。名付けて『パワークラッシュ』」
「ぱわーくらっしゅ!」
「そうだ、力を溜めてるときは無防備になるから、敵に狙われていないときにやるんだ。当てるときは自分自身も回転しながら全体重をかけて相手を叩き潰す」
「ん、ん」
「練習して力を何段階にも溜められるようするんだ」
「ん、わかった」
『バ・・・』
「ファルコン!お前はまだ早い!」
『バウーん』
「いいか、お前はまだ仲間になったばっかりだ。もっといろいろ戦って他の仲間にも認めてもらったら必殺技を考えてやろう」
『バウ!オレもっと頑張る!オレ役に立つ!』
「よしよし、期待してるぞ!」
いつかファルコン用の技も考えてやらないとな。
魔が月。
初めての経験になるが、事前にたくさん働いたんで今回は静観するつもりでいる。
とはいいながらどこからどんなお願いが来るかわからない。
もし、魔が月の討伐戦?防衛戦?わからないが参加するころになれば多対多になる可能性が高い。
国の兵士と共闘することはないと思うが、なぜか変に期待されているので自分たちの身は自分たちで守れるくらいにはならないといけない。
というかほかの3人と1匹は多分大丈夫だろう。
問題は俺なのだ。
見捨てられたら終わりだと思う。
リアル鉄壁は防御力だけなら高いと思うが機動性にかける、というかその場しのぎでしかない。
機動力。
いるな、うちにもってこいの奴が。
「ファルコン」
『バウ!ヤルゾ!ヤルゾ!』
やる気があるのは大変いい。
「俺1人が乗るのにちょうどいい大きさになれるか?」
『バウ!オレできる!簡単!』
そういうと隊長2mくらいまでちょっと縮んだ。
ファルコンに跨る。やっぱりちょっと不安定だな。
「鞍乗せてもいいか?」
『クラ?』
本当は革で作りたいが、革の加工ができないから、軽さを考えてアルミで作ろう。鐙もつけちゃおう。
「俺が座りやすくするやつだ。こんな感じ」
ファルコンにアルミの鞍を乗せてそこに跨る。
「動きづらくないか?」
『バウ!大丈夫!直接乗られるよりいい感じ!』
俺もだいぶ乗りやすい。
これなら槍の方が似合うな。
脛宛も作って、
折角だからファルコンにも兜を作ってやろう。
ファルコンじゃなくて黒龍号にすればよかったかな。
兜を付けたファルコンに槍を持って騎乗する俺。
ジャーン!
「ミケ!どうだ」
「にゃー!かっこいいにゃ!」
『バウ!オレかっこいい!』
「よし、ファルコン、このままミケに突っ込め!」
『バウ!』
「ぐふっ!」
ファルコンが速すぎる。体がもっていかれれてファルコンの上で仰向けに倒れる。
「にゃはは!ファルコンはかっこいいけど、ご主人様は無様にゃー」
コイツ。串刺しの刑だ。
「ファルコン、もう一回!」
前傾姿勢で、槍を構えて、というより真っ直ぐ前に突き出してるだけでいいだろう。
『バウ!』
「にゃ!」
一瞬でミケの横を通り過ぎる。
当たってたら本当に串刺しだったな。ただ俺の腕が耐えられないかもしれない。
「死ぬにゃ!もうやめるにゃ!」
「お前、俺のこと無様といったな」
「じょ、冗談にゃ!ご主人様はいつもかっこいいにゃ!だからもうやめるにゃー!」
練習用に柔らかに槍も作っておこう。
「ザクロ!」
「はわ!私も串刺しですか!」
「あとは頼むにゃ」
「俺に魔法を打ち込んでくれ、弱くてもいいからたくさん」
「はわわ、いいんですか?」
「ファルコン、敵の攻撃を避けながら近づくんだ。できるな」
『バウ!オレ避けるの上手!オレできる!』
「よし、ザクロ頼む」
ザクロから石つぶてのようなものが飛んでくる。
ファルコンは余裕でそれらを避ける。
が
上下左右の揺さぶりが激しい。
「ファルコン、できるだけ小さく避けるんだ。ギリギリで躱した方がかっこいいぞ」
『バウ!オレギリギリで避ける。オレかっこいい!』
「ザクロ、もう1回」
「はいー」
ファルコンは褒めると伸びるタイプ。動きが小さくなる分俺も気を付ければ振り回されなくなる。そこらへんも含めて理解してくれたようだ。
「いいぞ、ファルコン。俺とお前で一緒に戦える」
『バウ!オレ一緒に戦う!』
人馬一体、犬だけど、名付けて
『ドギースタイル!』
だがいかんせん俺の攻撃力が弱い。
攻撃を避けながらすばやく近づいても俺の力ではたかがしれてるのだ。
突進力を使えば確かに威力はあるが、直線的な動きでは限界がある。
そこで思いついたのが水蒸気爆発だ。
槍の柄と穂の間に少し厚めの円盤を着ける。そこには圧縮した水を貯めておく。そこに熱した鉄を槍の柄の中を通して送り込むと爆発が起こる。それで槍先を飛ばすのだ。
槍先端が亀みたいになってちょっとカッコ悪いけど、名付けて
『カメショット!』
流石にミケで試すわけには行かなかったので、適当な倒木に鉄の鎧を着せて立たせ、木偶を作って試してみた。
「ファルコン!あれが敵だ。咆哮からの急接近!」
『バウ!』
「ギャオーーン!!」
咆哮すごいな、後ろにいてもちょっとビビる。ピピたち3人も耳を塞いでしゃがみこんでしまった。
一瞬で木偶に接近するファルコン。
「一撃入れて、半歩後退!」
『バウ!』
ファルコンが木偶を攻撃。大抵の敵はこれで倒せる。
1mほど距離をとったところで
「カメショット!」
バン!ドゴン!カシャン!
