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3章 36.錬金術師新しい武器


しばらく平穏な日常が続く、

筈だった。

ローツェの砦を破壊した翌日。

俺とピピとミケは農工業区の川に来ていた。

シロに川の水を飲ませるという口実でピクニックだ。


その次の日からすでに俺たちの平穏が脅かされてきた。

宿には俺のファンだという連中が押しかけてきて落ち着かない。

噂のへんたいしんしがマルボルクの街を救った

ということでさらに有名になってしまったようだ。

ちなみにそれを言いふらしているのは特に何もしないで報酬だけもらった上級冒険者たちと、魔物になるフリをしてもらった娼館組合の女性だ。

娼館組合の女性は、いかに自分が活躍していたかを吹聴して回っているらしい。

その子は俺が行こうとして未だに行けていないあのお店に勤めているらしく、今度店に来てくれと誘われた。

何度も行こうとしているのだが。


とにかく娯楽の少ないこの世界では噂の広まるのが早い。

それも必ず誇張されて広まる。

しばらくおとなしくしていよう。

すでにこの世界での俺の目的は大方達成されているのだ。

ドワーフに猫娘。

これでもういいかな、と思い始めている。

あとうさ耳娘と狐娘とエルフ位でいい。

小金持ちになったんで、今後あえて危険なことをする必要もない。

ヒーローになんてならなくていいのだ。

まあ人のうわさも75日。

みんなすぐに飽きるだろう。


街にいると何かと騒がしいので、昼間は街の外にいってピピとミケと訓練することにした。

俺はとても弱い。まともに戦えば低級冒険者にも負けるだろう。

なのでできるだけまともに戦わないで済むようにしなければいけない。

とくに弓などの遠距離からの攻撃にはなす術がない。

この世界の戦いは基本肉弾戦だ。

遠距離の弓も話しを聞く限り、それほど威力はなく、牽制の意味合いが強い。鉄の鎧を着ていればそれを貫通するような威力はないそうだ。かといって頭に当たれば大怪我はするだろう。

ピピのように力もないし、ミケのように素早くもない。

幸いにして俺には錬金術がある、というかそれしかない。

なのでまず攻撃を防ぐ練習だ。

といってもミケのように避けるわけではない。

鉄壁バリアだ。


「ミケ、ちょっと俺に打ちかかってくれ」

「にゃ!いいのか。ぬふふふ、日ごろの恨み!」

躊躇うこともなく打ち込んでくるミケ。

お前多少気後れするとかもないのかよ。

「鉄壁バリア!」

手引書から地面に鉄の壁を打ち立てる。といっても自分の肩幅くらいの広さだ。

ガチッ

ミケの短剣を防ぐ。

ミケが横っ飛びに出て再び短剣で切り付ける。

「鉄壁バリア!」

同じように鉄の壁を立てる。

これの欠点は前が見えなくなることだな。あまり有効だといえない。

鉄壁を避けてさらにミケが攻める。

「ガラスバリア!」

ガシャーン!

ガラスが割れる。

「わ!危ないにゃ!」

前は見えるうえに、多少は敵に傷もつけられる。だがこちらにもガラスの破片がくるので危ない。

敵が裸足なら有効だな。ダイハードバリアと名付けよう。

さらにミケが切り付ける。

「鎖バリア!」

ガシャンとミケの短剣を鎖が受け止める。ミケの動きが止まったところで鎖を腕から体まで覆うようにして拘束。

「ふにゃ!」

これは、なかなかいけるな。

「ピピもちょっとやってみてくれ」

「ちょ、アタシはこのままにゃの?」

鎖に巻かれて横倒しになったミケ。

「お前、さっき日ごろの恨みっていってたよな」

「はにゃ!いや、あの、それは言葉のアヤというか」

そんなミケを無視してピピがモーニングスターで撃ち込む。

「鎖バリア」

ガシャン!

鎖で絡め獲れるかと思ったがピピが力で振り切る。

力負けするな。逆に柔らかくした方がいいのか。

ピピが再び打ち込む。

「鉄粘土バリア!」

グニャとモーニングスターが食い込んだところを鉄の硬度をあげる。

「ん!」

鉄の壁に腕を取られてそのまま倒れこむピピ。

これも、使えるかも。

あとはどこまで瞬時に出せるか、これは練習か。



次は武器だ。

ムチムチソードは非常に優秀な武器で俺も気に入っている。

相手を油断させて思いもよらない攻撃で倒す。

不意打ち前提なので不意が打てなければ脆い。

そこで考えたのが銃だ。

圧縮した空気で圧縮した空気を打ち出す。

形はリボルバーにした。まあ、弾を込める必要はないので形に意味はないが。

名付けて


「ビッグマグナム」


俺のマグナムが火を噴くぜってやつだ。

ただ所詮エアガン。

どんなに空気を圧縮してもたいした威力にはならなかった。

「おい、ミケ」

「なんにゃ?」

しゅぱっしゅぱしゅっぱ

「痛い痛い痛い、なんにゃー!」

ちょっと痛いだけの威力しかない。まさにエアガンだ。

鉄の鎧を着ていたら、撃たれたことにも気づかないだろう。

鉄の弾を作って撃ってみたがそれこそ銀玉鉄砲くらいの威力しかなかった。


だが俺は知っている。空気の力を。

「ミケ、また打ち込んできてくれ」

「にゃ、あんな攻撃アタシには効かんにゃ」

そういうとミケが真っ直ぐ突っ込んできた。

「空気砲!」

銃の口径を広げ、圧縮した空気の塊をぶつける。

ぼわんっ

「ぶはっ」

直径1mほどの空気の塊が直撃してミケはその場に足止めされる。

「く、空気なんかに負けるかにゃ!」

一瞬ひるんだがミケがまだ突っ込んでくる。

「空気砲!」

ぼわんっぼわんっ

「ふにゃ!」

空気の壁に阻まれてミケは近づけない。

なかなか使える。空気が見えないというのがいい。あとは空気の塊をどこまで厚くできるか。これも練習か。


その後は洞窟の魔溜まりにいって素材を回収したり、訓練がてらすぐに終わりそうな依頼を受けたりで1週間が過ぎた。

その間レンズを作ってみた。

この世界あまり目の悪い人がいないのか眼鏡というものがないらしい。

だが俺は眼鏡っ子に萌えるのだ。

眼鏡っ子であればいいので、視力矯正できる眼鏡は必要がないということに作ってから気が付いたがまあよしとしよう。


視力矯正の眼鏡は役に立ちそうもないがレンズを枠に嵌めて虫眼鏡を作ったら、ピピとミケは大変喜んでくれた。

ついでに望遠鏡も作ってみたが、今のところあまり使いどころがない。

ドワーフ支店にだしてみるか。


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