46.錬金術師牢獄攻略
牢獄の入口。濃い魔素が扉から漏れ出している。
「みんな行くぞ」
閉め切ってたためか扉を開けると魔素が噴出してくる感じがした。
逃げてきた兵士の話だと、入口までスケルトンが追ってきたということだから、すぐに襲ってくることも考えられる。
まず液体聖素を撒き散らした。
中は真っ暗だ。
「ザクロ!壁に松明があるはずだから、魔法で火を点けてくれ」
ザクロの魔法で入口付近の松明から順番に火がつく。
その火に合わせ王様とピピが牢獄の奥に進もうとしたとき矢が飛んできた。
王様がなんとかその矢をいなす。
やべー、暗くても狙えるんだな。スケルトンハンター。そもそも目玉ないしな。
それにしても王様は完全武装させて鎧かなんか着せるべきだった。危うく本当に王様の屍を越えるとこだった。
「ミケ!奥が見えるか」
「スケルトンファイターがこっちに来るにゃ!その奥でスケルトンハンターが次の矢をつがえてるにゃー!」
俺は聖素を撒きながら指示をだす。
「王様、奥のハンター頼めますか。ピピはファイター頼む」
スケルトンファイター1体だけなら王様とピピが相手すれば魔核を抜き取るだけの隙は余裕で作りだせると思っていた。だがさらに1体。それも後方から弓を打たれると、こちらの動きも封じられる。
「わかった」
「ん」
鼠の死骸のような魔物が地面を走り回っている。
聖素を撒きながら進む。
小物が残ったとしても、ミケとザクロに任せよう。
万一扉の外に出ても衛兵がなんとかするだろう。
スケルトンハンターは近づいてさえしまえば弓は封じられる。
ここは危険だが王様にがんばってもらうしかない。
「空気砲、トルネード」
空気砲は矢に弱い。まっすぐ飛んでくる細い矢に向けて空気砲を打ってもそれを止めることはできない。なので放出される空気を捻ってみた。矢は横風に弱いのだ。
スケルトンハンターが放った2の矢は王様から逸れる。
それでも王様とスケルトンハンターの距離は10mほどある。
「王様、飛んで!」
かなり勇気が必要な指示をだす。
「よし」
「空気砲」
ぼふんっ
飛んだ王様に空気砲を当てると一気に王様とスケルトンハンターの距離が縮まる。
何とか態勢を立て直してスケルトンハンターに切りかかる王様。
矢さえ打たせなければ怖くない。
それでも王様の両手剣を弓でいなすスケルトンハンター。
スケルトンファイターの横をすり抜け、スケルトンハンターに向かう。
弓をまるで剣のようにして戦うスケルトンハンター。だが王様はいうだけあって優勢だ。
「ムチムチソード!」
両手剣の斬撃を繰り出す王様の後ろからスケルトンハンターの魔核を奪う。
砂化するスケルトンハンター。
「王様!スケルトンファイターへ!」
「おう」
一瞬あっけにとられる王様に指示を飛ばす。
1度戦ったことがあるとはいえ1対1だとピピもスケルトンファイターには押されている。
ピピに優勢だったスケルトンファイターは後ろから王様の攻撃を喰らい大きくよろけた。
「ムチムチソード!」
その隙をついて魔核を奪った。
砂化するスケルトンファイター。
よし、なんとかなったな、と思ったところにザクロの悲鳴が聞こえた。
「はわわー!おっきくなっちゃっいました!」
見ると元は鼠の魔物だったであろうものがムクムクと巨大化している。
あいつ、エーテルかけたな。
「はわっ、はわっ」
ザクロが何かをかけるたびに魔物が大きくなっていく。
「おい、それはエーテルだろ!ポーションかけろ!」
「はわわわ!」
いう終わる前に魔物に突撃されるザクロ。
カピバラをさらに大きくしたくらいまで大きくなってる。
「ミケ!」
傍にいたミケが切りかかる。
ザクロに追い打ちをかけようとしていた魔物がミケに向かう。