槍の穂が鉄の鎧に突き破り倒木も突き抜けた。衝撃で槍の柄のサスペンションが反応する。これ人間相手だったら惨すぎるかも。
「にゃ!なんにゃそれ!」
「ん、えげつない」
「はわ。怖すぎます」
『オレもちょっと驚いた!』
相変わらず卑怯な武器だが、威力は絶大。手元にサスペンションもつけたのでなんとか衝撃も抑えられる。
穂先の形を変えれば戦略の幅も広がりそうだ。
「よーし、次はミケで実践―」
「ふざけるにゃー!殺す気かー!」
そんな感じで5日ほどマナルス近郊で訓練を続けた。
もう魔が月が始まる。
一応ローツェ王に仕事が終わったことは報告しておこう。
「マプレさん、今日あたりメスゴブリンがゴムをもってきます。どうか襲わないであげてください」
「はい、事前に通達してあります。でも本当にもうゴブリンは女性を攫うことはなくなるんでしょうか」
「大丈夫だと思うんですけど。住人が襲われなければゴブリンを討伐する必要はないですよね」
「はい、そうですね」
「今日持ってく来るゴムはなかなか役に立つと思うんです。うまくすればマナルスの特産品として儲かると思います。ゴブリンに金銭を上げるのは意味がないかもしれませんが、なにか報酬を考えてもらえるとありがたいです」
「わかりました」
「では、我々は王都に戻ります。何かあれば王都に知らせてください」
その後魔法生物組合と冒険者組合にも顔を出す。
アガルマさんにはこの前のお詫びも兼ねてビハール山でファルコンをモフモフさせてあげた。
俺がお詫びするってのも変な話しだが、まあアガルマさんが納得してくれるならそれでいいだろう。
こちらは何もいってないのに「お前じゃないからな」と念を押されたし。
初めての街で少し不安もあったが、マナルスでは充実した時間を過ごせた。
間もなく魔が月だが、始まってすぐはそれほど魔素も濃くなく、魔物も進出してこないということなので、王都で少しゆっくりしよう。
「よし、じゃあ帰るか!」
「ご主人様ー、最後に魚食べたいにゃ」
「そうだな、王様へのお土産も兼ねて少し捕まえて帰ろうか」
西の海岸までファルコンでひとっ跳びして何匹か魚を捕まえた。
お昼ご飯も兼ねてそこでおいしく食したあと、小さ目な魚はカリバーにしまっておく。
生け簀があればいいのだが生け簀ごとファルコンでは運べない。
美味○んぼで生け簀の魚より血抜きした魚がおいしいとやってたので、血抜きしてみたがやり方があってるかどうかわからん。
ゴブリンたちに干物を作らせようか。
ゴブリン?
忘れてた!鉄パンツを外してやらないと。
危うく約束を破るところだった。それで反乱起こされても困るしな。
集落に行くと5匹のゴブリンが入口で待ち構えていた。
朝から待っていたそうだ。
だいぶ鉄パンツが汚れている。
そういえば排便のことを考えていなかった。
ずっと垂れ流していたみたいだ。悪いことしたな。
流石にその鉄パンツを格納する気にはなれなかったので、戒めのためにと置いておいた。
「女性を攫いたくなったら、これを見て我慢するんだぞ」
「ギ!二度ト見タクナイデス!」
まあ、どうするかはまかせよう。
一応長老にも挨拶してから俺たちは集落を後にし、王都に帰ったのだった。
4章はこれで終了です。
次回から5章になります。




