56.錬金術士魔法生物組合へ
魔法生物組合の建物はかなり大きい。裏側に魔法生物の養殖場があるためだ。
おもにサラマンダー、シルフ、ノーム、ウンディーネを育てている。
育成環境が違うのでそれなりの広さが必要なのだろう。
魔法生物組合に入るといきなり声を掛けられた。
「ちょっとそこの君!」
おお。エルフだ。もの凄く綺麗だ。
ただ服装が想像していたエルフとはだいぶ違う。
もっと薄いローブっぽいものを着てるかと思ったのだが、なんかカウガールみたいなやけに活動的な恰好をしている。
「あ、はい」
「君じゃない、そっちのドワーフ!」
「ん?」
あら、やっぱりエルフとドワーフは仲が悪いのかな。ピピさん喧嘩しないでね。
「なんでノームを背負ってるんだ!おかしいだろう!」
え?そこ?まあ確かにおかしいんだけど。
「ああ、ずっとこうですし、嫌がってないみたいなんで」
何故か俺が言い訳をしている。
「ああああああ!」
今度は何だ。
「君!それ黒サラマンダーじゃないか!」
俺の肩に乗っているクロを指さして大騒ぎしている。
「ぴ!」
おお、クロえらいぞ。ちゃんと挨拶できるんだな。
「はい、うちのクロです」
「黒サラマンダーだぞ!わかってるのか!」
「ええ、黒いですね。名前はクロっていいます」
うちの子たちはなんか変なんだろうか。ついでにシロも紹介しておいた方がいいだろうか。
「あと、ウンディーネのシロもいます」
「何!ウンディーネもか!」
特製のガラス管を出す。
「これは!普通だな・・・」
よかったなシロ。お前は普通だって。
「シロに故郷の水を飲ませてあげようと思いまして」
「あ?ああ。いい心がけだ。よし私が案内しよう」
そういうとエルフのお姉さんは魔法生物組合をずんずん出て行った。
この人が組合長のアガルマさんである。
道中なんでノームを背負っているのかやら黒サラマンダーをどこで手に入れたやら、黒サラマンダーはすぐに死んでしまうのにどれくらい飼っているんだやら、シロの入れ物はどこで買ったんだやら、質問されつづけたので王様の紹介状も渡せていない。
1つ1つ丁寧にお答えしたので、俺たちに対する不信感はだいぶ薄れてきたようだ。
まあ、シロに故郷の水をというのを聞いて、俺たちの魔法生物に対する扱いが決して悪くないと思ってくれたのが大きい。
とにかくこの人の頭の中は魔法生物のことで一杯なようだ。
「グリフォンが来てましたけど、捕獲できるんですか」
一緒に来た王宮の飼育員さんは一晩グリフォンを預けて、今日帰るといっていた。
「ああ、あのグリフォンは私が捕まえたんだが、王様に横取りされてな」
その後は延々とグリフォンの話しをしていた。
「この先の湖がウンディーネの生息地だ。手前の森の奥には魔溜まりがあるから間違っても近づかないようにな」
「湖に入れたら野生に帰っちゃうとかないですよね」
「それは大丈夫だろう。ただ他のウンディーネがいるところとは離れたところで漬けた方がいい。君たち魔法生物組合には入ってないだろう。間違って野生のウンディーネを捕まえたら処分されるからな」
「処分って、何されるんですか」
「まあ、初犯なら注意と罰金位だが密輸目的だと最悪死刑だな」
「そんなに重いんですか!」
「どこの国でも魔法生物の密輸は重罪だよ。絶滅したら大変なことになるからな」
生活に必要なエネルギーや水を賄っているんだから大事にされているんだな。
「でも魔法生物を捕まえるのに魔核がいるんですよね」
「よく知ってるな。サラマンダー位なら欠片でも捕獲できるからな。もしかして組合員になりたいのか」
「ええ、まあ。ところでフェンリルって自分の大きさを変えられるんですか」
「ああ、フェンリルか。私も見たことはないんだが、そう言われてるな。細いところが好きらしいよ」
「こんな筒とかですかね」
そういって事前に作っておいたフェンリル用のガラスの筒を取り出した。シロのガラス管より少し大きめだ。
「そうだな、そこに魔核でも入れておいたら向こうから来てくれるかもしれないな。はははは」
なるほど、でも魔核を入れるには少し細いな。フラスコみたいにしてそこに魔核をいれよう。
その場で形を変えて魔核を入れた。
「こんな感じですかね」
「そんな簡単に形を変えられるのか?って、なんで魔核なんて持ってるんだ!」
「おいでーフェンリルー」
「いやいや、さすがにそんな簡単に来ないだろう。もしそれで捕まえられたら、君を魔法生物組合員として認めてあげよう」
「本当ですか!絶対ですよ!」
「私だってフェンリルは見たことないんだ。そんな簡単に捕まえられればよっぽど君には才能がるんだろうよ。まあ、無理だと思うがな」
「フェンリルは普段どこにいるんですか」
「そうだな、確かなことは言えないがフェンリルは森の守り神とも呼ばれてるんで、森の中なら出てくるかもしれないな」
「じゃあ、行きましょう。なんだったら魔溜まりまで行きましょう」
あっけにとられるアガルマさんを無理やり連れて森に入る。
奥に進むと魔素が濃くなってきた。
「おい、この先は魔溜まりだ。ここら辺で諦めたらどうだ」
「いやー、いざとなったら森の守り神が助けてくれますよ」
「お前たちやっぱりおかしいな」
「アガルマさん、エルフだから弓とか使えますか?」
「馬鹿をいってるんじゃない。私は戦闘は苦手なんだ。回復魔法くらいしか使えないぞ」
「え!回復魔法使えるんですか!」
「まあ、エルフだからな。それくらいは」
「すごいじゃないですか!空気中の聖素を集めてそれで治癒するとかですか?」
「おい!エルフの秘術だぞ。なんでそんなこと知ってるんだ」
「え?いや、なんとなくそうかなって。だとすると聖素の少ない魔溜まりだとやりづらいですよね」
「ああ、そうだな。って、一体君は何ものなんだ」
「申し遅れました。私が錬金術士です」
「せんねんきんし?」
エルフじゃないんだから死んじゃうよ。
「よし、みんな行くぞ!」
「ん、エルフに引けは取らない」
「にゃ!」
「はわ」
「ちょ、ちょっと待てー」
美人のエルフを前にして調子に乗っていた俺はすぐに後悔することになる。




