41.錬金術師ダークエルフ遭遇
毎日衛兵が魔溜まり攻略の催促にくるが、のらりくらりと3日間先延ばしにした。
その間、特攻野郎作戦は思ったよりうまくいった。
最初のうちは照れていたブッシュだが、数をこなすうちに楽しくなってきたらしく核心近くまで迫ることができた。
宰相は執務室以外に必ず毎日訪れる部屋があり、そこは掃除なども禁止されているが毎日食事は届けることになっている。食事を届ける給仕以外が近づくのは宰相から禁止されていて、一度間違って近づいた兵士が処刑されてからは誰も近づかなくなったらしい。見張りもいないそうだ。
宰相がその部屋に行くのは晩御飯のあと。時々朝。食事が届けられるのは朝と夕方の2回。
そこにダークエルフがいるとみてまず間違いないだろう。
そろそろ引き延ばすのも限界だ。明日ダークエルフの部屋に行こうと思う
翌朝。
給仕が朝食を置くのをブッシュと扉の外で待つ。
しばらくすると扉が空きかけたので、そのまま部屋の中に入り込んだ。
「おはようございます」
「はわわ、珍しいです。お客さんですか」
ダークエルフは褐色の肌に乱れた銀髪。
何故か白衣を着てる。
見た目は
女教師だ。
「兄貴、ここで殺りますか」
ブッシュこんなエロい女教師を俺が殺っちゃうわけないだろう。
「キャー」
何もしてないのにいきなりダークエルフが転んだ。
「すいません、すいません。またやっちゃった。あれ、朝ごはんは」
「どうぞ」
そういってとっちらかった机に朝食のお盆を置こうとしたが空スペースがなかった。
「どこに置きましょう」
「あの、えっと、ここにお願いしますです」
そういうと机の上に会ったものを半分をばさささーと床に落とした。
ダークエルフというのでもう少しダークなイメージを持っていたのだが、この子はダークというよりダーメな印象だ。
ダークエルフはお盆に噛り付くように朝食を食べている。
もしかして
「あのう、これ何本に見えますか」
そういって指を2本、ピースの形で見せてみた。
するとダークエルフは俺の指に顔を近づけて
「2本です。それがどうかしましたか?」
やっぱり。
「もしかして目が悪いんですか」
「はわわ、なんでわかったんですか。昔からこうなんです。他の人より良く見えてないみたいです」
「ちょっとこれつけてみてください」
試作品の眼鏡を渡す。視力によって調整は必要だろうが少なくとも今よりましになるだろう。
ダークエルフが眼鏡をかけた。
ナイス!女教師完全版の完成だ!
「はわわわわわ!なんですかこれ!すごい!すごいです!世界が変わりました!」
歓喜して俺に抱きつくダーク女教師。
よかった。レンズ作っといてよかった。
「で、ここで何してるんですか」
時間もないのでダーク女教師に話しを聞いた。
ブッシュはずっと剣にてをかけて、何かあればすぐにでも切り付ける勢いだ。
ダークエルフの名前はザクロ。
宰相に頼まれてエーテルの研究をしているそうだ。
あるんだ。エーテル。
エルフがポーションを作れるように、ダークエルフはエーテルが作れるらしい。
ポーションの材料は聖素。エーテルの材料は魔素。
空気中の聖素を抽出すれば液体聖素ができる。同じように空気中の魔素を抽出すれば液体魔素ができる。それぞれ抽出するには特別な器械が必要で、その器械こそがエルフの秘術と呼ばれているものだ。
ザクロは昔からエーテルの研究に没頭していたが、ダークエルフの秘宝ともいえる魔素抽出器は村に2つしかなく、自由に使うことができない。
そこで1つを持ち出して研究に没頭していたところ、抽出器がなくなったことで村が大騒ぎになり、自分が持ち出したことを言い出せずに、探してくるといって村から逃げてきたそうだ。
途方に暮れていたところ、謝って返そうと考えていたら宰相に会った。
人の国まで行けばダークエルフは追ってこれない。そこでやりたいだけ研究をすればいい。一緒に行ってくれるならその手助けをしようと。
ザクロは研究さえできればよかったのでほいほい宰相について行き、この国へたどり着き、今まで研究を重ねていたということだ。
「ちょっと待て、ではあの宰相は魔族か」
「はい」
魔族がいるんだ。魔物とは別なのかな。
「ブッシュ、魔族って珍しいのか」
「はい、人族と魔族は基本的に別の大陸で暮らしているので交わることはありません」
「その魔族がなんでこんな辺境の国の宰相なんかやってるんだ」
「あの、あのチビは何かやらかしたらしくて国元にいれなくなったみたいです。そこでたまたま私に会って利用したんだと思います」
利用されてる認識はあるのね。
「しかし、よく海を渡ってこれたな」
「えと、それがたまたま人界に行くっていうドラゴンに会えまして、乗せてもらいました。運がよかったですー」
「あの宰相に何か頼まれたか?」
「えと、毎日エーテルを渡してましたです。ほんとはあげたくなかったんですけど」
「人がエーテルを飲むとどうなる?」
「はい、濃さに寄りますけど飲みすぎると体にはよくないと思います。エーテルは魔族の薬ですから」
「わかった。ありがとう」
人に化けた魔族がこの国に混乱をもたらそうと現王にエーテルを飲ませ、弱らせて自分が実権を握った。そんなところか。
ダークエルフが作る毒っていうのはエーテルのことだったんだな。
「宰相はなんでこんなことしたんだろう」
「えと、わからないですけど故郷に帰りたかったんじゃないでしょうか。人の国を1つ支配してハクをつければ戻れるくらいに思ったみたいです」
「ちなみに宰相の正体って」
「インプです」
「インプって強い?」
「魔族の中ではカスの部類です」
「なんかペラペラしゃべってくれてるけどいいの?」
「あの、あの、研究に専念できるようになったのはいんですけど、人界って魔素が少ないのでなんかあまり進まなくって。あとここから出るなって、他の人にも会うなって、もう寂しくて。こんな生活そろそろ終わりにしたいって思ってましたです」
「じゃあ、俺たちと一緒に行こうか?」
「兄貴!こいつはダークエルフですよ」
「黒幕じゃなかっただろ」
「はわわ、いんでしょうか。こんな私ですけど、どうしようかしらです」
「今俺たちに協力してくれると、こんないいことがあるけどどうする?」
そういって純正液体魔素を出してやった。
「はわ!濃い!こんなに濃いの初めてです!」
「で、どうする」
「行きますです!連れて行ってください!その濃いの欲しいです!」
「いいよな、ブッシュ。少なくともこれでこの国は救われる」
「はあ、まあ、兄貴がそういうなら」
よしダーク女教師ゲットだ!