「にゃー!」
魔物を連れてミケがこちらに向かってくる。
大きいわりに動きが速い。
おまけにスケルトンと違って朽ちかけてるとはいえ皮や肉があるから魔核がどこにあるかわからんよ。
ピピがすれ違いざまに魔物の鼻面をモーニングスターで思い切り殴った。
もんどりうつがすぐさま態勢を立て直す。
これってかなり強化されてるんじゃないか。
そこへ王様が両手剣を正面から突き刺す。
カピバラの串刺しだ。
それでも暴れるカピバラ。
「ミケ!腹を裂け」
王様がそのままカピバラを持ち上げて仰向けに叩き付けた。
ピピが腹にモーニングスターを振り下ろす。
動きが止まったところでミケが腹を切り裂いた。
魔核が見えた。
「ムチムチソード!」
魔核を掴むがなんかスケルトンより硬い。それでも強引に引き抜いた。
砂化するカピバラ。
装備はないのね。
だが魔核が大きい。
スケルトンの魔核が拳大くらいだが、それより二周りも大きい。
エーテルで魔物が強化されるなら魔核だけを強化することもできるだろうか。
ここらへんはあとでザクロと研究してみよう。
とりあえずザクロにはお仕置きだな。
さて魔溜まりだ。
魔溜まりが街中にできることは、まず無いそうである。それは多分魔素が薄いからだろう。では何故ここは魔素が濃くなっていたのか。
まず魔族がいたということが考えられるが、魔族が魔素を垂れ流しているわけではない。
この場所、牢獄の処刑場ということに要因があるのではないだろうか。
処刑場の血溜まりが魔溜まりになったという話しだ。
オカルトな話になるが、人の怨念が魔素を生み、それが凝縮されて魔溜まりになったのではないかと考えた。
街の外、森や洞窟は人や動物が死にそこに魔素が溜まりいつしか魔溜まりが生まれる。
それが魔溜まりだろう、と勝手に結論付けのだ。
じゃあ、どれくらいで魔溜まりができるのかとかは知らない。
城内の牢獄に魔溜まりができた。
これを放置することはできない。
聖素で浄化できないか。
そう思ってドバドバと聖素を魔溜まりにかけてみるとみるみる魔溜まりは小さくなった。
ただ完全になくすことはできなかった。
放っておいたらまた大きくなるかもしれない。魔が月には活性化するかもしれない。
俺が聖素を供給し続けるのも、大量の聖素を城に蓄えておくのも現実的ではない。
さて。困った。
魔素を消費し続けるもの。
あった!
「クロ、ここに青い炎を吐いてくれ」
「ピ!」
小さくなった魔溜まりで青い炎が燃える。牢獄内の空中の魔素はできるだけ手引書に格納しておいた。
「王様、完全に魔溜まりを消すのは難しいようです。もしかしたら魔が月に活性化するかもしれません。とりあえずこの牢獄は閉鎖して魔溜まりが大きくならないか日々注意を払ってもらってください」
「わかった。これだけ小さければ魔物も湧かないだろう。あとは静観するしかない。ありがとう」
俺たちの牢獄攻略はこうして終わった。
その夜
ピピは激しい戦闘の後は興奮が冷めやらないのか激しく求めてくる。
そこにミケが加わるのは毎度のことだ。
「はわ、はわわー」
そして何故かザクロが同席(?)している。
ピピさんもミケさんもそれで興奮してるみたいだからいいけど。
「人族は見境いないというのは本当だったです」
ダークエルフの間でもそういうことになってるのね。
「こ、これは新しい研究テーマです」
ザクロさん、なにを研究する気ですか。
「ま、まさか私は見てるだけですか!これが処刑ですか!見殺しですか!」
ザクロさん、使い方間違ってるよね。
ピピとミケがザクロを見てニッと笑う。
「こんな処刑ひどいです!」
といいながらザクロは一心不乱にメモをとるのであった。




